地球の日本は住みやすい!
大鳳葵生
第1話 粗茶です
「つまり私は異世界転生をしたということですね?」
四畳半の畳の部屋に甲冑を装備した人が、少女のような声を出して目の前にいる男に確かめるように問いかける。
甲冑の少女の傍らには、軍用の剣が無造作に置かれている。
「イエェス。そうだヨォ」
やかんの中が沸騰したことを示す高い音が、静かな部屋に鳴り響く。
甲冑の少女の目の前には、金髪のガタイの良い男が座っていた。
男がヤカンの中身をトポトポ音を立てながら、湯呑に移す。
ヤカンからは直接お茶と大量のお茶っ葉が、湯呑に注がれた。
「ソチャデェス」
「?」
甲冑の少女は、それが飲み物と判断すると、その仰々しいヘルメットを外す。
甲冑からは、常識じゃあり得ないような深紅の髪が飛び出してきた。少女が、湯呑に浮いた茶葉を見て驚愕した。
「これはなんだ」
「ハッパだヨ!」
「ハッパ? 麻薬か!?」
「マヤク? ハッパだヨ!」
「貴様、私に何を飲ませようとしている!」
少女は傍らに置いていた剣を抜き、男に剣先を向けた。
「ノー! ハッパ! ハッパ!」
「ならば先に貴様が飲め!」
「オーケー! オーケー! ブッフォオオオオマッズウウウウ!」
男の口に含まれた大量のお茶とお茶っ葉は、少女の顔じゅうにこびりつく。
ようこそ地球。ようこそ日本。女騎士として戦ってきた少女は、特に理由もなく地球の日本に転生してしまったのであった。
「帰りたい」
まだまだ少女は帰れない。
地球の日本は住みやすい! 大鳳葵生 @ootori_aoi
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