ツンデレでヤンデレな妹との姉妹百合
下垣
ツンデレでヤンデレな妹との姉妹百合
「ねえ、今日こそは一緒に学校いこうよ」
私は意を決して彼女に誘った。しかし、彼女の答えはいつも決まっている。
「は? うざ。何でアンタなんかと一緒に行かないといけないわけ?」
「いいじゃん。私達同じ家に住んでいる双子なんだよ? 一緒に登校したって……」
「アンタと双子ってだけでも嫌なのに、一緒に登校だなんて吐き気を催すわ」
そこまで言われるなんて……なんかちょっとクるものがある。
私、
私がしょんぼりした顔を見せると星華は頭を掻いてバツが悪そうにしている。
「あーもうわかった。今日だけ一緒に行ってあげる。だからそんな辛気臭い顔すんな! 朝からこっちまで気分が悪くなってくる」
「本当!?」
「お、おう。でもあんまりベタベタくっつくなよ」
やっぱり星華は私のことが嫌いじゃない。そのことは分かっている。ただちょっと星華は人付き合いの仕方に問題があるだけなんだ。
星華と二人並んで仲良く登校する。私は自分でも引くくらい笑顔で歩いているけど、星華はそっぽを向いて私と顔を合わせてくれない。でも、いいんだ。照れているだけなのはわかっているし。
「星華おっはよー」
星華のクラスメイトらしき女子生徒が絡んできた。活発そうな女子で星華と気が合いそうな感じがする。
「あ、星華のお姉さん? おはよう。なにー。朝から一緒に登校とか姉妹仲いいじゃん。羨ましいなこのこのー」
「何だよ。馴れ馴れしい親戚のおじさんみたいに絡んでくるなよ。やめろよ」
星華は迷惑そうに女子生徒を払いのける。女子生徒はぶーたれながら、足早に学校に向かっていった。
「チッ……アンタのせいで変な奴に絡まれたじゃねえか」
それからしばらく登校中、星華は一言も口をきいてくれなかった。でもいいんだ。私はこれでも楽しめている。
星華とはクラスが違うので、下駄箱で別れを告げて私は自分の教室へと向かった。あーあ。星華ともっとお話しがしたかったな。何で双子の姉妹なのに上手くいかないんだろう。
◇
休み時間、私が一人で廊下を歩いていると理科の先生が私に話しかけてきた。
「おー。白崎か。お前、理科室に教科書を忘れてたぞ」
「え?」
今日の時間割に理科はなかったはずだけど。
「それじゃ、渡したからな。次からは忘れ物するなよ」
そう言うと先生は忙しなさそうに立ち去っていった。教科書の名前をよく見てみるとそこに書かれていた名前は白崎 星華。なんだ。先生は私と星華を間違えたんだ。
双子あるあるを発揮したところで、この教科書を星華に届けてあげよう。
星華の教室に向かうと、星華は数人の女子生徒に取り囲まれて楽しそうに話をしていた。
「星華ー!」
「ちっ」
舌打ちしたよこの子。姉に向かって舌打ちってどういう教育受けてるの! 全く親の顔が見てみたい。
「あれが星華のお姉さん?」「本当だー。凄い似てる」「二人共可愛い」
周りの生徒達がざわつく。星華は頬を赤らめて居心地が悪そうにしている。
「学校では絡んでくるなっつっただろうが!」
「ごめん星華。でも、星華が理科室に教科書を忘れたって」
私が教科書を手渡すと金剛力士像のように恐ろしかった星華の顔が大人しい草食動物のような顔になっていく。
「な、なんだよ。教科書届けに来たんなら早く言えよ……ありがとう」
星華は照れながらそう言った。照れているところも可愛らしい。流石私の妹。
「よ、用が済んだなら早く自分の教室に戻れよな! 次の授業に遅れんぞ!」
やっぱり星華は良い子だ。口は悪いけど、根は優しくてきちんとお礼も言えて、私のことも気遣ってくれているのだ。
◇
放課後、帰宅部の星華はさっさと帰っただろう。美術部の私は部活があるから一緒に帰ることが出来ない。私は夕方になるまで絵を描く作業をしていた。自分ではとても上手いと思っている絵だが、周りの人達が私の絵を見て苦笑いをする。
何故だ。本当に優れた芸術とは理解されないものなのかな。美術の先生だって私の成績を1にするし、本当にセンスがない。私が後に高名な画家になってから手のひら返したって遅いんだから。
私は画材を片付けて、帰り支度を整え、美術部の部室を後にした。美術室の前で見知った顔が私を待っていてくれた。
「お、おう」
「星華!? どうしてここに?」
「た、たまには一緒に帰ってやろうかなって思っただけだ……それと、アンタの絵滅茶苦茶上手いな」
な、なんていい子なの。お姉ちゃん感動しちゃった。一緒に帰ってくれるだけじゃなくて、未来の芸術家である私の絵を褒めてくれるなんて。やっぱり一番の理解者は家族だよ。
「ありがとう星華。もう大好き」
「ほら、早く帰るぞ」
こうして星華と一緒に帰るのは小学生の時以来だったかな。あの頃の星華はとても素直でお姉ちゃん子だったな。今の星華は性格が随分と変わったけどそれでもいい子だってことはわかってる。
◇
家に帰宅した後、夕食を済ませた星華は自分の部屋に引き籠ってカギをかけてしまった。折角、今日学校であったことを話して楽しく会話しようと思ったのに……仕方ない。私も宿題でもするか。
私が宿題を終えた頃、時刻はすっかり夜になっていた。早くお風呂に入らなきゃな。そう思った時、私の部屋の扉が開いた。
「ふふふ、優梨愛お姉ちゃん……」
始まった。星華は昼間は私のことを名前で呼ばない程ツンツンしているのに、夜になると途端に性格が変わるのだ。
「優梨愛。今日は一緒に登校しようって言ってくれてありがとう。ふふふ、ねえ、優梨愛? 優梨愛は私のことが好きだから一緒に登校しようって言ってくれたんだよね? ね? 私のことを世界で一番愛してくれているんだよね? 私は優梨愛のことを世界で一番想っているよ? 優梨愛もそうでしょ? だって、私達双子だもの。通じ合っているに決まっている。そうじゃなかったら、私の心壊れちゃうよ。ねえ、好きって言って、愛してるって言って、優梨愛の愛の言葉で私の心を満たして。じゃないと私の心壊れちゃうよ。優梨愛が私を愛してくれないなら、私がこの世に存在する意味がないもの。ねえ、優梨愛は私を愛してくれるでしょ? ねえ? じゃないと私本当に死んじゃう。生きている意味ないもの。私の耳元で愛の言葉を囁いてよ。私、優梨愛さえいれば他には何にもいらないの。優梨愛もそうでしょ? 私以外のものなんて何もいらないでしょ? 私、優梨愛のためだったら何だって犠牲に出来るよ? 友達も親も自分の手足だって斬り捨てたって構わない。ねえ、優梨愛もそうでしょ?」
「お、落ち着いて星華。私、星華のことちゃんと好きだから。と、とりあえず私にも喋らせて」
「良かった。優梨愛、私のこと好きでいてくれたんだ……本当に、本当に良かった。昼間の私は素直になれなくてツンツンしていて、本当は優梨愛のことが好きなのに、何で自分でもあんな態度を取っちゃうんだろうって思う。ごめんないごめんない。素直になるから嫌いにならないで優梨愛。私、優梨愛に嫌われたら生きていけない。素直になれない妹でごめんなさい。生意気な妹でごめんなさい。口が悪い妹でごめんなさい。こんなに姉が好きすぎる妹でごめんなさい」
私は星華を優しく抱きしめた。今の星華は錯乱状態になって病んでいるのだ。とにかく落ち着かせてあげないと。
「あー……私、今優梨愛に抱きしめられている。こ、こんな幸せってあるの……優梨愛の匂いがする。はー幸せ。尊い。尊すぎて死んじゃう。死んじゃうよー」
「えー星華が死んじゃうなら抱きしめるのやめちゃおうかな」
「やだー。やめないでー。やだー。ぎゅってしてー。やだやだー」
「よしよし冗談だよ」
星華の頭を撫でると彼女はとても落ち着いた様子を見せた。可愛い。いい子だ。今の星華は少し病んでいるけど私のことを好きでいてくれてとても可愛らしい……そんな可愛らしい子は虐めたくなる……
「ふふふ。星華。昼間は私に随分な態度を取ってくれたね」
「あ、あれは……そ、その……ご、ごめんなさい」
星華がしどろもどろになって私に謝罪してくる。可愛い。私に嫌われると思って焦っているのかな? 私が星華を嫌いになるわけがないのに本当に可愛いんだから。
「いいんだよ。昼間はああいう態度で。だって昼間の私はドMだもの。星華にきつい言葉で罵倒されて実は嬉しかったの……特に吐き気を催すとか言われた時は良かったな。中々クるものがあったよ」
「ち、違うの……あれは本心じゃないの……」
「それに登校中も私とあんまり口をきいてくれなかったの放置プレイ感があって楽しかったな」
「わ、私は本当は優梨愛と一緒におしゃべりしたかったの。ごめんなさい」
星華は私に謝罪を続ける。よっぽど私に嫌われたくないのだろう。
「いくら私がドMだからと言って、私にひどい態度を取った償いはきちんとしないといけないよね? 星華の体にお仕置きをしてあげる……大丈夫ちゃんと愛のある調教だから」
私は机の引き出しの中から、首輪や鞭や拘束具などと言ったものを取り出して、星華に見せつけた。ごめんね星華。夜の私はドSだから、これから星華にひどいことをいっぱいすると思う。
「お、お仕置き……愛のある調教。素敵……優梨愛のくれるものだったら痛みでも苦しみでも何でも嬉しい。それに愛がこもっているなんて最高すぎて頭がどうにかなっちゃいそう……ちょうだい優梨愛。愛の証を私の体に刻み付けて……」
「ふふふ……星華。今日は楽しい夜にしましょう?」
――体験版はここまでです。続きは製品版をお求めください。
ツンデレでヤンデレな妹との姉妹百合 下垣 @vasita
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます