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「船長、どうします? 地球に帰ろうと思えば帰れますよ?」
船に戻るキャビンの中で、アキが言う。
「まさか」ぼくは笑って首を横に振る。「もう二度と戻らない覚悟でここまで来たんだ。それに、地球では100年も経ってるんだよ。戻ったってリップ・ヴァン・ウィンクルみたいなものだろう」
「でも、ヴァーチャルなら船長のお知り合いもまだいらっしゃると思いますけど。ラーマン博士にもお会いしたいのでは?」
「超空間通信ができれば、ここからでも地球のヴァーチャルワールドにつなぐことができるだろ? だったらわざわざ地球に行かなくてもアブドゥルに会えるさ。だから僕はここにいるよ。だけど、君はどうするんだ?」
「私こそ、地球には誰一人知り合いはいませんから、行く理由がありません」
「そうか」ぼくは安堵する。「だったら、ぼくといっしょに、ここで暮らさないか。基本はヴァーチャルで、気が向いたら星に降りたりしてさ。今の君はリアルなんだから、そのままフルボディ・スキャンすればヴァーチャルワールドでもその姿でいられるだろう? そうして……ずっとぼくの隣にいてほしい」
言いながら自分でも驚いていた。ぼくはこんなことを言うような人間だっただろうか。しかも……これではまるで、アキにプロポーズをしてるみたいじゃないか。そう気づいたぼくは、顔が上気するのを感じる。
「……はい」
うなずきながら応えたアキの顔が、心なしか、微笑んだように見えた。
となりのケンタウリ Phantom Cat @pxl12160
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