終層、新生領域、再生の神話編

7-1      終

「カティ。何してるの!もう時間だよ?列車に遅れちゃうわ」


 一人のケモノ少女が、別の少女に階段の上から声をかける。ここはナスカと呼ばれる人類最古の都市である。

 あたりは緑の木々に覆われていて、近くには青い海もある。今日の空は雲もなくいい天気だ。カティと呼ばれた少女は、急いで読んでいた本をバッグにしまって、上を向いた。


「ありがと、ハイネ。ちょっとこの本が興味深くてさ」

「カティって本当に本が好きだよね。ずっと読んでて目ぇ、痛くならない?」


 二人は駅に向かいながら、会話を続ける。


「ならないよ、別に。ハイネは脳みそが筋肉でできてるから本読まないの?」

「失礼ね、私だって本くらい読む!それで、今日は何を読んでたの?また図書館の奥の方で見つけてきたんでしょ!」


 ハイネは手を振り回している。かわいい。


「うん、ずっと奥の方で見つけたんだ。著者は、カテラ・ニライ。変わった名前」

「一人っていうより、二人の名前をくっつけたみたいだね」

「そうだね…うーんなんか覚えがあるような…?」

「ちなみに、なんていう題名なの?」

「『再生の神話』って読むみたい。昔の言語すぎて解読に時間がかかってるんだけど。どうも世界を作り替えた神様とその旅に同行した六人、神様も合わせれば七人のお話っぽい」

「へぇ。神話なんて神秘的じゃん。私も今度読もうかなぁ」

「ハイネには私が訳した文章をあげる。今のハイネだと何年かかるか分からないからね…」

「…失礼な!って言いたいところだけど、私解読できるほど、頭よくないからなぁ。よろしく、カティ」

「へへ、りょーかい!それより明日だっけ?星救歴2000年のお祭りって…」


 そうして二人の少女は歩いて行った。




 再生の神話の最後のページにはこう書かれている。



 世界は輝いている。これからもどこまで行っても。

 世界は続いていく。限りなき希望は何処までも世界を見守っているのだ。

 それは誰かの優しい想い出。これは彼らの世界の記憶と記録。

 大丈夫、この星は優しい神様が作ったんだから、諦めない限り、君たちを裏切ることは決してない。

 大丈夫、この星は確かにここにあったのだから。ずっと君たちと一緒に生きている。


 だから、どうか、この尊き想いを忘れないで。


 希望よ、何処までも紡がれていけ。


 カテラ・ニライ著

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