第23話【リメン国】
シグと合流してから、僕は光の線の刺す方向に向かって進んで行っている。
この光は近くに村などは無いかと思った瞬間に現れた。
僕の勘が正しければこの光の線は欲しいと思ったモノのあるところへ導いてくれる筈。
この光は一体なぜ見えるようになったのだろう……
思い当たる原因は………多分あのカオスと名乗る人物が僕に何かしたんだろう。
まぁ別に不便じゃ無いし良いか。
そして大体十分ほど立っただろうか?
光の刺す方向に向かって歩いていると、段々と家々の光が見えてきた。
「おっ、マジでベイリスの言う通り集落が見えて来たぞ。」
シグが明かりの方を指さしながらそう言う。
そして、明かりの方へ進んでいくとやっぱり村だと言う事が分かった。
賑やかな声が聞こえたりもする。
どうやら酒場みたいなところもあるみたい。
「さて、まずここが何処なのか調べた方が良さそうだね。」
「それなら、取り敢えず酒場にかねぇか? 色々な人が集まるし俺も酒場での情報収集の方が馴れてるからな。」
「じゃあ、シグお願い。」
「おう。」
大体の村や町は中心部に広場を設けている所が多く、広場は人が集まってくるため必然的に食堂などの店が集まってくる。
少し探してみたらやっぱり直ぐに見つかり、中に入っていく。
「そんじゃ色々聞いてくるからな。」
「頼んだよシグ。」
シグは人々で賑わっている店の中を馴れた感じで酔っ払いを軽く
…………凄いな……僕じゃあんなに綺麗に必要最低限の動きで避けられないぞ……
まるで酔っ払いの一つ先の行動が読めるみたいにどんどん進んでいるよ……
シグによるとこんなに人が多い中、色々な情報が集まる奥の方に三人で行くと確実に面倒事が起きるらしい。
だから僕とメアリは、酒場の中で一番安全とシグが言っていた入口付近の一番隅のテーブルで待機している。
ここは慣れてない人が付いて行ってもただ足手まといになるだけだもんな……適所適材だ。
ただ……椅子に座っているとなんか、メアリからの視線が痛いような気が………
まだ八分の一ぐらいは信じてないみたい……
用心深すぎるよ、メアリ。
「メアリ、ここって本当に何処なんだろうね。」
「さあ……私はさっきから一気にいろいろ起こりすぎてここは夢の中の世界なんじゃないかとまで思うわ。」
「夢の中の世界……か、だとしたら本当に不思議な夢だね……」
そして話すことが無くなり、会話が途切れる。
「…………」
「………………」
「……………」
周りはかなり陽気で賑やかなのにここだけ重力が違うのかと思うほど空気が重くなっているような気が……
ふと奥の方を見るとシグが屈強そうな男と話しているのが見えた。
おいおいおいおいシグ、一番危険そうな人に聞きに行ってるぞ………
その数分後、
「ベイリス、メアリ、ここが何処なのか分かったぞ。」
「何処なの? 早く教えて欲しいわ。」
「聞いて驚くなよ……ここはリメン国の村、ブホレ村らしい。」
「えっ!? ここってリメン国なの!?」
シグのその返答にメアリがもの凄く驚いているご様子。
勿論僕もメアリほどでは無いけど一瞬耳を疑った。
リメン国ってクタア国の隣の国だぞ……
最低でも僕達の村からはそんな一瞬で行けるような距離じゃないのにどういう事なんだ?
あのスポナー…………歪とは一体?
そんな事を考えているとメアリは一つ疑問になったことがあるらしく、シグにある質問をする。
「じゃあ、なんでシグは普通に話せてたの? 確か私達の国と話す言葉が違ったはずだけど……」
「あ、それはな。この辺は国境が近くてクタア国の言葉を話せる人が多いらしい。まぁ俺も少しはリメン国の簡単な言葉位は知ってるけどな。」
「そうなんだ……にしてもシグ、良くあの人に聞きに行ったわね。」
「案外、ああいう感じの人が案外情報を聞きやすいんだ。」
コレは夜の
流石馴れてるだけある……
「あっ、そうそう、宿はここの広場から少し進んだところにあるみたいだぞ。」
「じゃあ取り敢えず今日はそこに宿を取りに行ってみる?」
「そうね……あっ、でも私達お金少しも持ってないわ……荷物は中央都市ドタアクトルの馬車の中に確か置いて来ちゃったんじゃ―――……」
「あー……しまった、俺もだ。」
メアリの発言にシグは頭を抱え込んだ。
そして二人は悩んでいる二人を見た瞬間、僕は思わず少しにやけてしまった。
ふっふっふ……ロクス兄さん、本当にありがとう。
「安心して二人とも、メアリとシグの荷物は今持ってるから。」
「え? ベイリスだって今、手ぶらじゃねぇか?」
「ちょっと此処じゃ人が多いから外に出てから出すよ。」
酒場からそっと出ていき、僕は自分達以外、周りに誰も居ないことを確認する。
そしてロクス兄さんからもらった腕輪に魔力を通し、裂け目の様な取出し口からメアリとシグのリュックを取り出して見せる。
「―――っ!? ベイリス! ソレって空間神殿の魔道具じゃねぇか! 何でそんな貴重なものを持ってるんだ!?」
僕の付けているこの腕輪に気づいたシグとメアリはかなり驚いているようだ。
「テラバヤシがエドラさんの手術して、その後非常サイレンが鳴って直ぐに二人は外に駆け出したでしょ?」
「あ、あぁ、そう言えばそうだったな。」
「確かにそうだったわね。」
「メアリとシグが先に行っちゃった時にロクス兄さんに呼び掛けられてコレを貰ったんだ。」
「ま、マジかよ……空間の神を祀った空間の神殿で作られるって奴だったよな……ソレって確か回復術士は全員支給されるんだっけか?」
あ、そう言えば滅多にコレは作られない……と言うよりも作れないって話を聞いたような気がするな。
………かなり貴重なモノすぎる……あの時は焦りすぎててそこまで頭が回ってなかった……
一段階着いたらロクス兄さんに返しに行こうかな……
何か僕の物以外にも色々と入ってるみたいだし……
「まぁ……うん。取り敢えず確か二人の荷物には一週間以上の食料とか装備が入ってたよね?」
「ああ、入ってるな。」
「………ここがリメン国なら、帰るまでかなり時間が掛かることを覚悟しなくちゃいけなさそうね……」
地図が無いからここが国境付近のどの辺りなのか分からないけどな……
間違いなく次の村、町までは一日、二日では着かなそうだ。
「う~ん……取り敢えず宿の方に行って空きがあるのか聞きに行かない?」
「分かったわ」
「そうしようか、今聞いた話によると宿はこっちの方にあるらしいぞ。」
シグの案内で、宿があると言うところへ向かって歩き出す。
広場から北の方へシグの案内のもと僕たちは進んでいく。
十五分ほど歩くと何処にでもありそうなうな宿が見えてくる。
まだ日没から約一時間程と会ってまだまだ受け付けはしているみたいだ。
早速、宿の中に入りシグが余ってる部屋があるか聞きに行き、直ぐに戻って来る。
「シグ、どうだった? 空いてる部屋あった?」
「いや……あるはあるんだが、ここの宿は部屋が四部屋しかなくて、他に大部屋が一部屋空いているだけだった。」
「この村に他の宿ってあったっけ?」
「それも聞いてみたんだがどうやらここだけらしい。」
腕を組みながら少し困った感じにシグはそう答える。
う~ん……大部屋か……
まだ
これから僕達の村に帰るのにも色々お金が掛かってくると思うし……
だからと言って節約の為にこの村の中で野宿もトラブルが起こりそう。
村から少し出た森の中で野宿も魔物が出てきそうだし、アセス草原でのスポナー騒ぎで戦った後だし少し疲労で厳しいか……
「シグ、ベイリス、取り敢えず行くわよ。」
「は?」
「えーっと、メアリ、何処に行くの?」
「決まってるでしょ、部屋。」
メアリが鍵を受け取って鍵に着いた輪を指に掛けて回しながらその大部屋まで向かって行っているな……
そして僕とシグはお互いの顔を見合うようにして何か話そうとする。
どうやらシグも僕と同じことを考えていたらしい。
「なぁ、ベイリス。俺たちの考えた配慮にアイツは気づいて無いみたいだぜ。」
「……幼馴染だし、殆ど兄妹みたいなもんだから確かにメアリはそこまで目を向けてないみたいだね。」
「まぁ、それなら俺らも気にしなくて良いか。」
メアリの後を追うようにシグと二階の隅にある大部屋に向かって行く。
ここの宿は一階は食堂になっているらしい。
まぁ、小規模な宿って大体こんな感じだよな。
メアリが指で回していた鍵で扉を開け、流れるような動作で部屋の中にある四つのベットのうち一つに顔からダイブする。
「ふぅ~~今日は色々あって疲れたぁ~」
「メアリ……お前なぁ………まぁいいか。俺も疲れたしさっさと休むことにするか………」
シグは背中からベットに倒れこむ。
そして僕はシグの隣のベットに腰かけた。
みんな兎に角お疲れの御様子。
そんな中、僕はさっき地味に受付の近くで貰っておいた地図を開く。
地図を見ているとテラバヤシが何か呟いた。
『とんでもない広さだな……ここからベイリスの村まで大体、東京から岡山までの距離の二倍はあるぞ……』
(トウキョウ? オカヤマ? 何それ。)
『俺の居た世界での地名だ。まぁ、あまり気にするな。にしてもこの世界、かなり広い大陸みたいだな……』
そんなに大きいのかな?
テラバヤシの声は何と無く驚きを超えて呆れているような感じに聞こえる。
人の感情ってある一定を超えたら全く違う感情になるんだよな……
地図をベットの上に広げて見ているとシグが飛び起きた。
「さてっ、ベイリス、メアリ。取り敢えずどうやって帰るか話し合いでもするか。」
「分かったわ~……」
メアリは顔をベットに突っ伏した状態で片手を振って居る。
「シグ、取り敢えず帰り道のルートを決める?
「そうだな、どれどれ、俺にも地図を見せてくれ。」
シグがベットの上の地図を覗き込んで現在地を捜し、僕達の村を見つけて一瞬固まる。
そしてここから一番近い次の村を探し始める。
「次の町まではまぁまぁ遠いな……」
「ここから国境までは大体一.六キロ……歩きで二十分って所かな。」
「そこから近くの村まで行くと……半日位は掛かる。」
「飛竜船乗り場のある村・町までは歩きで約一週間は掛かりそうね……」
何時の間にかメアリも地図を覗き込んでいる。
とゆうか………コレって今までで一番の移動距離じゃないか?
馬車を途中拾えればもっと早く着くかもしれないけど……覚悟はしといた方がいいな。
転生医者【休載中】 武野 諒 @minakataryou
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