第22話【最悪のパターン】
木の枝から飛び降りて、この子の前に飛び降りてみる。
「………ベイリス?」
「ああ、そうだ。」
「……………」
凄い警戒した感じで睨まれてるなぁ………
「そんなに俺の事を見て何かあったの?」
「………。俺………?」
一瞬だけ間を開けて疑問を持つようにそう、この子は言ってくる。
そして一気に警戒の色を強めて来た。
……あ゛。
しまった、ベイリスって確か一人称「僕」だっけ……
つい何時もの癖で早々やらかしちまった……
「あっ、えーっと言い間違え―――」
言い間違えたと言おうとした瞬間、銃弾のような速さで足元の土に雷が「パァン……」と当たる。
どうやら彼女がやったようだ……
もし俺の居た世界にこんな子がいたら間違いなく生物兵器並みだぞ………!!
「……あなた……ベイリスじゃない! あなたは一体誰!!」
凄い見幕で彼女は俺にそう言い放ってくる……
おーっと……もうバレた。
昔っから俺は嘘を吐くのは下手なんだよ……
「ちょ―――待ってくれ!! 俺は君に危害を与えるつもりはない!」
そう言って、しょうがなくその場に正座を組んで座り込んだ。
そして丁度良いタイミングでベイリスが起きる。
『んっ………此処は―――精神界か?』
「ふぅ………やっと起きたかベイリス。丁度良い早く変わって説明をしてくれ。」
「え? うん。分かった”替わって”』
そして俺の周りの景色が一瞬にして精神界に変わる。
********************
「…………えーっと……メアリ?」
テラバヤシと替わると、目の前に居たメアリは少しだけ警戒を解いた。
「本当にベイリスなの…………?」
「メアリ、ちょっと待って。今、寝起きで頭の整頓が追いついてないから……」
まず僕が気絶している間にテラバヤシが僕の体を動かしてたのか………?
それともテラバヤシが外に出ている時にメアリが見つけてくれたのか……でこういう状況になっているのかな?
メアリが僕の事を警戒していることから……うん。この二人少し話したのかも。
話した……にしては――――この状況は何か穏やかじゃない………。
つまりメアリの性格から察するに、大方テラバヤシが出てる時に僕の体の足元とかに電撃とかを飛ばしてから………そうだな。
「私が三秒数える正体を現さないと今度は頭に当てるわよ!!」とか言った何時もの感じ……だろう。
……最悪のパターンじゃないか……!!
どうしてくれんだテラバヤシぃぃぃぃ!!
『んなこと知らんな。』
………。この野郎……
「よし、頭の整頓が終わった。メアリちゃん、取り敢えず電撃を放つ準備をするのやめようか。」
「む……。バレた。と言うことは本当にあなたはベイリス……?」
「そうだけど信じてくれる?」
「…………じゃあさっきのは誰なの?」
メアリはかなり警戒しているご様子。
やっぱり、ソコ突っ込まれるかぁ……
しょうがない、本当の事を言うしかなさそうだ。
隠しきれなくなり観念したように僕はメアリに話す。
「もう一人の僕……なのかな? メアリも、もう一人の僕を見たのは初めてじゃ無い筈だよ。ほら、例えばジャンボ水餃子を喉に詰まらせた人
を助けた時とかエドラさんを助けた時とか………」
「………………」
そう説明すると思い当たる節があるのか、メアリはさっきよりの少し警戒を解いて集めた雷の魔法の流れを解く。
「信じてくれる?」
「半分。」
「メアリ、せめてもう四分の一信じて欲しいな。」
「う~ん……じゃあ、今から私がある事をするから、その対応で信じるか決めるわ。」
そう言うとメアリは雷の魔法と水の魔法を捩じり合わせるように流れを作り、思いっきり大きな火柱を立てた。
そしてその場に崩れ落ちそうになる。
何とかギリギリ地面に向かって倒れ始めているメアリが地面に着く前に受け止めるのが間に合う。
メアリは今ので全ての魔力を使い切り、気を失っているようだな。
「…………えと、どうすれば………」
今回ばかしは今までにない予測不能な事されたんだけど………
気を失っているし、無理やり魔癒薬を飲ませるのもちょっとな……
下手して気管の中に入ったりしたらアレだし。
「しょうがない、メアリも近くに居たんだ、きっとシグもこの辺に居る筈。」
気を失っているメアリを背負う。
「さて、どっちの方角に進もうか――――」
そう思った瞬間目の前に光の線が現れる。
その線の向く方角は少しずつだけど方位磁針みたいにある特定の方向だけ示していた。
「……もしかしたらこっちの方角にシグが居るのかも」
そう思った僕は、光の線の伸びる方向にメアリを背負いながら歩いていく………
すると光の線の先に松明の火の明かりのような物がこちらの方向に向かって来ている。
段々と近づいていくうちに声が聞こえて来た。
「……ーい! ……リス!! メアリー!! 近くに居たら教えてくれー!!」
この声……シグだ!
「シグ!! 居るのかー!! シグー!!」
「………!! ベイリス!!」
そうして数分後、無事シグと合流出来た。
「おっ!! やっぱりベイリスはメアリと合流出来ていたのか!!」
「うん。だけどちょっと厄介な事になちゃっててね……」
「…………? もしかしてさっきのメアリの火柱は何かの魔物と遭遇したのか?」
「いや、そうじゃないんだ……まだそっちの方が厄介じゃないかも……」
シグは首をかしげている。
まぁ、さっきのメアリの全力の火柱のお陰でシグと合流出来たもんだもんな……
「まぁ、ベイリスは気を失っているフリをしているメアリを背負ってるんだ、よっぽど厄介な事があったんだな……」
「……え゛? 気を失っているフリ!?」
シグが頭をかきながらそう言い、それが聞こえた瞬間、メアリが少し動き始めた。
「ハァ…ハァ……なん…で…シグ…には…何時も…バレ…ちゃう……のかし……ら……」
メアリが今にも気を失うか失わないかの狭間のような声で話し始める。
息遣いが荒い。かなり辛そうだ。
「まぁ、俺は何時も
「へーそうなんだッ……てメアリ!! どうして気を失って振りなんかしてたのさ!! そんなギリギリを攻めてたらただ辛いだかじゃん!! 直ぐに魔癒薬を飲んで!!」
収納から残り三本の魔癒薬のストックの一本を取り出してメアリに直ぐに飲ませてあげる。
「メアリも馬鹿だ……どうせなら魔力をすべて使い切って気絶した方がいいのにな、ベイリス。」
「シグ、私はただここに居るベイリスが本物なのか、偽物なのか、調べたかっただけなのよ。もしもの時に一発は
「どうしてそんな事をしたんだ? 見れば一瞬で分かるだろ?」
「………えーっとシグ、多分それは僕に原因があるんだ…………」
シグにもメアリにした説明と同じような説明をする。
もう逆に秘密にしている方が厄介な事になってきそうだし……
こういう時は、シグの性格上――
「……つまりベイリスには自分の中にもう一人がいて、そのもう一人は自分の前の
人生の記憶そのものみたいでソイツが今まで治療とかをしていたのか……」
「シグ、僕の事を信じてくれる?」
「あぁ、今のを聞いて、今迄に起こった事全てに納得がいった。」
「それ本気で言ってるのシグ、私はまだ信じられないわ。」
まだメアリは疑っているらしい。
このモードになったメアリはとことん探ってくるからなぁ……
「メアリ、お前は分かるんだろ? 嘘を吐いているか吐いていないか。」
「…………。何と無く分かるけど……」
「それにどんな対応をするかどうかでに極めようとギリギリの魔力残して行動を辛い中見てた判定はどうなんだ?」
「対応は……本物だった。」
流石にこんなに疑われると傷つくな……
「じゃあ、俺はちょっとベイリスの中のもう一人のベイリス……テラバヤシだっけか? そいつと少し話がしたい。」
『え? 俺と話がしたいのか?』
「……今、テラバヤシは凄い困惑してる。」
「そうなのか? ただ、単純に本当に人が替わる様なのか気になるだけ何だが。」
『ベイリス、どうせもう話したんだ俺が出ていいか?』
「分かったよシグ。今、テラバヤシに出て貰うね。」
取り敢えず目を何と無く瞑る。
『………しょうがない。”替われ”』
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俺は瞑られた目蓋を上げる。
「……確か、君の名前はシグ君……だったよな? こうして話す日が来るとは思わなかったよ。」
「っ…………!! 確かに違和感を感じるな、どうやら本当に人が替わったみたいだ……」
「何でそんな事が分かるんだい?」
そう言うとベイリスがその答えを言ってくる。
『テラバヤシ、それは多分シグは普段からトークスキルだけは物凄いから、ちょっとの違和感でその人がどんな感情を抱いているのか分かるみたいなんだ』
ほう。……そんな事が出来るのか。
この世界独自の異能力なのか?
いや、もしかしたら俺の世界にも一人は居たかも知れないな。
それだけ確認出来たので、どうやらシグ君は気が済んだようだ。
そして体の主導権をベイリスに返す。
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だいぶ話がおかしな方向に………
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