大学生がパラレルワールドへの行き方について考えてみた

アオイユキ

パラレルワールド

パラレルワールド。

その言葉の並びを見るだけで、こんなに空が黒い日でも、無性に心が躍る。


僕は厨二…ではなく、中2の頃から「パラレルワールド」に行きたい、と願っていた。今流行りの「異世界転生」、ではない。パラレルワールド、つまり「並行世界」に行きたいと常々考えていたのだ。

申し遅れたが、僕はなんてことない、その辺に生えている雑草のようなしがない大学生だ。生まれ持った強い力なぞなく、ラノベ主人公のような異能力に恵まれることもなく、一般的な家庭に生まれ、幼少期はそれはもう平凡に生きてきた。


そう。、である。

パラレルワールドという非現実に、今、憧れてしまっているのは。


「きさらぎ駅」

僕が初めてパラレルワールドを知ったきっかけだ。一度は耳にしたことがあるのではなかろうか。何、知らない…?しかたない、簡単に解説してしんぜよう。

発端は某掲示板の書き込みからだった。静岡県の私鉄に乗っていた投稿者は、ある異変に気付く。電車が止まらないのだ。そうこうしているうちに止まった駅の名前が、「きさらぎ駅」という無人駅だった。なぜか電話はつながらず、地図にも表示されない。掲示板の住民の助言により、投稿者は線路に沿って歩くことにするも、怪奇現象が続く。聞こえて来る太鼓と鈴の音、片足で立っているおじいさん、「伊佐貫トンネル」という実在しない場所…。トンネルを抜けると、そこには人がおり、車で駅へ送ってくれるとのこと。ホッとしたのもつかの間、車はどんどん山奥へと進んでいく。掲示板を見ていた人たちが心配するなか、充電切れという言葉を残し、投稿者は姿を消してしまった…。


ふう、語り過ぎてしまった。これでは「自分の話をしやがれ!てやんでい!」とののしられても仕方ないな、ウン。

この話を初めて読んだとき、僕は思った。

別の分岐へ行ってみたい、と。


を求めていた僕にとって、パラレルワールドは強い憧れの対象となった。この話のほかにも、「桜の木の下にいったらめまいがして気づいたら並行世界にいた」とか、「エレベーターに乗ってたら別の世界に行っていた」とか、パラレルワールドに関する書き込みはいくらでも見つかった。そのどれもが、本気で真実だとは、厨二の僕でもさすがに思わなかったが、いずれかは真実だと信じていた。え、今笑った?


そういうわけで本題に入ろう。ここ何年か、僕は本気でパラレルワールドへの行き方について考えている。僕と同じことを考えているような素晴らしい方がいたらいいなと思い、ここに投稿することにした。

そもそも、パラレルワールドが存在しているかどうか、という点は重要だと思うが、そこのところはもう信じるか信じないかはなんとやら、ということで。存在しないことを証明することもできないし、「人間が想像するものはすべて存在する」というし…ね。


さて、パラレルワールドとは、日本語では「並行世界」という。これは「異世界」とは少し意味が異なるのだ。両者とも要は「今私たちがいるこの世界とは違う世界」の事を指すけれど、両者は厳密にいうと違う。「異世界」とは、この世界とは理から異なっている世界の事を指す。例えば、魔法が使えたり、空が飛ぶことが可能になる。一方「パラレルワールド」とは、この世界の宇宙と同一の次元を持っているものの、ある時空から分岐し、並行して存在する世界を指す。僕が今日の朝ごはんにフレンチトーストを食べる世界線と、配給されたパンを頬張る世界線、といったところだ(実につまらん)。つまり、世界は分岐の数だけ無数に存在している、ということになる。

パラレルワールドに行く、ということは、二つに分かれた分岐を飛び越えて、別の分岐へ行くこと、ということになる。つまり、乾パンだったけどフレンチトーストがよかったし、パラレルワールド行っちゃお、みたいな。いやこんなくだらない世界線の話をしているんじゃない…。


そこで、僕は調べた。ありとあらゆる某掲示板のパラレルネタを‼そこで分かったのだが、どうも人気のあるネタの多くは、「電車」「エレベーター」「トンネル」といったものにより移動していることが多いのでは?という結論に至った。

さらに文学少年(?)の僕は、古典文学にも精通しているのだが、「中心と周縁論」というものがあって、「山」や「坂」といったと呼ばれる装置によって、別の土地や世界の物が、都に来るように書かれていた、という。パラレルではないが、かぐや姫も彼女にとっての異界地球に、山を通してやってきたじゃないか!最後は月に帰ることができず…あれ、そんな結末だったか。

現代でも、境界を伝ってパラレルワールドへと行く話は多い。「千と千尋の神隠し」ではトンネル、「君の名は。」では電車。


そう、大事なのは「境界」。

地点と地点を結ぶ役割を持つ装置だ。鍵を握っているのはそれだ。

そこで僕は、ありとあらゆる境界に足を運び続けることにした。

適当に電車に乗り続けてみる、無意味に階段をダッシュする、エレベーターですべての階に順番で降りてみる、というように。

母さんには「今の時期、あまり外に出ないように」と注意されているが、こっそり見つからないように身を隠しながら実行に移した。きっと見つかっていないだろう…。テレビでも外に出るなってうるさいもんな。最近は譬ク繝溘し繧、繝ォ警報もよく聞こえるし。


結果どうだったか。ここまで読んでくれた、モノ好きなキミたちならわかるだろう…。こんなことを繰り返していた自分に嫌気がさすほどに恥ずかしい、いやマジで。これからは現実をみて生きていかないといけないのかもしれない。

でも僕はあきらめない。きっといつかパラレルワールドに行けるって信じている。


いつかパラレルワールドに行けたなら、




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