たとえ、聲が枯れても
@masiro0202
【プロローグ】
――ザアァァアアア・・・!
消えていく意識の中で目に写っていたのは、真っ赤な血で染まった白いタイルだった。
振り募る雨と混ざり合い液状になっていく流血は幾層にも重なる溝みぞの間を伝い、何時いつしか自らの手の平に重なる。暖かさと冷たさが混じりあった不快なソレは、正直あまり心地良いものではなかった。
ただ、今も止とまることなく流れ続けていく流血を見ていると、もしかするとこの降り止まない雨は自分の身体の中から溢れていく血液と同じなんじゃないか。と錯覚しそうになった。
そう思えるほど、曇り空の雨も、腹部から溢れる出血も、止とどまることを知らなかったんだ。
『・・・じょうぶ・・・ んじをして・・・!』
自分を呼ぶ誰かの声が聞こえる。
耳を澄ますが、絶え間ない雨音あまおとにより誰の声なのかは判別出来ない。
ただ、この人は自分のことを心配してくれているんだろうな。ということは理解出来た。
何でこの人は他人のことを心配しているんだろう。
別に死んだって構わないのに。
別に自分がこの世界から居なくなったって、何も変わらないはずなのに。
それでも自分を呼ぶ誰かの声は尽きない。
何時しか薄れていく意識の中で、最後までその声だけが記憶の中に残っていた。
そしてただ一言、ある言葉だけは、朦朧とする意識の中でハッキリと覚えていた。
『ーーは生きて。そして――を永遠に憎んで』、と。
あの声の持ち主は、一体誰のものだったのだろうか。
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