第30話 あれから1年

 天使が私のもとを去って1年。翔也は通信制の高校に通い始めた。規則正しい生活とは言い難いけれど、毎日出かけていくようになった。

 この子の人生はこの子のもの。私はただ応援するだけでいい。信じるだけでいいんだ。

 柚月も中学生になった。セーラー服に袖を通すと、ずいぶん大人びて見える。子どもだと思っていたのに。いつか、私の背を追い越すのだろうな。それはうれしくもあり、寂しくもあった。

 それで私は、と言うと今、病院のベッドの中だ。隣で旦那が見守っている。高齢ということもあり、ひどく心配そうに眺めている。当の私は、何も心配などしていなかった。

 いよいよ陣痛が激しくなる。

「ヒーヒーフー、ヒーヒーフー」

旦那の声が大きすぎて、私、痛いのに笑みがこぼれる。この人はいつもこうだ。だから、一緒になったんだった。

 やがて、室内に産声がこだまする。

 「元気な男の子ですよ」

 助産師さんが抱えているのは、4000gを超える大きな大きな赤ちゃんだった。抱きかかえると、早速「ぷぅ~~っ」とかわいいオナラをした。続いて、「ゲプ~~~っ」とゲップした。

 そのふてぶてしい顔は、どことなくあの天使に似ていた。

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この子はきっと咲く子だよ〜 イジワルな天使が教えてくれた魔法のことば 〜 くればやし ひろあき @hiroakikurebayashi

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