どんでん返しが起こらない一日
ぎざ
どんでん返しが起こらない一日
私の名前は
急いでママに用意してもらった朝ごはんを口にくわえて出発!!!
ダッシュ!!!
と思ったら玄関出たあとで、口にくわえてたのがトーストではなく、タバコだったのに気づいたの。え! なに、どういうこと!? 私のトーストはどこに行っちゃったの? すぱ~
ここで私がトーストをくわえていなければ、運命のあの人とあの交差点でぶつかることも無い。私は必ずあのトーストをくわえたままで、あと15分後あの交差点に行かなければならない。そういう運命なの。
どうしよう。はやくトーストを探さないと!!
でも、交差点にも行かないと!! とりあえずダッシュ!! すぱ~
◆
私は俎
と、思っていたのだが、タバコをくわえていたつもりが、先にトーストを食べていたようだ。もぐもぐ。おかしいな。途中まではタバコの味がしていたと思ったが。
と、思ったら、机にはまだホカホカのトーストが。
私は疲れているのだろうか。妻に机の上のトーストを包んでもらい、これは昼食としていただくとしよう。
さて、さっきカバンに入れたときに確認したから大丈夫だろう。今日は大事な会議がある。徹夜して作成した資料はファイルに挟んである。完璧だ。
これで今度の大口契約は間違いなしだな。
◆
私は俎 皿。ただのしがない主婦だ。朝ごはんの準備はトーストで簡単に済ませて、昼までに買い物を済ませて、昼から夕方までパートに行く。パートから帰ってきたら、家族のための晩御飯の準備をする。今日は平日だから、金曜までそれが続く。
娘は転校初日、夫は大事な契約があるって言ってたっけ。晩御飯は二人の大好きな料理にしないとな。と、既に書いて冷蔵庫のクリップに挟んでおいた買い物リストを確認する。
すると、難しい漢字や英語が並んだ資料みたいなものにすり替わっている。あれ? 買い物リスト、どこやったかしら。これ、まさかパパの? 資料よね? 届けた方がいいのかしら。
携帯電話を操作してっと。えーと、履歴で……。
あれ、でも私の携帯、どこやったかしら。一瞬目を離した隙に? で、この見たことないリモコンは? うちにこんなのあった?。どうして手に持ってるの?。変なボタンがある。押してみようかしら。
いや、こんなよくわからないもの押しちゃだめよね。
でも、押してみたい。
うずうず。
◆
私は大いなる科学者。似たような物体を交換するマシーンを開発したのだが、そのリモコンがどこにも見当たらない。リモコンが無ければ起動もままならない。
こうなったら、一度分解して、本体にもスイッチをつけるか? もう少し探してみよう。
ん? このスマホは誰のだろうか。落とし物だろうか。あ、電話がかかってきた。
あ、はい、もしもし。え? 誰ですか? 皿? 皿には困っておらんよ。大事な資料? 資料はここにはわんさかあるぞ! ん? 人違い? あ、切れた。
なんじゃ、まったく。お? 今持っていたはずのスマホが無いな。
いや、スマホはどうでもいいんじゃ。リモコンはどこかのう……。
◆
僕は学級委員長。授業で使うDVDを確認しようとしたら、リモコンの電池が切れて、使えなくなっていた。交換しようと蓋を開いて机に置いておいたのに、捨てようと思ったら、代わりに誰かの携帯が置いてあったんだ。
おかしいだろ。と思ったら、電話がかかってきた。もしもし。この携帯の持ち主の方ですか? はい。あー、そうだったんですね。じゃあ、ちょっと携帯電話を使わせてもらいます。連絡先は、と。皿? この人でいいんですか? じゃあ、電話して、資料をそちらへ持ってくるように伝えておきます。
あ、この携帯どうしましょう。うーん、先生に許可をもらって、少し遅刻することになりますが、今から学校を出て、近くの交番まで届けておきますね。そこから結構距離あると思いますので。いえいえ。それでは。と。
不思議なこともあるものだなぁ。あれ? 急に夜になったぞ? どうして? それに、なんだか、唇に違和感が。蚊が血を吸ってる? こんなところを? えー、でも口の近くで潰すのはいやだなぁ。早く離れてくれないかなぁ。
◆
俺は
あぁ、それにしても春は風が気持ちいいや!! ん? なんだ? なんだか急に視界が……ぼやけて……!! うわっ!!!
◆
私は俎 組。そろそろ運命の交差点にたどり着くっていうのに、私の口には相変わらずトーストではなく、タバコがくわえられている。すぱ~
タバコを吸っていてもしょうがないのに!
え? なんだか、あのトラックこっちに向かって突っ込んできてない? え? まさかあのザ・委員長! みたいなメガネかけている金髪ヤンキーが私の運命の人なの?
これは運命を受け止めなければならないのかしら! でも受け止めたらさすがに死んじゃうわよね……。ど、どうしよう……。すぱ~
「あぶない!!!」
「キャッ!!」
キキーーーーーーッ!!!!
◆
私は俎 組。
私、夢でも見ているのかしら。タバコを吸っていたはずの、私の唇は、誰かの唇を吸っていたの。サングラスをかけたワイルドな人。制服を着ているってことは、同じ学校なのかしら。まさか、運命の人ってこの人!?
私の転校初日は、なんてドラマチックなスタートを迎えたのかしら。ドキドキ。
◆
僕は学級委員長。蚊に唇を吸われていた僕は、気が付けば路上で同じ学校の制服を着た女の子に吸われていた。
でも、背後からはトラックが迫ってきていた。間一髪で女の子と共に歩道に逃げ込んだ。なんとかケガせずに無事に座り込んだ。
急に夜になったと思ったのは、さっきかけていた僕のメガネが、突然サングラスになったからだった。
今日は不思議なことばかり起こる。女の子は、突然キスしてしまったというのに、なぜだか僕をキラキラした瞳で見つめてくる。えーと、ごめん。君、名前は?
◆
うーむ。リモコンはどこにもないようじゃ。
あの高性能なマシーンは、似ているもの同士を交換してしまう機能を持つ。
くわえていたトーストが、くわえていたタバコになったり、
挟んでいた資料が、挟んでいた買い物リストになったり、
携帯を操作していたら、操作していたリモコンになったり、
かけていたメガネが、サングラスになったり、
蚊が少年の唇を吸ってたら、吸っていたタバコと入れ替わったりする。
はっ!! そうか。リモコンとスマホが入れ替わってしまっていたのか。
あのスマホはそういうことだったのか。
ならば、リモコンが戻ってくるように、何かを操作しなくては!!
えーと、じゃあこのドキドキな気持ちでサングラスをかけた人を見ると、思わず抱きしめたくなってしまう機能をもつマシーンを操作してみるとするか……。それ!
◆
ちなみに、学級委員長が蚊を潰していたら、同じタイミングでタバコを潰していた下駄箱さんとのラブラブエンドになっていたかもしれないし、パパが、ママが来るまで時間を潰していたら、時間という概念がどっかにいっちゃっていたかもしれない。
どんでん返しが無くて良かったですね。じゃあ僕は何かあった時の為に、サングラスを用意しておこうかなっと。スマホを操作して、サングラスを購入っと。
……ん? これは、リモコン? スマホがリモコンに代わってしまったようです。
ふふ。さぁて、これは、何のリモコンでしょう?
とりあえず押してみましょうか。……ポチっと。
どんでん返しが起こらない一日 ぎざ @gizazig
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