もうひとつのKAC

アーカーシャチャンネル

本編

 ゲーセン店内、誰もが驚く瞬間が待っていた。彼女のプレイに歓声がわきそうだが、場所が場所だけに静かに盛り上がっている。

筺体の形状を見る限り、レースゲームを思わせる大型だったので勘違いするプレイヤーもいたのだが――。

「遂に、やったの?」

 稼働開始からわずか一カ月弱、異色のリズムゲームで最難関譜面のクリアプレイヤーが現れた。

ある意味でもタイムアタックを思わせるような展開を見せ、難関譜面を前に陥落するプレイヤーは後を絶たない。

実際、周囲のプレイヤーからすればタイムアタックと認識されそうなゲーム画面だったからである。

「どういう事だ?」

「あれをクリアできるなんて信じられない」

 操作するのはパワードスーツを装着したような人型アバターであり、判定ラインに合わさるようにノーツを捌く必要性があった。

ノーツを捌くのは判定ラインに合わさってからであり、ずれると判定は変化してしまう。パーフェクト判定となると、至難の技と言える。

アバターのデザインは自由自在だが、特にアバターの装備で判定が変化したりはしない。所持スキルで変化する形式らしいが、そこまで気にするような物でもないだろう。

「一体、どうすればここまでの――」


「リプレイを見ても信じられない」

 譜面の配置等を踏まえると上級者向けすら生ぬるいレベルであり


、始めたばかりのプレイヤーで勝ち目があるとは思えない。

ノーツに関してはアバターの方が動くタイプの為、レースのコースにノーツが配置されている形式だ。

ノーツは単純に言っても二種類あり、単純に通過するだけ、特定コースを正確になぞる――他のリズムゲームに比べると、覚える事が少なくて済みそうな雰囲気はあった。

「これが、全ての始まりになる――」

 彼女は他にも様々なリズムゲームをプレイするだろう。

そして、様々なイースポーツジャンルの中でリズムゲームが注目される日は来るのだろうか?

SNS上で話題となった彼女のプレイは、後にプロゲーマーとなる布石となるのか定かではない。



(結局、また一次選考落ち――)

 リズムゲームと言う題材は良かったのだが、最終的には落選と言う形になった。流行りジャンルばかりが出版される時代に、彼のような作者は不要なのか?

別の小説サイトでは二次創作が圧倒的なシェアを誇るので、そちらで一次創作を投稿しても意味はないだろう。

(繰り返されるのか――負の連鎖が)

 その疑問は別の所で解消される事になった。彼に声をかけたのはゲーム会社のスタッフだったのである。

スマホでメールボックスを確認し、そのメールに気付いた時は彼の方も困惑した。

『作品を読ませていただきました。リズムゲームに対する熱意、荒削りであるかもしれませんが、こちらに伝わりました』

『荒削りな作風は、こちらで何とか調整する事で何とか対応仕様と思いますので――』

 メールの差出人であるスタッフの正体はリズムゲームをメインとしてリリースしているゲーム会社だった。

彼のリズムゲームに対する熱意は、思わぬ場所でSNS上に拡散していき――最終的にリズムゲームのベースとして採用される事になったのである。



 これがフィクションなのか、ノンフィクションなのか――その真相はどうなるかは分からない。

カクヨム上で行われた盛大なる祭りも、終わりを迎える事になる。闇とも言えるような事もあれば、そこから新たな可能性を見いだせるような事もあっただろう。

作品を書き続けた彼らには、どのような結果を受け取るのだろうか? 全ては、審査結果が握っている。

それぞれの作者が戦い続け、執筆をしていったKACは――こうして幕を閉じるのであった。

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