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人生で一番目覚めの良い朝だった。日差しが気持ちいい。活力がみなぎってくる。

今は多分朝の7時くらい。

あれから3時間くらいしか寝ていないが、全く眠気は感じない。

いつもならしっかり13時間は眠るはずなので、これもひとえに無敵パワーのおかげなのだろう。

そうだ、俺は無敵になったんだった。無敵、無敵ねぇ。

昨日とは違う澄み渡った思考で考えてみると、だいぶ胡散臭い。

「死にかけの男のところにロリ神様が現れた。」この時点でまあまあ滅茶苦茶だ。

「それでもって、その男を無敵にした後に光って消えた。」意味が分からん。無敵て。小学生かよ。

昨日のことは夢だった可能性が大いに浮上してきた。

なのでもう一度、包丁で掌を刺してみた。

ぐさー。ぶしゃ。掌に穴が開く。血が飛び散る。

でも、痛くない。肉はうにょうにょ結合しようとしているし、スライムが如くうねうねした血液は、元いた場所へと戻っていく。

夢じゃなかった。これは喜んでよいのだろうか。一夜のうちに人ならざるものに変貌を遂げてしまった。

ひょっとして、これはとんでもないことなのではないか?

人間的で医学的、倫理的で宇宙的な観点から見て、空前絶後で驚天動地なことが起こっているのではないか?

と、むつかしいことを考え始めた俺の思考は、大家さんの声でかき消された。

はいはい、家賃払えってんだろ。金なら今2円しかないぞ。今すぐどっかに行け、クソババアめ。

などと心にもないことを考えながら無視を決め込んでいたが、今日はいつにもましてしつこい。

どうやら堪忍袋の緒が切れてしまったらしい。

もう許さないとか、出てこないと警察を呼ぶとか、物騒なことを言っていたので渋々ドアを開ける。

大変な剣幕で怒鳴りながら「金を払え」という内容の説教をする大家さん。

そんなに怒んなくてもいいじゃん。あ、この人耳毛はえてる。

というかうるさいなぁ。あーめんどくさい。いつ終わるんだこの説教?

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無敵 @midorisi

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