ケイ・グリンダはかく語りき2

戦利品を括り付ける、ちっと欲張りすぎたかもしれない後輪がちょっと潰れてる、でもこんなに大収穫だし頑張ってもらいましょうかねほーらご飯いっぱい上げるから頑張ってね。


ジャパンだったかチャイニーズだったかのなんかSASUKIのTETUKO_c3poってバイクってパパが言ってたけれども。

パパが改造しまくったせいで原型無いし、全面に薄い鉄板はっつけちゃってるもんだから外装も糞もないし前面に東洋の魔除けだつってバッタの面貼り付けてるし折角ラメ入りのピンクで塗ったあたしの相棒がこんな有様ってわけよ、まあ…こんな世界になっちゃったしらしいっちゃらしいけれどもね。


TETUKOに跨りキックペダルを思いっきり下に蹴りエンジンに火が入る

重く響くエンジンの鼓動が探索に疲れ痛くなった腰にまーたこれがいいんだわ


「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”~~~~~~ああああああああああ…

お~きくきく、酔いも廻るのはやくなるぅうう~る~」


ハンドルに突っ伏し数秒バイクの鼓動を楽しむ、軽い酔いが蠢動の楽しさを倍増どーん


「かえりますかあああああ!!パパー大量だぜえええええWOOOOOOHOOOOOOO! HAPPY PUPPYYYYYYY FUUUUUUUUCCK

EAAAAAAAAAARTH!!!」


アクセルを全開に搾りウィリーしながら爆走する

TETUKOに貼られた鉄板がアスファルトを削り火花を上げ、正面につけられたバッタお面が風に煽られがカタカタ笑う。

ゾンビの糞が爆音エンジンに釣られ脇道から出てくるだろうけれども

そんなの関係ないね~TETUKOの速度にあいつ等がついてこれるわけねーし

大体脳みそまで腐ってるあいつらは森の動物の音や、樹々の葉が擦れる音、枝葉の騒めきで木の下で、あうあう~あうあうあ~って馬鹿みたいにあへあへやってんのよ。

地球が朽ち果てるまで木の下でマスかいてな。


ゾンビが繁栄する糞な世界だけれども、一つだけ悪くない事があった。

あたしの住んでる田舎はドが付く田舎でアタシも田舎すぎて飽き飽きはしてたけれども、パパはこの土地を愛していた、今は何処ぞかで元気にあうあう言いながらゾンビやってる可能性が高めのママンと一緒に暮らしてた思い出があるからだ。


そんなパパが愛してやまないこの土地に州を挙げての大開発計画があった、パパは愛する土地を荒らされると当然激高して抗議に向かったんだ。


州管轄の刑務所の横の駐車場についたパパは2mを超える巨体で吠えまくった、それはもう吠えまくった、でっけー声でママとパパの愛のストーリーを吠えいかに自分が土地を愛してるのかと、そしてパパの話を聞いた年老いた刑務所の隣の何の関係もない駐車場のお爺ちゃんからお菓子貰って帰ってきた。

あの老人は話の分かる人だしきっといい方向に話は転がるはずだと言って、アタシも話を聞きながらウンウンそうだね~と聞き流していた。


パパは政務の事なんか分からないし、多分この地球もでかめのモグラが今でも地中でテレビディナーを食べながら世の中の事を決めてると思ってる。

だから地中に届く程声がでかいし、でかくて響く音響が好きなんだろうね~。


ま、そんな計画もゾンビに安全靴履かせてリゾート地の開発なんてできるわけねーしご破算って事よ、仮にゾンビが造ったとしても全部が生肉と腐汁で出来てそうだわ。


真っ直ぐな道を10キロ程走り、脇道に曲がり家に帰ろうとした時、快調に走るTETUKOと並走する影が木々の合間より視界の端にちらりと写った。


「FUCK…」


4m程の体長、はち切れんばかりに隆起した手足、ところどころが禿げ焼野原のような疎らに黒い体毛が生えた身体、ぼこぼことコブが付いた顔面、大きく裂け異様に長い舌を垂らしている口、何よりもその眼がアタシは嫌いだ、まん丸に開かれぼっかりと穿ったような白目が全くない真っ黒な眼球。


多分元は犬かコヨーテか狼だったんだと思うけれどきんめぇ~。


当初、変貌を遂げていったのは人間の死人だけだと思い込んでた

生きとし生けるものすべてが変わっていった

細胞が終わらない生体反応への拒絶をしてるかのように全ての生命が異形に変わっていった、どの生態もそれは殆ど例外なき変革だった。

生物はより大きく より硬く よりこのFUCKな世界への適応をし始めたみたい


多くの生態は栄養価の高い対価を得るために他の生命体への攻撃的な姿に変貌を遂げていった、その変貌を初めて見たのは電子機器がいかれ初めてゾンビを見た時から僅か2か月程度の時だった。


買い込んだ小麦粉を納屋へ取に入ったパパの叫び声が聞こえた、もうゾンビなんて慣れてきたし~パパはいっつもショットガンをバックホルスターに入れて背負ってたから悲鳴の前に【ズガーン!!】ってレミントンM870の音が響くはずだ、疑問に思いながらアタシも納屋にいったわけ。


入り口で前で腰の引けてるパパが納屋の方を指さしながら変なのが居ると喚いてくる

近くにいるんだからでっけー声は抑えてくんないかなーと思いながらも納屋の扉を全開にして中を見たわけさ、小麦粉の入った麻袋に隠れようとして隠れらんないくらいにでっけくなったのが、なんかいるのよよく見たらネズミ中型犬位になった体表に鱗が生えたネズミ、中型犬程+鱗+ネズミ 情報が脳にゆっくりと挿入されるたびに全身がブツブツと泡立ったよね。


脳天ぶち抜いてやろうかとパパのショットガンひったくったけれども、小麦粉にデカキモネズミの脳漿、臓物ぶちまけちゃう。

デカキモネズミの脳漿臓物入り小麦で作ったプティング召し上がりたくないわ~。


どうしようかと困って居るとパパが後ろから慣れてきたのか、パパが追い出してやると息巻きアタシの前に出た、さっきまでアタシの後で震えてたのはまあ人間嫌なモンの一つや二つはあるからね。

慣れて克服するのは大事だと思う、うん、でも慣れて克服するのは人間だけじゃない、小麦袋の裏で縮こまってたデカキモネズミもパパが動いた隙に巨体に見合わぬ速度でアタシたちの足元目掛けて突進してきた。


そりゃーもうパパは当然のように

悲鳴を上げてアタシを圧し潰すよね、ひえーじゃないんだわこっちはぐえーだわ。

そのすきにデカキモネズミはとっととどっかへ逃げて行ってお互い事なきを得たってわけ、パパとデカネズミはね、アタシはつぶされ損な訳よ。


それから度々パパはデカキモネズミを見かけるんだけれどもまあそれは…あのFUCKを掃除してからまたゆっくり思い出そう、今日は探索で疲れてんだわまた今度にしてくれよと思いつつTETUKOのアクセルを搾り加速する。


この世界になってから暫くの食料は大丈夫だったけれども、畑を作りのんびり作物の成長を見届ける前に餓死が待っていること間違いなしだった。

手に入ったのは多めの小麦と塩、砂糖。

家に引きこもってのんびりこの泥酔したラブクラフトが書いたようなアウトブレイク《集団発生》を高みの見物なんていかないわけよ。

食料、ガソリンその他燃料、情報の入手、便利な物や消耗品の確保、子供のお使いに毛が生えたくらいの仕事だよね~笑える。


バイクで走りゃーそりゃーぐずぐずに腐ってる連中はアホみたいに通過した跡の、アスファルトに残ったタイヤの残り香べろべろくんかくんか、東方のHENTAIみてーにアヘアヘやってるだけだけれど、今回みたいなイレギュラーが出るわけよ、デカくてきんめぇのが!!


そこでアタシは考えた奴等とアタシの違い長所と短所、奴等は力が強く早いそしてタンパク質を切り裂くに特化した爪や牙、それと硬い獣皮そしてアホみたいなタフネ、ただおつむの方の進捗は著しくないわけよ。


そこで必要となるのは下準備だった、パパとアタシは家の近くに前哨基地となる小屋とその周辺に、Danger zone《危険地帯》を構築した、深さ4メートルほどの縦穴の中に先端の尖った木の棒を差し込んだ原始的なブービートラップ。掘るのすっげぇ大変だったけれども効果は抜群よスーパーウルトラな頭脳にかかれば奴等なんぞ雑魚…まあ飛び越えてこられなければの話ではあるんだけれども。



アクセルを更に引き搾り化け物との距離をなるべく稼ぎ危険地帯を迂回しTETUKOを小屋脇に停める。

急いで小屋のドアを…


「んぎぎぎぎぎぎ!!かってえなおい!!あ~~~もうパパなんかまた改造してドア重くてあかねぇよこれ!んがあああああ!!」


両手でドアノブを持ち思いっきり引っ張り開いた隙間に木片を滑り込ませて無理くり開ける。

「ハァッハァ…っっっはぁ~これでよっし!」


小屋は大体2アール《20m×20m》程度パパがちょくちょく改造してるから地下道やいろーんなギミックがあってアタシも全部把握はしてないけれども大体そんなもん。

骨子は鉄筋モルタル、その上に継ぎ接ぎの分厚い鉄板パパがつるはしで思いっきり殴りつけてもちょい凹む程度の頑強さ!その分先ほどの有様通りドアがくっそ重くて滅茶苦茶開けるのしんどい。

ドア自体どっかの巨大冷蔵倉庫のドアをパパが引っぺがして持ってきたやつで、それだけでも重いのに色々パパが溶接して頑強さと重量アップ、大男な癖に心配性で神経質なパパらしい仕事だよ。


小屋の小窓にはアタシが苦労して引っぺがしてきた車のドアとパパが使われなくなった鉄道をぶっ壊して持ってきた線路のレールで構築された頑強な鉄格子、親子の愛の合作よ。


開けた小屋の入り口を背にバックホルスターからスチール槍抜き眼前に構える。

奴等もちっぽけな脳みそを使うには使う、だから銃を構えると真っ直ぐ走ってこない場合もある、手にしたスチール槍はあの化け物と対峙するにはすっごく心細いけれども、いざとなったら小屋に滑り込めばいい。


開けた視界の奥からあの化け物がアホみたいな速度で走ってくる

脳みそまで筋肉っぽい見た目がくっきりと見える距離まで迫ってきた、腰を落とし気合を入れ直す、デカキモ生命体はそんなことお構いなしに速度を落とさずアタシ目掛けてまっしぐら、人肉まっしぐら今晩のディナーは金髪ロング美少女の血肉滴るレアレアステーキSSR。


欲に捕らわれる時こそ冷静な現状把握は必要だこの世界になってからすごーくそう思うようになった、デカキモ生命体の脳みそまで筋肉になってる頭じゃそこまで廻んないよね、急速に迫るデカキモ生命体は縦穴へと姿を消した。


『ギィアァン…ッガッガァ!!ハァハァハァ!ガアアアアア!!』


おーおー焦っとる焦っとる、穴に落ちたと言えどすぐに近寄るのは愚策よ。

暫く遠目で様子を見る這い上がろうともがいてる様子だけれどもうまく上がれないようだ、それも当然ここにも職人の知恵よね~土の中に廃油とビニールシートぶち込んで土はぬっちょぬちょビニールシートもぐちょぐっちょ足が滑って踏ん張れまいよ、もがけばもがく程尖った木で体を傷つける寸法だ。


小屋に入ってすぐ横に立てかけてあるショットガン《モスバーグM500》を構えながら縦穴に近づく、途中小石を穴の中に投げるとデカキモ生命体の威嚇する声がする、まだまだ元気のようだねーよしよしはよ死ねや。


縦穴をちらっと覗くと、もがき苦しむ姿が写る


「うっわーきもちわりーこんな爪で襲われたら美少女のよー体に傷がつくだろうがよぉどうしてくれんだ、精神的なこの苦痛はさー」


悪態をつくと化け物は真っ黒な瞳でぎろりと睨め付けてくる

落ちて尚今にも襲い掛かろうとし脈打つ筋肉の脈動

裂傷のような大きな口から見えるまっ黄色に変色した涎が滴る500ml缶位ある犬歯


アドレナリンが恐怖で体を満たす、ゾワゾワと躰を駆けのぼる恐怖を否定するように首に下げた消音イヤーキャップを耳に当て、ショットガンを構え真っ黒なあの眼に照準を合わせ引き金を引いた。


ッパンッ ガッチャ パン ガッチャ ッパン


爆ぜた頭に薬莢が転がり落ちる、数度の痙攣を経て生体反応のなくなった化け物を眼下に、今日も良く働いたなと思う。



お腹減った帰って飯食おう、チーズがたっぷりのったポテトが食べたい。



化け物が落ちた落とし穴を埋めながらアタシは思う、こんな世の中になる前に貯金全部降ろしてキンゴバーガーで死ぬほど食うべきだった。




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ゾンビが居るよ だおだお芋 @ohimo

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