ゾンビが居るよ

だおだお芋

ケイ・グリンダはかく語りき

今日は大収穫だった、たまたま見つけた森林の奥に大邸宅

何時もはお目に掛かれないようなお宝 未使用の電池や 腐れてない缶詰にワインまで!!


邸宅のカーペットを腰に掛けてるマチェットでカーペットの端を切り取り大きな袋を作る

そこに詰め込めるだけ詰め込んだ、

ワインは…欲しかったが重すぎだ、仕方なく一本だけ開けその場で飲む、食糧庫から見つけたチーズ、ちょいと腐りが進んではいるが相性が抜群だ。

後は地下のワインセラーに戻しててまた今度のお楽しみとしよう。

この邸宅の持ち主は大層学のある人間だったようだね、大学の表彰、なんかの受賞式の写真とトロフィー、中々渋くて男前じゃないかね?


ま…生きてる頃はの話だ


今その男と思わしき物体は昔はさぞご自慢だったであろう、ヘドロだらけの巨大なプールの上で浮いてる…ヘドロも滴る良い男ってか?くっそ良い男程死にやがるな


世界が崩壊してもう二年

アタシは時計を二個持っている

ひび割れた懐中時計は世界が変化した日から時を刻まない





      2019年07.23/13:48


                 一波


                  |

                  

                  |

皆最初は何が起こったかわからなかった、電化製品や通信機が軒並み"一波"でやられちまった。

                  |

                  

                  |



その時パパは趣味の無線機を弄ってた、某有名メーカー高級ヘッドフォンをしながら、勿論音質も抜群。重低音 高音 立体音響 全部が凄いんだって。

でもそれが良くなかったのよね

受信機が妙な電波を拾った直後おかしな挙動を繰り返し煙を吹いたんだって、

そして受信機から流れるノイズは、あまりにも素晴らしい音響を通しスムーズにパパの三半規管を狂わしたの、パパがよろよろ~って倒れちゃってママが置いて行った大事な懐中時計がパリーンっとね…210㎝170㎏の肉塊 片や100年以上前のアンティーク時計結果は火を見るより明らかってね。

パパが壊しちゃったその懐中時計が二つの内の一つってわけ。


半泣きで修理業者をでっかい手で小さいスマホを弄って探し始めたけれども、スマホは何故か動かなくなってた、最初は半なきだったパパはイライラしすぎてスマホ握りしめて壊しちゃった、んで私になきついてきたけれどもアタシのスマホも他の電子機器もぜーーーんぶダメになっちゃってた。


もろいね~情報社会っていうのも、私も実際何が起こってるのかさっぱりだった。

でも楽観的だった数日もすれば復旧するだろって。


アタシ達の平穏な時は懐中時計の刻みと共に終わっていたんだ。



2019年07.25/06:21


電気製品が動かなくなり二日目

アタシの家はド田舎、ティーンエイジャーのあたしにとっては糞つまんない、毎日退屈で退屈で暇さえあればいい男と良い車と酒を探してた。

まあそれは置いておいて、とにかくド田舎で最寄りのスーパーは車で5時間位

こういう時だし一人にするのは心配だってパパはアタシを連れ出し二人でスーパーに向かったわ。


ママは他の男を作って出て行っちゃったみたいパパは田舎者だけれどもアタシにとっては素敵なパパだった


こんな事があったわ

アタシが4歳の時夜中に破裂音と一発の銃声がして飛び起きたの

その日はクリスマス

アタシはドキドキしながらサンタクロースを待ってたんだけれども、本当に心臓が飛び出るかってくらいビックリした。


おそるおそる部屋から出て家の中を見渡そうとしてたら、また銃声が三発❕一発目で鼓膜がバカになって殆ど耳が聞こえなくなってたけれど、後の二発は爆音で肌がビリビリ震えてるのが分かったわ。


居間の方に行くとサンタクロースが落ちてきたの❕パパの愛銃…銃身を切り詰めて短くしたショットガン(ソウドオフ改造のレミントンM870)と共にね、ボーぜんと見つめるアタシに

サンタクロース(パパ)は鼓膜が破れて全く耳が聞こえてなかったみたい…多分怒号のような声でメリークリスマスと叫んだわ…アタシも鼓膜がやられてて殆ど聞こえてなかったのに馬鹿でかい声で空気が振動してるのがわかる位勢いよくね


パパの耳からは血が流れてた多分爆発音のせいね、それが白い付け髭に伝ってメリークリスマスって言った時に勢い余ってアタシの顔に飛んできたそしてアタシは気を失ったわ

気が付いた私が最初に見たのはパパの憤怒の顔と安堵した顔だったわ。

パパはアタシが喜ぶサンタクロースの登場は煙突から出てくるのが最高だと思ったみたい、でもねパパ前年に自分で煙突をコンクリートで塞いでたの、蝙蝠が入ってきて鬱陶しいっていってね。


困ったパパは家の中にあったアンホ爆弾をボールに入れて天井にくっ付け、簡易的な指向性の爆弾作って中からの爆発と、念のために担いだ愛銃を手に屋根に登ってぶち抜いたってわけ、見事成功。アタシの夢を壊すことにもね


当時は凄く怖かったし理解できなかったけれどもパパはアタシの為だったら危険も全て顧みない、あたしの笑顔だけの為に行動してくれてるんだって今は良くわかる。

アタシが気絶してた時自分のせいだとは思わないで誰かのせいかと疑って怒ってたってのはちょっとあきれたけれども…でもアタシにとっては世界一のパパ。


あーそうそう、それと。

その当時全く嬉しくなかったプレゼントは今じゃアタシの大事な大事な宝物パートナー




そんなパパと骨董品の車に乗ってスーパーに向かう途中、”二波”が…迫っていた

それを最初見たときはなんかのジョークショーかと思ったわ

まだ記憶に新しかった死傷者361人行方不明者211人を出した2018年超大型ハリケーン並みのハリケーンが同時に7つ


車で走っていたルート15の東

アルトクリーク・マウンテンの天が割れ

ゆっくりとバックパッカー達が捨てたゴミを巻き上げながら舞い降りてきた


ルードピアの空き缶が車のフロントガラスに当たる

月曜夜7時からやるチープなサプライズ番組の仕掛けで司会者がどっきりでしたーなんて言いながら飛び出してくる。

あまりの光景にそんな下らない期待しちゃうくらいだったわ


でもどう見ても本物ハリケーン、破壊と蹂躙を産物とする化け物

パパとアタシはアクセルを全開で急いでスーパーへ向かった


あの時の光景は今でも目に焼き付いてる、どうしようもない事態がおきつつあるって人間って嫌でも分かるものなんだって思ったわ。


アタシとパパがスーパーマーケットに着いた時にはほとんどの食品は残ってなかった、かろうじて残っていた小麦粉と砂糖と塩をパパは買えるだけ買ったわ、アタシ達は運が良かったのよ。

あのハリケーンを見てたからね、日持ちする小麦粉や塩、砂糖がきっと役に立つって。

車にぱんぱんに詰め込んだ小麦粉と砂糖と塩を詰め込んだ、幸いなことに家には井戸があったし水の心配はなかった。

パパは次にガソリンスタンドに向かった、ガソリンを満タンにしてついでにパパはスタンドの人と交渉しガソリンを入れれる金属製の20Lタンクを8つ買い全てにガソリンを満タンになるまで入れてたわ。

それを落ちないように無理やり車に積んでたザイルで括りつけながらアタシは考えてたわ、あのハリケーンの事もし迫ってきてたらどうしようって、ジリジリ肌刺す夏の日差しが焦燥感を、早く逃げないとあのハリケーンが来るぞってせかしてるように感じたわ。


帰りは慎重にルート15を進んだ、あの時は酷く怯えちゃった、パパのシャツをぎゅっと握って注射される子供みたいに震えてた。


でもアレだけのハリケーンが忽然と姿を消したの、巻き上げられ散らかったゴミ道路上に大量にかぶさった土埃確かにハリケーンがあった形跡はみつかったけれども、ハリケーンは忽然と消えてた、それでも注意深く進んだけれどそういった痕跡あったのはアルト・クリーク・マウンテン付近の道路だけだったわ。


家に帰ったパパは急いで家の改修と補強を始めた、アタシももちろん手伝おうとしたけれども、パパにとっては補修作業なんて危険行為を娘にやらせたくないみたい、追い払われちゃってそのまま部屋で寝ちゃった。


ふと時の進まぬ懐中時計を手に取って眺めていたら懐かしい平和だった世界を想い出しちゃった、でももうそんな世界じゃない鉄錆とオイルに塗れた指がそう改めて認識させる。

もう 奇麗なおててにネイルなんて”武器”にはならない。

戦利品もパンっパンだし帰って今日は畑の様子でも見ようそう思ってた時


ガリガリ…ガリガリガリ……


嫌な音が異臭と共にやってきた

強い鉄さびとかすかなバターをたっぷりかけたポップコーンのような甘い香ばしい匂い。


ゴリッゴリ…ッガッコガコ…


アレが居る…アタシは右腰に吊り下げたパパからのプレゼント

典型的ティーンエイジャーだった”前”の世界では役にも立たないゴミ”今”の世界では頼れる最高の相棒

拳銃 ≪Glock21≫ を両手で構える


音源は扉の向こう側、扉中央に照準を固定

背筋を伸ばし ひじを軽く曲げ 右肩を軽く引きつつ 

眼前にGlock21を構える


扉が倒れ音源が現れる、鉄錆の臭いが強くなり音源が姿を現す

腐肉を滴らせた化け物、B級映画ご用達ゾンビって奴

運がいいありゃ片足がいかれてる、照準を脚に合わせる

ゆるりと奴がこちらに向かってくる


10m…9m………5m

射程範囲 三発を奴の左膝に向け発砲

ドズ!ボズ!! 湿った音が二回し、奴が崩れ落ちるのを確認

相棒をホルスターに戻す


背中のバックホルスターから三つ折りの折りたたみ式のスチール槍を取り出しワンタッチであら不思議~ながーいスチール製の頑丈なやりに大変身!

奴の背後に回り込み延髄を狙い突く

10回程突いたとき 大きく体を痙攣させようやく動かなくなった

だが安心はできない

念入りに首が切断できるまで突く


「はぁ…やっと切断できた、くっそしぶといんだよ相変わらずよ~…うげぇ槍きったねぇ洗わないとね~」


槍の穂先を消毒し布で噴き上げ転がった奴らの首を見て昔のことがよぎる


パパとルート15を走り帰って3日後電化製品は相変わらず動かない

アタシは二階の蒸し暑い部屋で15分おきにスマートフォンが動かなか確認してた

外はパパが心配して行かせてくれないしなーんにもやることがなくてね


その日何度目かになるスマートフォンの確認をしてる時にパパの怒号が外から聞こえた


なんだろうとスマホから視線を外した時耳慣れた、ショットガンの発砲音

急いで窓際から外を見ると、パパと誰かが対峙していた


状況から察するにパパはショットガンで威嚇射撃をしたみたいだった

パパと対峙していた人影はそれでも尚歩みを止めなかった、パパは尚も近寄るその人影向け散弾を撃ち込んだ


まだ初心だった二年前のアタシは目の前の光景に絶句した、パパは大男で気性は荒いけれどもそんな簡単には人を撃ったりはしない人だ…多分。

アタシは急いで二階の部屋を飛び出てパパの元に向かった勿論その時はパパを止めるために、急いで階段を駆け下りる途中追加で二発の発砲音それが優しいパパが崩壊していくような音の気がして凄く耳障りだったわ。


外に出て急いでパパのほうに駆け寄ろうとした時パパが大きな声で来るなと叫んだ、ううん怒鳴ったわ。

一瞬脚が止まったけれども、気を持ち直しパパの元にかけて行った…でも近寄るにつれ異変に気が付いた…パパの足元に倒れ左腕が引き千切れている人はパパの脚に噛みついていた、何度もパパはショットガンの銃床<<じゅうしょう>>で頭を殴りつけ引き離そうとしてた。

アタシはあまりにもな光景に言葉を失い立っているとパパが咆哮を上げ一段と強く頭を殴りつけるとその人は力を失いパパの脚から離れた。

振り返ったパパは真っ青な顔でアタシを見て頭の潰れた死体を隠そうとした

アタシはとにかく手当をしないととふらふらと近寄った、ケガ具合の具合を見ようと足元に視線を向ける、そこにB級映画で見るような腐れた…そうまるでゾンビのような人間が倒れてた…。

眼より上はパパの一撃で砕け散ってはいたけれども…溶けて歯茎と唇が一体化したような口元、朽ち果てまばらに骨の見える指…腕…。

何よりもターキーを10日ほど常温で放置してた時のようなたんぱく質の分解しかけてる腐敗臭。

ソレがなんなのか全然わからなかった、理解ができなかった…。


呆然としながらも穴を掘りそのゾンビのような人をパパと一緒に捨てパパは念入りにガソリンをかけて燃やした。


燃え立ち昇る煙をぼーっと見ていながらアタシはパパが打倒したのは人間じゃなくてゾンビそっくりの化け物だったはずだって思いこむことで、パパは人殺しじゃないんだって安堵しようとしてた。


陽炎揺らめく夕日が奇麗だなーって化け物焼きながらパパが言ってた意味わかんねーし、人っぽいもん燃やしてんなセンチメンタリズム感じるかってーの、パパ的には場を和ましたつもりなんだろうけれども。


パパの傷は心配だったけれどもとりあえず抗生物質摂取して消毒もしたし

パパ変な所で奇麗好きで消毒液だけじゃこんなのにかまれたんだし怖いっていって漂白剤ぶっかけて悶絶した後に泣きながらバーナーで熱した鉄パイプで傷口焼いてた…化け物見た後にそれだもん、マジ暫く肉はいらねーって想ったよ目の前でやんだもん…。


まあそっからはそんな化け物をちょくちょく見るようになっていって気が付いたら世の中は化け物だらけ、生きてる人間なんぞ殆どみかけなくなっちゃった。


パパはやっぱり人殺しじゃないんだーって喜んだけれども

よく考えたら化け物だらけの世の中より、まだ人間殺して刑務所入ってた方が今考えると楽だわ


ここは田舎だし奴らは少ないみたいちょい前に3人組の旅人が居て話を聞いたら、町は奴らだらけで田舎のほうが安心だってことでこっちまで来たみたい。

話を聞いて都会に憧れてたアタシだけれども、ゾンビの体液でテラッテラになってる都会なんてやだね。



そんな今の世界でアタシは生きてる平穏でつまんないユートピアは終わった。

忙しすぎてつまんないとかつまるとかそんな贅沢言えなくなっちゃったわけよ。



さてっと、戦利品をもって帰りましょうね~我が家に…おんも!!ちょっと欲張りすぎたかな?まあでもアタシにはもう一つの頼れる相棒がもう一台あるソコまで担いでいけばいい、幸いのごガソリンもたっぷりあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る