最終話 シャッター越しの私へ
10年後、何してますか?
奏とあの後何を観ましたか?
海外の海は綺麗ですか?
奏は元気ですか?
聞きたい事はたくさんあります。
でも、一番聞きたいのは、自分を好きになれましたか?
私がどうなったのか、自分がこれから作る未来がとても気になります。
でも、どんな未来も奏がいれば、大丈夫だと思っています。
しっかり、奏を信じてあげていればだけど。
もし、奏を少しでも前みたいに疑ってしまうのならこの手紙と写真を見てください。
今までの私が思い出させてくれます。
奏がどんな人なのか。
でも、そんなこと気にしなくても問題ないと思っているけど。
この手紙を書いているときの私は弱かったし、自分が大嫌い。
でも、奏に会えてから、変ったはず。
そう今は思っています。
今のあなたは、一人じゃない。
大丈夫。みんなを頼って、楽しい人生を送ってください。
短いかもしれないけど、これで終わりにします。
たくさんの思い出を写真に残してね。
お元気で。
追伸、圭太たちはどうなりましたか?姉は心配ですw
「ママ、これどーぞ」
小さな手で娘が何か持ってきた。
「天海(あみ)ありがとう。」
その手に握りしめられていたのは、手紙だった。
私はそれを見て、目がうるっとしてしまった。
「ママ、これなぁに?どこか痛い?」
私の顔を覗き込んで心配そうに娘が見つめている。
私は、膝を叩いて、ここに座るように促した。
ストンと座った娘は、中に入っていた写真と私の顔を交互に見て不思議そうにしている。
私は、ふふっと笑って天海の頭を撫でた。
「大丈夫、どこも痛くないよ。ママはこの写真が大好きで懐かしくて泣いちゃったの。ここにパパもママも写ってるよ。見つけられるかな?」
「パパ?ううーん、どこかな…」
しばらく悩んで、天海は指を指して「見てこれ!!」と叫んだ。
「あたり~パパ違う?変わった?」
私の問いに天海はまた悩んで笑顔で話した。
「パパ、変わんない!!でもママ違う!!」
娘の言葉に驚きと不安を感じながらも恐る恐る聞いた。
「ママ、どこが違う?」
「ママ、お顔が違う!」
ふ、老けた!!?
「ママ、今の方が笑ってる!!」
あ、そういうことか。
子供の判断能力は怖いもので、見透かされてしまったのかもしれない。
この写真の集合写真が笑っていないわけではない。
でも、この子が言いたいのは今の私の方が柔らかくなったといいたいのだと思う。
今も、昔も奏は変わらない。
確実に変わったのは、私。
この手紙を書いた、過去の私の問いに答えたい。
今、私は幸せで、自分の事が好きになっていると。
「天海、ママとパパ好き?」
「だいすき!ママはパパも天海も好き?」
私はもちろんこう答える。
「大好きだよ!!」
そうして、娘を抱きしめた。
END
シャッター越しの私へ 若木澄空 @fujikisora
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