第2話
目が覚めた。何か不思議な夢を見ていたような気がする。どんな夢だっただろうか、首を傾げながら考え込みたいところであったが、どうにもそうはいかないようだ。
先ずはこのピピピと控えめに鳴くアラームを黙らせよう。などと思いベッドに備え付けられたパネルを操作する。
アラームは最後、微かに囁いたのちに鳴り止んだ。
身体が怠い。身体を起き上がらせながら、ため息を吐く代わりにそう言う。
顔を洗うこともせず、閉じられたカーテンの隙間から外を眺める。あの空が何かが変わっているような、そのような期待を何故か抱いていた。
結果はどうだ、何も変わらない。ただ分厚い雲に覆われた昼だか夜だかすら分からない空が私を見下している。
ああ、これだ。この空だ。この空が私の身体を悪くさせているに違いない。この陰鬱な光景が死ぬまで変わらないのだ。そう考えるだけで目眩も起こそうというものだ。
周りには木々一つ無い。まったくの茶色の大地。よくもここまでと感心させられるほどだ。
人の欲望というものは底がなくていけない。住みやすく、生きやすくせよと叫んでおいてこれなのだからしようがない。
寝起きから気分を落としてくる空に、少しは飲める雨でも降らせと益体もないことを吐き捨てる。
まったくもって時間の無駄というものだ。奴らはどうにも、毒を降らせることにしか興味がないらしい。
そんなものを飲もうものなら、身体の中から腐り散らすに違いない。
そんなことよりも、さて、今日は何処へ行こうか。この家に勝手に住まわせてもらうのも飽きた。何やり食料が尽きそうなのだ。近くに腹を満たせそうな場所は無いものだろうか。
ならば、良し。先ずは地図でも探そうではないか。今までは地図も無しで放浪していたのだ。これからもそれでは随分と疲れる。
それでは、この家を漁ってみようか。などと世も末なことを考える次第だった。
取り敢えず目につくものを全てひっくり返す勢いで探したものの、地図は無かった。
食料は僅かに見つかれど、肝心の地図がない。これでは今まで通りの行き当たりばったりな生活を続けなければならないだろう。
仕方がない。どうせ、この世に安住の地は無く、人類はその殆どが流浪の民と化しているのだ。
以前の地図に意味はなされないのだから。
今度はどの方角へ行こうか。このまま北へ進もうか。いやそれとも故郷の方角である東へと進路を変更しようか。
そう、うんうんと考えながら先日着ていた服に袖を通す。少し臭うか、とはいえ直ぐに洗うことも出来ないのだ。仕方がないと諦める。
フードを深く被り、良し。
短い間だったが世話になった、と柄にもないことを口にする。
さて、どちらへ行こうか。
答えは出ない。出ないのならしようがない。そういって今では意味をなくした。硬貨を一枚取り出した。
表なら北、裏なら東。運任せ、これもまた良いだろう。娯楽が無いのだ、無いのなら自分で作ればよろしい。
さあ、あてもなく彷徨い歩こうではないか。
指の上の硬貨を天高く弾き飛ばした。
それは珍しく僅かに顔を出した太陽の鈍い光を受けてキラキラと輝いていた。
夢の中で 雨のち晴れ @amenotihale
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