雲の上の祭り

野田 琳仁

雲の上の祭り

 僕の住んでる村は年に一回春の時期に、伝統的なお祭りが行われている。雲の上に住んでると言われてる神様たちに感謝をするだとか、お願い事をするだとか。

 高校生の僕からしては、とても古臭い風習だと思う。だって、神様なんて信じて無いし、そもそも雲の上なんて水蒸気なんだから乗れる筈もない――。


 ◇ ◇ ◇


紫音しおん! 神様達をあそこの棚に飾っといていてくれ!」

「はいよ〜。」

 僕の家は神社だ。なので祭り当日は、毎年のように家の手伝いで僕が、本殿の中にある棚にちっちゃい15センチ程の神様たちをそうっと置く。

 正直言って面倒臭い。僕は神様なんて信じてもいないのに、何個もあるを棚に置かされる。テキトーにやっても父に怒られるし、慎重にやりすぎてそのを床に落としたら余計に怒られる。誰だって怒られたくはないだろう。だから真面目にやる。人は怒られて成長するとは、よく言ったものだ。

 それにしても、こんなにも神様って多いのだろうか……。そう思う……。


 ◇ ◇ ◇


 この神社の裏手には、山がある。その山はこの神社の土地なので、山の所有権は社家つまり、僕の家にあるのだが、普段は山に入る事は禁じられている。しかし、この祭りの日には入る事が許される。毎年この祭りは開かれているが、僕は一度も入った事は無く、山に何があるのかや、何故普段入ってはいけないのかも知らない。

 ふと、山に何があるのかが気になり、その山に登ってみる事にした。後で何かがあると面倒なので父に一言だけ言ってから山へと登る。

「父さん、ちょっと山登ってくるね。」

「おう。気を付けろよ。後、登るんならちゃんと道なりに行けよ。」

「うん。」

「あ! 私も行って良い?」

 従姉妹のゆうだ。うちには女の子がいない為、従姉妹の優が境内で巫女として舞を踊る。

「あぁ。時間までには帰ってこいよ。」

「はーい。」


「なぁ優、優って山の中入った事ある?」

「うん。お父さんと一回だけ。ま、去年だからどんな風なのかは覚えてるよ。紫音は入った事無いの?」

 答える暇も与えられずに優は、話を進める。

「頂上凄いんだよ! 物凄く大きい樹があって、その周りにこれくらいの石が丸く並べられてたの。」

 優は、手でブロック塀のコンクリートブロックより少し大きい程の大きさを手で表現しながら僕に話していた。


 そんなこんなで、頂上に着くと異様な光景が僕達の目に入った。

 そこには、想像を絶する程の大樹が聳え立っていたがそれ以上にこの異様な光景に目が行った。

 数人の真っ白な装束を着た人が驚いた様子でこちらを見ていた。その中には何故か僅か1メートル程しか無い雲の上に乗った人も居た。

 すると、黒い雲に乗った人がこちらを見て喋った。

「……見られては仕方が無い。御主ら、柊木ひいらぎの者か?」

「はい。柊木紫音と申します。こっちは、従姉妹の桐谷きりや優といいます。」

「はい、桐谷優と申します。あの、あなた方は……?」

「ああ、私達は雲の上の住人じゃ。晴音はると殿から何も聴いておらんのか?」

「え、えぇ。ここまで詳しい事は何も……。」

「まぁ、良い。御主ら、雲の上へ招待しよう。祭りの終わった夜にここへ来い。柊木の事など教えてやろう。」


 ◇ ◇ ◇


 そして、舞も終わり、もう一度大樹へと向かう。

 そして、この年の祭りは最高の祭りとなった。






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