ぼっちの青春にラブコメの「ラ」文字もない理由

若草井介

平凡な高校生活を守りたい

1話

 猫屋敷ねこやしきさとる


 幼少期の時、資産家の祖父が亡くなり、その資産の分配について猫屋敷ねこやしきさとるの父親と父親の姉と妹の争いを見て育つ。

 学校帰りの悟が見た大人の話合いは、罵倒や雑言の飛び合いだった。人間のお金に対する醜さを目撃すると同時に、悟の大人に対する印象が最悪なものとなる。

 大人は醜いということを幼少期に覚えて育ってしまった。

 その結果、小学生になるころには他の子よりも現実的なものを見る力がはぐくまれ、協調性のない子になった。特に同い年の奴らを馬鹿にするよな態度をとっていたため、小学生のうちからボッチ。おかげで悟に突っかかってくる奴らが多かった。が、虐められることもなかった。なぜなら、やられたらやり返すからだ。

「"ねこやしき"って、お前ん家ってネコいっぱいいるのかよ」

と笑いながら、からかう奴に対して

「人の苗字や外見だけで、馬鹿にしてくる奴の家にはきっとお猿さんが多いんだろ」

と言って喧嘩になって先生に怒られた。

また、先生に対しても、

「宿題に意味があるならその根拠を教えてください」

と真面目に先生を問い詰めて聞いたりした。


 中学生ではもうほとんど、さとるの人格が完成に近い形になっており、性格が180度ひねくれていた。


彼が中学一年生でクラス内で発表された「将来の夢」という作文は、


「私が考える将来の夢とは、考えるだけ無駄だということです

先生は将来の夢を生徒たちに考えさせて、夢を持つことの大切さを教えたいとのお考えですが、私は愚の骨頂だと思います。

 叶わない夢を妄想させて、その夢と今の自分とのギャップを現実的に見せつけて、我々生徒に絶望を植え付けるものです。

 夢を叶える方法について具体的な提案もせずに「勝手に叶えろ!」と言っているようなものです。 

 それは精神的苦痛に伴ういじめと等しく、教師としてどうなのかと疑惑な点が浮かび上がります。夢なんてものは妄想させて満足して終わりです。自慰行為と同じだと考えます。

 そんなものをさせるぐらいなら自主学習の方が遥かに勉強になります。以上で発表を終わりにします。」


 教室は冷たい空気で鎮まり返した伝説のエピソードである。



 そして、そんな彼の高校二年生の春の中間テストからの話。(だいたい5月とかその辺)

 

 猫屋敷悟 自己紹介 (ここから視点が一人称)


猫屋敷ねこやしきさとる

2月24日生まれの高校二年生、年齢は16歳。

猫屋敷とは日本に二十人ほどしかいない珍しい苗字のこと。それ以外に俺に目立った特徴はない。身長167センチ。体重は56キロとやや痩せ型。

部活はしていなくて、帰宅部。

趣味はタヌキ寝入りをしながら、周りから入ってくる人の会話を盗み聞きして、勝手に論破すること。我ながら最低だと思いつつ、論破してやったとかの相手の表情を想像するのは楽しい。

おっと、顔がにやけてしまった。

こんな性格だから友だちはいない。

作ろうともしなかった。

というか、


———人間がめんどくさい。



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ぼっちの青春にラブコメの「ラ」文字もない理由 若草井介 @ItoDaisuke

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