最終章 これからの日々

最終話 いつまでも

 ゆかりと恋人に、そして、婚約者になってから、しばらくの月日が過ぎた。相変わらず、俺達は順調に交際を深めて行き、今も毎日楽しい日々を送っている。


 そして、入学してからの友人である秀樹ひでき富山とみやまとも、相変わらず仲良くなって、夏になったら海に行ったり川に行ったりして交流を深めた。


 そんな日々を過ごしている内に、季節はもう秋だ。


「秋といえばやはり食欲の秋だな」


 相変わらず、ゆかりと手をつなぎながら、登校する毎日。


「みっくんの好きなもの、何か作ってあげようか?」


 微笑むゆかり。入学した時はどこか暗いところがあったが、今はそんなところは微塵もない。


「んー。じゃあ、何か適当に作ってくれ」

「適当にっていうのが一番困るの!」


 むくれるゆかりだが、こんなやり取りも慣れたものだ。


 通学路を歩いていると、もう紅葉の季節なのか、葉が色づいている。


「そうだ。こんど、紅葉狩りに行かないか?」

「うん。いいよ。じゃ、お弁当はその時に作ってあげるね」

「頼む」


 こいつと行く紅葉狩りなら、さぞかし楽しくなりそうだ。そんな事を考えながら、教室に入る俺たち。


「よっ。秀樹ひでき


 こいつとの付き合いも、4月からだからもう半年以上になる。


「幹康君、なんか嬉しそうだね」

「そう見えるか?」

「とってもね」


 爽やかな笑顔でそう言われてしまう。


「ひょっとして、ゆかりちゃん関係のこと?」

「ま、そんなところだ」

「仲が良くて友人としては嬉しいよ」


 そう言ってくれるのは嬉しい限りだ。


「ところで、おまえは富山との仲はどうなんだ?」


 前々から気になっていたことを聞いてみる。


「うーん。もうちょっとこのままでいいかなって」

「そうか」


 二人が中学時代、あるいはもっと前から仲が良かったことは伺えるが、こいつが満足しているのなら、それでいいのだろう。


 そして、放課後。


「思えば、みっくんを痴漢と間違えたことから始まったんだよね」


 そう感慨深げにつぶやくゆかり。


「あの時は心臓が止まると思ったぞ」


 いや、ほんとに。


「ほんと、ごめんね。私のせいで」

「もう昔のことだろ」


 それに、そのおかげで色々知ることができたと思っている。


「ところでさ」

「なに?」

「婚約者の事、おじさんとおばさんに言ってみないか?」

「急だと思うけど……私も言ってみたいな」

「よし。じゃあ、今日帰ったら言おう」


 おばさんとおじさんは案外許してくれそうな気もする。


「うん。じゃあ、早く帰ろう!」


 俺の手を引っ張って、前に進むゆかり。その笑顔はとてもまぶしくて、これからも幸せな日々が続くだろうと予感したのだった。


――――


※これにて、「痴漢に間違われたと思ったら、再会を約束した女の子でした」は

※終わりとなります。途中で、二人の仲がいきつくところまで行ってしまったので、※今後の日常展開をうまく描ける自信がなかったのですが、力量不足を痛感します。

※きっと、二人はこれからも楽しく過ごしていくと思います。

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痴漢に間違われたと思ったら、再会を約束した女の子でした 久野真一 @kuno1234

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