第2話死人に口なし


「私の、、、腕溶けてる」


――いや、皮膚も、肌もどろどろのビーフシチューみたいに、溶けている


「いやぁ、、、あぐっ」


考えてみると、私は死にかけたのだーーだからこれぐらいどうってことない


「--封鎖されてる」


ーー検問だ

「、、、まさか、「工場」のやつらが、、、イタっ」

「りんちゃんだめ、、、どうするの「お母さん」


運転席で顔が見えない女を笑う

「どうってこうすんだよーー」


ーーーそうだ、なつきも、私も「工場」を出たことが今まで、一回もなかった

、、、でも

「さすがに、あいつらにゃ捕まらねえよ、ここはあたしのホームだ」


ーーそうか「おばさん」は、「おばさん」にとってはこの町はホームなんだ


見事なハンドルさばきでよける

「でも、、、あの「工場」にずっといたから同じじゃないの?」

ううんと首を振るなつき

「--いや、お母さんは「この街は基本的に開発の波に乗り遅れてるから

多分、今でもあんましかわってないかな」っていってた


だからーー」


裏道をかっとばす、勝手知ったる町を飛ばす


ーー盆地というのだそうだ、四方を山に囲まれたこの土地は


「、、、お母さん、もしかして出られないの」

なつきが眉をひそめる

否定してほしかった、逃げてほしかった、二人だけでもそんな、、、



ーー検問がそれだけ、進んでいるということだ

ーーー「工場」の連中は「泣かぬならなくまでまとうホトトギスby家康」の作戦に切り替えたと

もう一台の車からりんを起こすまでの間に連絡があったらしい

ーーーということはつまり

「--投網だな、」

「「--投網?」」


その時、母親の頭にーー海で漁をする漁師の姿が思い浮かんだ

ーーだが、それを強引に押し流す



「捕まらないよ、、、」

だがーーそう簡単につかまらない、逆にーー網事海中に引きずり込んでやる

女はそう考えた


今はただーー逃げるだけでも


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悪魔の子守唄 暇の三 @13222uygu

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