このシリーズは複数あり、私は全作読んでいるわけではないのですが、本作を含めハズレなしと自信を持って言えます。
語り手の「僕」と、五歳年上の「孝代さん」。この二人の関係性は、近すぎず遠すぎずの距離感が心地よく、読んでいて清々しい気分になります。
もっと深く知りたいという方は、短編集形式の『年上の彼女が僕に言う「君とおやつを」』もぜひ読んでいただきたい。食にまつわる、二人の穏やかな生活を感じられます。
本作は、二人の出会いがテーマ。でもそんなに大げさな内容ではなく、互いに記憶も曖昧であるような、悪くいえば「取るに足らないこと」。
しかし、それが実に彼ららしい。その曖昧な記憶から意外な方向に話が進んでいくところも、また然り。
作品紹介に「いい事も悪い事もイーブンになっている僕の毎日を、8割くらい担当してくれる孝代さん」とありますが、孝代さん視点で考えると、「僕」も孝代さんの毎日を8割ぐらい担当しているのではないかなと、読んでいて感じました。