四年に一度

結葉 天樹

四年前の自分よ

 四年前の自分よ。お元気ですか。

 確か君はこの頃、創作から離れていましたね。いや、創作に戻った頃でしたか。ああそうだ、つい前年の十月に二次創作で復活しましたね。

 君の好きだったネットゲーム、全然プレイしなくなってしまいました。それだけは君に謝罪しなくてはならないことです。何せ君を、私を創作の世界に戻してくれた大切なゲームですからね。

 さて、四年間で何があったか。語りたいことはたくさんあります。ですがここでは一つだけに留めておきましょう。


 創作に戻った自分よ。君は一度だけ作品が世に出ます。たった四年で一度の出版。しかもそれは単独ではなく、たくさんの作家さんたちとの合同でのオムニバス集です。

 あまりにも王道の、ひねりも碌にない初挑戦の青春ラブストーリー。そんな作品で君は書籍化作家の末席に加わります。エゴサすれば「オチが読める」と言った感想が一件だけ。他の人の作品の方が称賛され、君の作品を直で話題にしてくれる人はまず見られません。

 正直、運に恵まれたことは否めません。自称運の悪い貴方が珍しく掴んだ幸運です。甘い恋愛物語を求めたコンテストで偶然にも悲恋の作品が多く、その中でたまたま青春もののド直球のストレート(読者の評価です)を投げ込んだ君の作品が一気に浮いたのです。


 創作に戻った自分よ。ですが、それでいいのです。

 望んだ形ではなかったかもしれません。ですが貴方は人に認められたのです。読者に、他の作者に、出版に携わる人々に。

 いじめで人間不信になり、創作の世界に理想の人間関係、友達関係を求めた君が恋愛のジャンルで人の心を震わせる物を書いたのです。

 中学、高校、大学と創作に関わりながら作品を完成させることのできなかった、完結させることのできなかった君がそこまで辿り着いたのです。これは手放しで喜んでいいことです。


 創作に戻った自分よ。四年で一度の出版経験。それは君がなりたい姿とは違っているでしょう。

 君は良い意味でも悪い意味でも変わっていません。君はたくさんの心躍る物語、設定をこれからたくさん思いつきます。ですがそのどれもが中途半端で作品の完成までこぎ着けられません。良くて現在進行形で書いています。君が半年後に連載を開始する作品はようやく最終章に突入しました。

 でも書き続けています。かつてのどの作品も投げ出した君はもういません。前年には二十四万字もの作品を完結させたのです。卒論の十万字で悲鳴を上げていた君がです。


 創作に戻った君よ。創作の世界におかえり。特定の分野以外に打ち込むものが無かった君が、今は様々な分野、知識を吸収し、それが仕事にも、創作にも役に立っているぞ。


 創作に戻った君よ。創作者としての自分から四年前の君に言葉を贈る。

 君はそのまま突き進め。「面白い物を作れるだろうか」「続けられるだろうか」そんなことは考える必要はない。続けろ。面白い物は間違いなく作れる。その証拠が四年で一度だけの出版だ。そして今も続けている。恐らく筆を置くことは生涯ない。それは君自身ならわかるだろう。君が四年も意欲的に書き続けているんだぞ。


 こんなに楽しい世界から逃げられるわけがないじゃないか。

 これまでのどんな趣味よりも打ち込めて、底が無くて、たくさんの人と関われて、刺激を与え合えて、自分がこれまで得たもの全てが力になって、自分の知らないたくさんの世界に触れられて。

 どこまでも魅力的なこの世界で君は生きていく。四年後の世界で待っているぞ。


 創作を続けている君よ。四年後の自分よ。次のバトンはお前に託す。是非四年後に私にメッセージがあったら教えてくれ。


 四年に一度くらいは書籍化しているか?(笑)








 最後に、事情があって現在交流のなくなった君よ。創作の世界に戻るきっかけとなった君よ。これを読んでいないかもしれないことを承知で最後に記す。


 ありがとう。

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四年に一度 結葉 天樹 @fujimiyaitsuki

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