東京の有名進学校から転校してきたヒロイン美波ちゃん。本作は彼女目線ですすみます。
頭が良いのはもちろんのこと、少々独特である意味大人びている彼女。そして、出会った友人やクラスメイトの浜辺。彼は才能溢れる人でした。
人には得手不得手があり、しばしば隣の芝が青く見えちゃいますよね。特に、多感な美波ちゃんくらいの少年少女には、それが世界で一番大切なモノサシのように思えてしまう。
本作では、そんな彼らの細かな心情や機微が、まさに等身大でリアルに描かれています。
個性豊かなキャラクターたち。彼らが直面する可愛くも大きな壁。どう乗り越え、どう受け止めるのか。
誰しもが経験した青春時代がよみがえる、そんな素敵なお話です。
家庭の都合で、突如田舎の中学校に転校する事になった女の子、美波。慣れない環境でどう過ごしていくか考えていた美波ですが、そんな彼女の前に現れたのは、学校屈指の秀才、浜辺でした。
時に成績の首位を争うライバル関係、時に合唱コンクールの半奏者と指揮者という、学校でも何かと目立つ二人。
勉強ができる上に、半奏者や指揮者にもなるだなんて、ハイスペックですねえ。だけど彼女達は最近流行りの、チートキャラではありません。才能が有ってもいい結果を出すためには、努力や周りの人の協力が必要不可欠。それができなければ無理が募って、壊れてしまいますもの。
美波も浜辺も決して、何でも出来る天才なんかじゃありません。本当は無器用な所があるけど、頑張って支え合って、今という時間を全力で駆け抜けている、そんな気がしました。
勉強にも音楽にも、決して手は抜かない。やると決めた事は全力で取り組む。だけど間違ったり、つい無理をしてしまう事もあって、そんな時は叱られて支え合いながら、答を模索していく。完璧じゃなくても必死になってもがくところが、二人の魅力のように思えました。
頭が良くても才能が有っても、上手くいかないことだらけ。だけど、だからこそ世の中は面白いのです。
一瞬一瞬を懸命に生きる二人の青春ストーリー。読み終えた後には、爽やかな読後感がありました。
家庭の都合で、東京の私立中学から田舎の公立へと通うことになった美波。
慣れない環境、始めて出会う人達の中で、彼女は奮闘することになるのですが……
この主人公の美波ですが、読んでいて感じた大きな特徴が二つありました。
一つは、集団の中での自分の立ち位置、そしてそれを維持するためにはどうすればいいか、物凄く考えているということです。
そんなことをいちいち考えて動くのは、ある意味とても窮屈なこと。ですがその一方で、誰しも大なり小なり、似たような考えをしたことがあるのではないかと思います。
もう一つの特徴は、ガリ勉だということ。しかもただ勉強するだけでなく、その方が効率がいいと判断すれば、時には授業中居眠りをするなどの大胆さまで持っています。
本来読書の共感を得るべき主人公としては、それでいいのかと思うくらいに強か。しかしその一方で、そんなに頑張って大丈夫? 無理しすぎてないのと思いたくなるような、一面も持ち合わせています。
そしてそんな美波と共に、本作を引っ張る人物がもう一人。クラスメイトの浜辺です。
イケメン、成績優秀、そして音楽関係では類い希なる才能を持つという天才ボーイ。そんな彼と、成績上位を争うライバルになっていくのですが、合唱コンクールを機に二人の関係は更なる変化を、そして美波の更なる一面を見ることになっていきます。
ガリ勉少女と、一見天才で、だけどどこか完璧でない少年の、少し変わった青春ライフ。