この物語は謎と秘密でできている(仮)

くり ねずみ

一顆目 二人の出会い

ーーープロローグーーー

 この世界にはドワーフの住む地底帝国がある。

一〇〇〇〇年以上も前に造られた都市だそうだが、、、

そこに住む者達は知らない

外の世界の現状を、

今ここで笑えていると言う奇跡を、

これからこの者達にどんな災難が降り注ぐかを、

そして自らを正当化しのうのうと生きてきたその過ちに気づかずにいることに。



〈男の子視点〉

 世界のみじめさ、ひどさこそ言葉で表せるものはない。人は人を下に見ることでしか自分を守れない。自分より下のものを見下し罵詈雑言ばりぞうごんを浴びす。それこそが人の本能だとよわい九歳にして俺は悟った。

 

この世界は『色』が全てだ、肌の色なんかで身分が分かれる。それには王族であっても逆らえない。王族は虹色、そして赤から順に紫までで位が決まる。東の領土では黒なんて珍しい色があるようだ、だが世界には色のないもの達がいる。

その者達はしいたげられ色無しと呼ばれ差別される。いや差別なんて生温い人権なんて剥奪はくだつされ、家畜同然かちくどうぜんの扱いを受ける。家族であっても守ってはくれない。私たちの世界だって豚なんかを殺して食べても誰も文句なんて言わない。色無しは必然的にそう言う運命に“させられる”のだ。

 

ドワーフの俺たちには十二歳の時に変色期(へんしきき)がある。朝起きたら、自分の色が突然変わっていると言うものだ。そこで色無しになった者は殺されるか家を追放される。そしてスラムが形成されていく。スラムの者達はやがて息絶えるが、この世界には秘密の色無しだけで構成された村がある。

それが色無村だ。

 

俺はそこで生まれた。色は変色期までは母親に遺伝した色になる。俺の両親は色無しだった。隠れて住んでいたわけだから、裕福なわけではなかったがそれでも幸せだった。


 そして、悲劇ひげきが起きた、色無村の存在が帝国にバレたんだ。

帝国は俺たちを殺すために傭兵ようへいを遣わせた。そして村のみんなが死んだ。父は母と俺を逃すために、母も俺を逃すために死んだ。俺は一人になった。唯一の形見は母親のうちには似つかわしくないほどの豪華ごうかなピアスと、この白い髪だけだった。

俺は両親には似ていなかった、眼も片方だけ黒だし、髪も所々に黒いところがあった。だがそれでも色無しは色無しだ。スラムを彷徨さまよい続けなんとか生きながらえていた。


 そしてある日、俺の運命は変わった。

その日はとても暖かかった。(地底帝国だが科学とか言うもので季節の変わり目がわかるようになっている。)腹が減っていた俺は、動くのもしんどくて、日陰で休んでいた。ウトウトと睡魔すいまが襲ってくる、いつもは日中寝るなんてことはないのだが、その日は眠りについてしまった。心地の良い睡魔に身を委ねていると、人の声が聞こえてきた。

「おい、おい、こんなとこに色無しがいるぜぇ」 

「うわまじだ、きったねー笑」

「なあこいつなんかピアスしてるくねぇ?」 

「おい、それ獲っちゃおうぜ、こんなんが持ってるよりも俺らが持ってる方がいいだろ笑」 

「マジそれな笑」


ハッと目を覚ました。やばい見つかった、髪で隠していたピアスは、何度か獲られそうになったことがある。その時は逃げ切ったが今回はもう目の前にいる、逃げ場がない、どうする!

「おいおい、色無しくんがこんなところで何してんのー?」 

「そうそう、こんなとこで寝てたら俺らみたいな悪い大人に捕まっちゃうよー?」 

「あっでもぉいま、そのピアスをくれたらぁ見逃してあげるよー?」

『誰が渡すか!この野蛮人やばんじんめ!』

「「「カッチーン」」」

「あーあそんなこと言ったらぁ、殺しち(((アベシ⁉︎

「何しやがんだテメエ、、、っていねぇ!どこ行きやがったあのクソガキ‼︎」

(石でおとり作戦成功!今のうちに逃げよう!)


「いたっあいつがいたぞ!追え!」

(やばい、みつかった!っあ‼︎)

「おいおい、クソガキここは行き止まりだぜ、どうするつもりだぁ?笑」

『はぁ、はぁ、、、』

(どうする、この道は三方向とも生垣いけがきで囲われている。正面には賊がいるし、、、、)

(っく、やるしかないか)

賊はジリジリと近寄ってくる。

(三、二、一、いまだっ!)

「おい!どこいくんだ、そこは、、、!」

俺は生垣を突っ切った。ぱっと視界が広がる。

そこにはただただ、草原が広がっていた。

『っう、眩し、、、』(ドサッ)

俺は目眩めまいがして、その場に倒れ込んでしまった。

意識が遠のいていく...



〈女の子視点〉

私のお母さんは《元》女王だ。

お母さんは私のせいで女王を辞めることになった。理由は知らない、お母さんは優しかった、だから私には何も教えてくれなかった。そして身体が弱かったお母さんは隔離された別邸べったくで死んでしまった。私はその別邸で母と二人暮しだったが、母と住んでいて代わりに家事をやっていたおかげか、一人になっても生活には困らなかった。でも母が死んだ時は食事ものどを通らなかったし、ずっと泣いていることしか出来なかった、そしたら何故なぜか母の言葉が、気持ちが伝わってきたきがした、

『あなたには生きていて欲しい。笑っていて欲しい。だから、泣かないで』

つぅっと頬に涙が流れた。母にはいつも助けられてばかりだ、ここでの生活だって料理だって全て母に助けて貰ってきた。せめて、母の願いを叶えたい。叶えてあげたい!絶対に挫けない、笑おう。そう自分を勇気づけた。


そして、母が死んでから、三年が経った。

一人だと悲しいので花を庭に植えた。毎年綺麗に咲いてくれるからハルが一番好きな季節だ。そうしてハルに差し掛かろうとしている今日はとてもいい天気だった。だけど昼過ぎごろこの別邸に初めての来客が来た。


庭には中央に大きな木が一本植えてある。サクラという名前なのだとお母さんが教えてくれた。その木の下にいつもは見かけないような白いものが落ちていた。

(なんだろ?あれ)

流石に気になった私はゴミならば捨てないといけないと思い近づいてみた。近づいてわかった、あの白いものは人だったのだ。急いで駆け寄り無事か確認する。

「あの!あの‼︎大丈夫ですか⁉︎」

とても綺麗な、白色の髪をした少年、私よりも年下に見えるその少年は痩せ細り、衰弱すいじゃくしているように見えた。

(大変、早く看病しなきゃ‼︎この子死んじゃう‼︎)

私はすぐに別邸の中に少年を引き入れた...








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この物語は謎と秘密でできている(仮) くり ねずみ @kurinezumi_46

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