ハッピー サプライズ デイ

ベームズ

4年に一度のイベントといえば、

「私の誕生日‼︎」

「何が?」

「何がって……知らない?うるう年、四年に一度平年より暦日が多くなる日のこと、それを補正するために一日多い月を作るのよ?」


「で?」

「で……って、今日がその追加された日、つまり閏日なの、そして、そんな素敵な日が誕生日なのがこの私、カナメちゃんよ‼︎盛大に祝うがいい‼︎」


「いや、それは知ってる」

「……は?」



「いや、俺が聞きたいのは何に対していきなり大声で自分の誕生日自慢を始めたのかだ、俺には今更だし」



「何に対してって……何にだろう、忘れたわ、まるで一瞬夢を見ていたかのようにきれいさっぱり思い出せない」


「まあ、それはいいとして、そんな四年に一度誕生日がくるカナメちゃんは、一人で休日をエンジョイしていた俺を連れ出して何がしたいんだ?」

「別に何も?(即答)」


「ふざけんな‼︎」


「別に、毎年誕生日こないだろって言って四年に一度しか祝ってくれない潤に、今年こそは祝って欲しいとか、二人で出かけるだけでもいいからとにかく一緒にいたいとか、そんなこと考えてないからね☆」



「最初からそう言えよ‼︎……ただ俺だって暇じゃないんだぞ。毎年イベントが2月いっぱいまでってなってて、今年は一日多いからいつもより多くポイント稼がにゃならんのに」


「それってゲームの中でしょ?別にいいじゃん」

「おい‼︎」

「そんなことより‼︎四年分、きっちり祝ってもらうからね?どんだけたまってるか楽しみだわ‼︎」

「何が?たまるもんあるか?」

「私の祝いポイント」

「なんじゃそれ」

「知らないのかい?それはね、一年に一回きちんと誕生日を祝ってもらってる潤が、四年に一度しか回ってこない私の誕生日にするプレゼントのグレードを高めるポイントのことよ」

「説明ご苦労様。知らないわそんなポイント」


「なんでよー‼︎家族は毎年28日に祝ってくれるのに‼︎潤だけよ‼︎プレゼントどころか、おめでとうすら言ってくれないの」


「そんなわけないだろ、毎年やってるじゃん……スタンプ」


「あんなクソしょーもないスタンプの何に満足しろってのよ‼︎だいたい『だ』だの『い』だの『す』だの、わけわからない一文字の、やたらでかいスタンプを飽きもせず毎年毎年……あれがプレゼントとかアホじゃないの?」


「クソしょーもない……アホ……」


「そうよ‼︎前回のうるう年の誕生日の日のこと覚えてる?」


「……うん、前回は絵を書いた。カナメちゃんと僕が手を繋いでる絵」


「そうよ‼︎あれは今でも宝物なのよ?今でもこうして持ち歩いてるわ‼︎なのに、次の年から毎年毎年スタンプスタンプ、市販品よ?気味が悪いわ」


「ガーン……帰る」


「ちょっと⁉︎帰ろうとしないでよ‼︎さっきからなんかじりじり帰るタイミング伺ってると思ってたけど⁉︎」


「おい腕を掴むな‼︎帰らせろ‼︎なんかもうやだ‼︎」



「ええ〜……」


「……はいこれ、今年のスタンプ」


「きちんと用意はしてきたんだ……でもほんとなんなの、またスタンプて……」


「……絵を見て?」


「絵?見なくても目に焼き付けてるわよ?」


「なら思い出して?空のところ」


「ああ空?確かに、変なやたら丸い雲があるなって……思って……?ハッ‼︎」



「……分かった?」


「まさかこれ、スタンプ押す場所なの?」


「うんそう‼︎左から渡した順に押していって?」


「ええ……『だ』『い』『す』?ダイス?」


「最後あいてるだろ?そこに今年のスタンプ」


「そうだったわ、えーっと?最後のは『き』ね‼︎並べると……『だ』『い』『す』『き』、大好き⁉︎」

「……どう?」

「わぁ‼︎嬉しい‼︎つまり何?この絵は次はのうるう年に完成するようにあえて未完成に作られてて、毎年毎年渡してきた謎のプレゼントスタンプはこのメッセージのため?何それ最強すぎじゃない‼︎」

「説明ご苦労様……喜んでくれたら僕も嬉しいけど」


「当たり前じゃない‼︎最高よ‼︎あれよね?私が毎年ためてたのは祝いポイントとか謎のスタンプどころか、潤の私大好きポイントだったってわけね?何それか〜わ〜い〜い〜」

「わかったらボチボチ帰らして……恥ずかしくなってきたよ」


「帰らせるわけないじゃない‼︎こんなことして‼︎このままじゃ私の気が済まないわ‼︎このまま街へ繰り出すわよ‼︎」

「そんな‼︎」


「ねえ?」

「何?」


「次は私も一緒に考えていい?」

「次?」

「次のうるう年までのプレゼントよ‼︎なんだかすごく嬉しかったから、でもそれまでがクソすぎた」



「……別にいいけど?」


「やった‼︎じゃあまずは来年からのプレゼントのアイデア探しからね‼︎じゃああそこ行こう‼︎あっちでもいいな……」


「実はまだ今日、サプライズが家で待っていたりするけど、まあそれはもう少し後でもいいかな……」


「なんか言った?」


「いや、なんでもないよ」



(〜happy birthday to you〜)

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