第15話 上位魔族戦②
彼女と別れて数分、私はコツコツと足音を立てながら二階への階段を上る。
ここまでは誰も出てこない。
罠か?と考えているが、人形使いの索敵能力を舐めてはいけない。
どうやら敵は書斎で待ち伏せをしてるようだ。
恐らく、魔法特化という可能性が高い。一応魔法を封じれる術は持ってるものの、効くかどうかの問題にもなる。
果たしてどうなるのやらねぇ……。
「ここだね」
書斎前に到達した私は扉を思い切って開ける。
しかし、そこには本棚などはなく、目の前には黒髪で赤眼の魔族がいた。魔力が普通の魔族より高い。恐らく上位かな?
「お前が例の人形使いか?」
「だったら何だと言うんだい?」
「吾輩を打ち倒し、この家を乗っ取る気かね?」
生憎、乗っ取るんじゃなくて取り戻すんだけどなぁ。
まぁ何がともあれ、目的を知られてない時点で上々だね。
「乗っ取るとは言い方が悪いね。取り返しに来たんだよ」
「取り戻しに?まさか、吾輩の策略に感づいていたというのか?」
まぁね。
「ならば脅威は排除せねばならるまい?」
相手は指をぱちりと鳴らすと、辺りの本や本棚など書類が集まっていき、次第に1体の巨人になる。恐らくゴーレム作成の魔法を使ったな?
「
「この屋敷には
あら、そう?では上位魔法ぶっ放して文句は言わないって事だね。
私は魔剣を鞘から抜き取り、構える。
「私の名はネクロ。人形使いだ」
「吾輩はエンギリーム。上位魔族の
おお……丁度いい相手だ。この時代の操霊術はどうなのか、試させてもらおう。
まぁ、せいぜいあがいて私を楽しませてくれたまえ!
「いけ!邪魔な人形使いを潰せ!!」
「ほら、出番だよマルトちゃん」
懐から人形を取り出し、書物の巨人に向かって投げる。
縮小化を解除し、武器を具現化させ、お互いの手駒が戦闘態勢に入った。
『書物の巨人……脅威ランクは「D」ですか……お遊びレベルですね』
「まぁ、そう言ってやるなよ、相手も小手調べしてくれてるんだから、相手にしてあげなさい」
そう言ってGoの指示を出す。
『あなた如きの可燃性巨人は敵にもならない』
マルトの戦斧の刃に炎が付く。いわば
『バラバラに粉砕します。【強撃】』
強撃、斧と大剣技の1つで、名の通り思いっきり刃を相手に叩きつける技。
マルト、相手を舐めちゃあだめだよ。
炎が纏われた戦斧が可燃性の巨人を縦に一刀両断するように振り下ろされる。
書物の巨人は刃を受け止めるように腕をバツ固めにして防御する。
普通の書物の巨人は身体全体が書物で出来てるから灰になるが、それはあくまで普通ならばだ。
『……?燃えない?』
マルトの顔が「あれ?」というような表情になる。
やはり、普通の書物ではないか。
「へぇ?書物自体にも細工か。
「普通の可燃性巨人は炎属性の魔法や能力で台無しになるんでな。それなりに工夫してるのだよ。人形使いのお前はよくわかってるようだが、昔は
「ははは、よく言われるんだよ。でも残念。その巨人は後数秒で落ちるよ」
エンギリームは「何?」と言って書物の巨人を見るといつの間にか細切れにされていた。
「な!?何が起きたというのだ!?」
細切れにされた巨人を打ち破り、埃が舞う。その埃を振り払い、マルトが出てくる。
『炎が効かないなら他の属性で切り刻めばいい、けど所詮は書物。軽く刃でどうにかできる』
「さすがマルトちゃん。後は私に任せたまえ」
「ほう?お前一人で勝てると?この吾輩に?強気になりすぎではないか?」
エンギリームは軽く挑発した後、魔法の剣を取り出す。
色は紫、毒属性が含まれてる証拠だ。
「ただ、私は長期戦は嫌いだ。この一閃で君を倒す」
「面白い。やれるものならやってみるがいい!」
お互いに素早く動き、急接近する。
2本の魔剣の刃が光り、一閃が走った。
互いに背中を見せ、結果が露わになった。
「ば……か……な!?この吾輩が……人形使い如きに!?」
上位魔族が倒れ、床には黒い液体が広がり、息絶える。
「【人形師の体術】と急所を狙う斬撃をぶち当てるだけで、軽く上位魔族は屠れる。人形使いを舐め切った証拠だよ」
私の一閃がエンギリームの剣より速く身体を技を決めれた。
ん?私もダメージを受けたんじゃないかって?人形師の体術をお忘れかい?
確かにアレがなければ私が斬られていただろう。
まぁ、今回は運がよかったとでも言っておこう。
「さて、これからが忙しくなるよ。マルトちゃん」
『そうですね。再び人形使いの光を世界に注がねばなりませんね』
人形使いの冒険譚~何かいつの間にか最強になってたよ~ ヒラン @daikaru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。人形使いの冒険譚~何かいつの間にか最強になってたよ~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます