第2話 ようこそニルヴァーナ邸へ
「で、でけー。」
そこには豪邸があった。
「ようこそニルヴァーナ邸へ。」
「普通にでかくない?」
「そうですか?他の貴族と比べると小さい方ですよ。とりあえずお父様に事情を説明しますので、ついて来て貰っていいですか?」
「了解した。」
沢山の扉があったが、そのなかでもほかより少し大きい扉の前に来たところでカインが足を止めた。
「時間が無いので一部屋づつの説明は省きましたが、ここはお父様の執務室です。」
ゴクリとハヤトの喉が鳴った。
コンコン、
「どうぞ。」
爽やかな若い男の声がした。
「中へ。」
ガチャリ。
カインに連れられ中へ。
「ああ、カインおかえり。済まないね、お使いなんかさせて。おや、その子は誰だいカイン。」
「お父様それがカクカクシカジカで。」
「ホウホウナルホド。」
「いやそれで分かるの?」
「まあだいたいは分かった。つまりキミはここで働きながら剣の稽古がしたい訳だ。」
「分かるんかい。ま、まあそういう事です。どうですか、許可してくれますか?」
「許可も何もカインが連れてきた子だ、ダメなわけないだろう。ようこそニルヴァーナ邸へ。私は当主ニルヴァーナ・メイ・マーリン、よろしく。」
ハヤトの顔に光が差した。
「ありがとうございます。僕はサカタ・ハヤトです。よろしくお願いします。」
「ではさっそく。ペトラ、ガレスここへ。」
「わっ。」
気がつくとハヤトとマーリンの間に一組の男女が立っていた。
「お呼びですかマーリン様。」
「うん。今日からハヤトクンがこの屋敷で働きながら剣を習いたいらしい。二人には世話を頼みたい。」
「世話、ですか。」
なかなかに体格のいい男が少しムッとした顔で言った。
「そう、まあまずは自己紹介して。」
「はあ、俺はボーマン。上の名はガレス、ガレス・ボーマンだ。ガレスでいい。」
ガレスと名乗った男がハヤトの方に振り返ってそう言った。
「ガレスは現役の騎士で円卓の騎士にも選ばれた凄い騎士なんだよ。ガレスにはわかっていると思うけどハヤトクンの剣の稽古を付けてやってくれ。」
マーリンが後から付け足しガレスが渋々という感じて頷いた。
「ペトラ。」
オレンジ色の髪の背の低い少女だ。
「ペトラは家事全般をレクチャーしてあげることと魔法についても教えてあげてね。」
「ん。」
(教えてもらうのは剣だけでいいんだけどな。)
ここでまたマーリンが口を開いた。
「それじゃ剣の稽古は明日にしてペトラは今からハヤトクンに屋敷を案内してあげて。」
ペトラがコクリと頷いた。
「ここがあなたの部屋。」
一通り屋敷を案内してもらって最後にハヤトの部屋が紹介ししてもらった。
「ありがとう。」
「ん。」
とその時、
「あー!」
大声がした。
「ん?あっ!アベル!?」
「やっぱりハヤトだ、でもなんでここにいるの?」
「いや、なんでってそれはこちらのセリフだぜ。」
「ここはボクのお家だよ。」
「僕はここに雇われたんだよ。」
「雇われたって誰にさ。」
屋敷の廊下でワーワー騒いでいたらうるさいわけで、
「おやおやおかえりアベル。ハヤトクンとは知り合いだったのかな?」
当然の質問をマーリンがした。
「うん。今日王都で会った人なんだよ。」
「この子はカインが王都で助けて貰ってね、お礼にうちで雇ってあげたわけさ。まあこの話の続きは後にしてそろそろディナータイムにしよう。」
マーリンを先頭にぞろぞろ食堂に移動することに。
「それにしてもハヤト、ボクのお誘いを拒否してカインの誘いに乗るなんて酷いじゃないか。」
「いやカインの時は助けたお礼という理由があったんだ。僕は理由もなしに人の世話になるのが好きじゃないんだ。」
「ふーんそうですか。」
アベルが拗ねるころには食堂に着いていた。
ガレスとペトラが食器を運んで来た。
「おー美味そー。いただきます。」
ハヤトが手を合わせてそう言うと、
「ハヤト何やってるの?」
アベルがキョトンとした顔で見ていた。
(ああそうか。この世界の人はいただきます知らないのか。)
「僕の故郷ではご飯を食べる前にいただきますと言うんだ。食材になるために殺された動物の命をいただくということ。」
「へーいいね。じゃあボクもいただきます。」
アベルが真似すると、
「じゃあ私もいただきます。」
カインも真似した。
「それじゃぁハヤトクン明日の計画をお知らせするよ。ガレスとペトラも聞いててね。」
ガレスとペトラが反応したところでマーリンが話始めた。
「朝はペトラがハヤトクンに魔法の授業をしてあげて、その間ガレスは家事をしててね。昼からは、三人で協力して家事仕事を。夕方に剣の授業をガレスが担当して、その間ペトラが家事をしてね。」
「分かりました。」
「ん。」
そんなことで明日の予定が決まった。
「いつもこんな感じで明日の計画をたててるんですか?」
「まあね。基本朝は忙しいんだよ。だからこの時間に報告してるんだよ。」
「ふーん。ごちそうさまでした。」
「それは食べ終わった時の挨拶かなんかなのかい。」
「そゆことだな。」
「じゃあボクもごちそうさまでした。」
アベルが真似すると、
「じゃあ私もごちそうさまでした。」
カインも真似した。
「そろそろお風呂に入って寝るとしようか。」
「ふーそれにしてもでかい風呂だったな。」
(こんな訳の分からない世界に紹介されちゃったけど何とかやってけそうだな。)
考えが甘いと気づけぬままハヤトは眠りに落ちた。
朝になった。今日は快晴だ、と言っても昨日も快晴だったが。
今日は快晴だ、と言ってもハヤトの部屋は快晴ではないようだ。
「きゃー。」
とても高いがハヤトの声だ。
「うるさい。寝れない。」
ペトラがベットの中にいた。
「おいペトラさん、なに人のベットに忍びこんでんですか。」
「ハヤトを起こしに来たら気持ち悪そうに寝てたから。」
「気持ち悪そうだったんかい。」
(確かに昨日は悪い夢を見た気がするな。)
まだ覚醒仕切ってない頭でハヤトはこの先輩幼女に言う説教を考えていた。
「だいたいそれで、もしうっかりアレなことになったらどうするんですか。」
「ハヤトにそんな度胸ない。」
「見透かされている!」
「朝ごはん食べにいく。」
食堂にて
「あれマーリンさんは?」
「ご主人はもう出かけた。」
「マーリン様は仕事だ。俺もすぐ家事につく。ハヤトとか言ったな、俺はまだお前を信用していない。だがマーリン様が良しと言った以上仲良くしたいと思っている。この気持ちを裏切らないでくれよ。」
「はぁ。」
「返事は!」
「は、はいっ。」
「よし。じゃぁ俺はもう行く。」
ガレスは弟に言うように笑って食堂を出ていった。
「今日もパンが美味しい。」
隣りでペトラがパンを口に頬張っていた。
「ぶれないっすね。」
「今からお稽古、早く食べて。」
「分かりました。」
こうして朝食の時間が終わった。
朝食の後さっそくペトラの授業が始まった。
「さっそく教えたいけどその前に、ペトラのことはペトラお姉ちゃんと呼ぶこと。」
「いやそれはきついっすよ。せめて姉さんにしてください。」
「しょうがない。それで許す。お姉様と呼ばせてもよかったけど、姉さんで許す。」
「ありがとうございます。」
「じゃあお姉ちゃんの授業を始める。」
「よ、よろしくお願いします。」
「まずは
「了解っす。」
「この世には大気中に
(魔力とか魔素みたいなのか。)
「ちなみに騎士とかも闘力を使ってパワーアップしたりする。」
(自強化ってやつか。だからマーリンさんは僕に魔法のことを教えさせたのか!)
「闘素を闘力に変換するには一度闘素を体内に取り込んでから変換する。でも体内に取り込むための器、つまり
「そんなこと出来るんですか?」
「ハヤトには出来ないけどペトラお姉ちゃんには出来る。」
「そんな事分かってるよ。」
「ちょっとじっとして。」
そう言うとペトラはハヤトのデコに自分のデコを優しくくっつけた。
(な、なんだ?)
「分かった。」
「え、もう分かったの?」
「うん。ハヤトの闘器は500サイズ。」
「おー、ってそれは凄いのか?」
「一般人からしたら誇っていい。現にペトラより大きい。でも騎士になるならもう少しあった方が他に差をつけられる。」
「闘器って大きくなるものなのか?」
「限度があるけど基本がんばったぶんだけお闘器も成長する。」
「じゃあ実際500サイズって何が出来るんだ?」
どのくらい戦闘に魔法が使えるか知りたかった。
「
「別に活躍出来なくてもいいんだが。」
「ペトラが教えるからには最強の騎士になってもらわなければ困る。ペトラの功績に傷がつく。」
ペトラはニヤリと笑ってそう言った。
「自分の功績のためかよっ!」
「まあ半分冗談は置いといて、」
「もう半分も置いてくれよ。」
「500サイズあれば悪くないけど騎士として生きて行くには5000サイズくらいあれば上位に行ける。」
ハヤトは目を見開いた。
「ご、5000!?それって今の十倍じゃないか!そんなに成長するものなのか?」
「普通の人は出来ないけどハヤトならできる。」
「随分過大評価してくれますね。」
「だってペトラがついてるから。」
「自己評価高っ!まあいいや、でどうするんですか?」
「これから一生息止めて。」
「え。」
異世界は剣と魔法だけじゃダメ(女の子がめっちゃ必要) 美坂集 @misakasyu
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