第33話 伝説の勇者の息子の伝説
「かくして、世界が闇に包まれる時、光の勇者が現れてその闇を払われました。
って、いやー、物理法則を突破した時のパラドックスなのかなんなのか、可能性を司る女神の僕にも何が起きたのかさっぱり分かんないや」
「けけけ。終わり良ければ何とやらだ」
アレックスはそう言うと、彼の傍らにいる少女の頭にポンと手を置いた。
そうされた少女は、キョトンとした顔を浮かべ、アレックスの方へと視線を向けた。
「けけけ。何でもねぇよ何でもねぇ」
「いや、何でもないわけあるか、いったい何なのじゃ? そ奴は」
ミコットは怪訝な顔をしてそう尋ねた。
あの時、アレックスと終焉が最終決戦を繰り広げた世界から戻って来たのは、ボロボロの姿になったアレックスだけと言う訳では無かった。
彼に付き従うように、パッと見では10歳前後位の黒髪の少女が手を引かれてやって来たのだ。
「んーあ? 俺にもわかんね?」
「俺にもわかんね? で済ませられるか! そ奴は終焉の現身なのではないのか!?」
ミコットはユーガクスィーラの陰に隠れるようにしながら抗議の声を上げた。
あの世界に残ったのがアレックスと終焉である以上、そこから出て来るのは彼と終焉以外に他ならないからだ。
「けけけ。んなこたどーでもいい。今のこいつは厄介なスキルを失ったただのガキだ」
アレックスは目を細めながらそう言った。
★
「ご心配をおかけして申し訳ございません、お坊ちゃま」
終焉が無害化されたことにより、流行り病と言う死の淵から生還したセシリアは、そう言って深々と頭を下げた。
アレックスはそんな彼女に対して鷹揚な態度で、ただポンと頭に手を置いた。
「ででで、何がどうしてどうなったのですか!? 詳細に! 詳細にお聞かせください!」
「貴様は、ホント感心するぐらい空気読めんのじゃな」
「えへへー。それほどでもー」
「言っておくがこれっぽっちも誉めちゃおらんからな!」
セシリアの看病のため置いてけぼりとなったアリスは、事の詳細を問いただすため、三日三晩ミコットの傍から離れなかった。
そして
「へくちっ」
可愛らしいくしゃみの声とは裏腹に、彼女の目の前にあったテーブルが一瞬の間に原子の塵と化した。
「かかか。きーつけろよお前、スキルは無効化出来たが、ステータスはそのままなんだ」
「きーつけろよ。ですむことか! 貴様はこいつの生みの親なんじゃから最後まで面倒見んか!」
その様子を笑ってみていたアレックスに、ミコットはセシリアの陰に隠れながらそう抗議した。
「しかし、困りましたね」
「そうじゃ! 貴様からも何とか言ったらどうじゃセシリア!」
「ええ。何時までもお前では、可哀想というものです」
「そっち!? そっちか!? いや、そっちも問題ではあるのじゃが!?」
「あっ、命名の話? だったら僕に一案あるんだけど」
「貴様は貴様で、いつまで居座るつもりじゃ! とっとと天界なり何処なりと帰るがいい!」
ギャーギャーと騒ぎ立てる面々を眺めながら、アレックスはのんびりと大あくびをしたのだった。
伝説の勇者の息子の伝説 完結
伝説の勇者の息子の伝説 ~あまりにも最強無敵すぎるので自重して生きていたら、お前なんか王にふさわしくないと国から三下り半を突き付けられました~ まさひろ @masahiro2017
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