終末ラブストーリーもの。
ポストアポカリプスの世界観を下地に語られるアンドロイドの物語。人間の文明の終焉、朽ちていく機械、繁茂する自然、などといった「終わること」を醸し出しつつ、一方で終わりを迎えた世界の中での新しい出会い、思考の独自発展に気付き、そして共感共存していくといった「続くこと」としての可能性や希望を絶妙な匙加減でスパイスされていました。この「終わること」と「続くこと」を互いに見え隠れさせている点から作品が秘める確かなテーマ性が見え、短い作品ながらもしっかりとした読後感を得られる素晴らしい作品でした。
またとても読みやすいのもポイント。SFというジャンルは食わず嫌いされがちですが、しかしこの作品はSFに不慣れな方でも楽しんで読むことができるかと思います。SFらしいSF作品でありながらも純粋な恋愛ストーリーとして読み解けるのはお見事の一言です。
SFらしいエモい世界観とキャッチーなラブストーリー、そして作品を通して提示されるシリアスなテーマ。これらの要素がいいバランスで融合しており、SF好きだけではなくもっと幅広い方々に読んでもらいたい作品だと感じました。とても面白かったです。