第18話 コロナ戦争・日本最後の戦い!

コロナ戦争・日本最後の戦い!


『クルーズ船が全てを教えてくれていた』


香港で降りたたった一人からあれだけ感染するということ。

密集、密閉、密接、まさにそうであった。

そこに無策、無防備(検疫官まで感染)で挑めば感染拡大するということ。

乗客と乗員の分離、隔離をすべきであった(学んだアメリカは実行)。多い時は分離して隔離の重要性。

そして検査の重要性(全員検査する能力があれば、下船させて分離隔離が出来た)。

これらは、素人の私らでも感じ、気づいたことである。


 長期に過酷な船内に留め置いた政府の対応のまずさを、国内は無論、諸外国からも批判を受けた。初めての体験、想定外のことがあった。外国船籍であったこと等。何より最初の2日ほどの検査で集団感染率の高さに驚いたと思う。船上の武漢と呼んで良かったろう。

 アメリカは水際作戦で先手を打ったと思っていたし、用意周到なドイツだって、隣国といえるイタリアが炎上するとは思ってもいなかったろう。どこも武漢の様子は知っていながら、コロナの惨禍から逃れられなかった。そういう意味では、日本政府にも同情の余地はある。しかし日本には2月3日、小さな武漢となって警告船がいち早くやってきたのである。黒船騒動を思い出す。あの時は、混乱はあったが、正しい選択ができた。

 むしろ、責められるべきは警告船と読まず、厄介船として処理したことである。加藤厚労大臣が対応を問われた時に、『我々はただ粛々と検疫作業を行っただけ』とにべもなく言い放った態度が何よりである。クルーズ船の感染者を外数として処理し、船内の様子やデーターは最小限にしか出されなかった。


 その少ないデーターからでも読み取れる大切なことはあった。何より全員の検査が行われたのはここだけである。今後の市中感染状態読み解く唯一の資料と云えたのである。

2月20日時点、乗客・乗員3711人

陽性者619(17%) 発症者301 無症状318 

4月12時点の病状結果(3月1日にされた確定報告とそう動いていない)

感染確認者712人 重症8人 死亡者12人  致死率1.63 退院 639人(89%)


 これから云えることは、感染しても、半数は発症せず、隠れ感染者となり感染を広げてしまう恐れが非常に高いということ。無症状者や退院者数から軽症で終わる確率が8割程度と高いということ。

 感染者数は多くても、死者数が少なければいい。そういう意味では結果成功とも言える。でも、これは当時、感染症ベッドが空いていた幸運があった。日本の医療技術の高さは勿論、そして搬送が手際よく行われたことは忘れてはいけない。


『感染の疑いのあるものを積極的に検査し、無症状者や軽症者の受け入れ先を別途確保、隔離した上で、中等症から重症者用の治療ベッドを確保し、医療崩壊を防ぎ、死亡者を極力減らす』と云う方針が立つ。私はクルーズ船から関心を持って、経過を追い、結果論で言っているが、専門家集団ならならこれぐらいの推論・方針がなぜ立てられなかったのであろうか。それがどこで間違ったのか?

 

 専門家会議メンバーの中で私が一番しっくり来ている、SARS対策にもかかわった東北大学の押谷仁教授がこう書いている(感染研系統の他のメンバーを私はほとんど信用していない)。クルーズ船で一時的に首都圏の感染病棟が一杯になった現状を踏まえて、

「今の日本で、一番メガクラスターが起こると考えられる場所は病院です。多くの人は感染していないだろうが、残り1%が感染していたら、待合室で多くの人が長時間滞在するのは、感染の可能性を非常に高いものにします。・・・武漢のように多くの人が待合室の中で押し合いへし合いの状況になると、メガクラスターが起こる可能性があります」と。

 そこで出されてきたのが、2月16日第1回専門家会議での「帰国者・接触者相談センター」の設置と、受診基準である。

相談センター(保健所)で窓口を一本にし、厳しい受診基準(37.5度、4日以上のあれ)で検査を前で絞るやり方であった。


 医療崩壊をおこさないか、先に恐れたことである。不安を抱えて受診を望む側、や軽症のうちに見つけて治療に繋げたい医師やクリック側の意見より、提供者側の組織論理が優先したのである。かかりつけ医や、街のクリニックの前には、「熱があったり、感染を疑う人は相談センターへ、電話は○○」の冷たい貼り紙が貼られたのである。

 感染研・厚労省(医系技官)は感染症に於いて絶対的な自負があるのか、民間医師(かかりつけ医、街のクリニック)や民間検査会社、ようは民に任せたくない官の組織体質があった。彼らは検査体制の拡充を求める世論に、陰に陽に逆らったサボタージュを意識してやってきた。それをさらに助長したのが、国内感染者数が少ないのを喜ぶ、能天気なオリンピック優先政治家達である。これでは検査体制が進むわけがないのである。

 国民は他国と比べて疑念を持ちながらも、安心な材料には安心していたいのである。いくら自粛を云われても、危機感を云われても、やっぱり数字を見てしまう。「外国より数段まし!」。


 元々いた不顕性感染者に、検査からこぼれた疑わしき感染者が上積みされ、溜って来ていたものが今一挙に感染者となって浮き出て来ているのである。医療関係者に静かに忍び寄り接触し、他の病名で入院患者として入り込み、院内感染を次々と起こしているのである。感染拡大はここまで来たのである。

 急増する感染者、不足する人員と医療資材、医療崩壊は始まりだしているのである。決して武漢のように一挙に人々が病院に押しかけた訳ではない。武漢では不審な死があっても、いち早くその正体にたどり着く困難は認めなければならないと、押谷氏も誠実に語っている。それに輪をかけたのが地方政府の隠蔽である。前のサーズもあって、それを知っていた人々が恐れて押しかけたのが真実であろう。正しく情報を発して行けば、押谷氏の言う危惧は危惧でしかなかったと思うのである。時間軸という猶予があったのである。


 点を追いかけ、線で繋げるクラスター対策は、不顕性感染者を持つ厄介な今回の新型コロナ感染症の前には限界があった。面での戦い、それに立ち向かえる武器が今はPCR検査しかないのである。この「検査しまくり作戦」で奮闘しているのがMARSを経験した韓国である。ドイツでは週50万件の検査を実行している。


 医療崩壊寸前の危機に対して、医師有志達が声を上げ、及び腰だった医師会もようやく腰を上げ、かかりつけ医から民間検査機関への別ルートを実行しだした。専門家会議もようやく今までのやり方の限界を察知した。大阪府がいち早く提示した軽症者の借り上げ施設利用もようやく習って始まった。クルーズ船、2月3日からやっと辿り着いた2か月と10日の正解の道、残されている時間は少ないが、懸命にやるしかない。


 専門家会議のメンバーは感染症やコロナ研究の第1人者である。熱意がなかったわけではない。欠点は簡単な時間計算と数字計算が出来なかったことに尽きる。全てを固定して捉えた。足したり引いたりすれば数字は変化するということ。時間は戻せないが、時間軸は関数に於いては変数となり得るということ。それと、能天気な政治や、組織防衛を優先する官僚組織を慮ったこと。最大の欠点は会議のメンバーが余りにも、国民的課題に同質的過ぎたことである。


 感染研と厚労省の検査体制を意図して遅らせた組織論理は決して許されない。世界の情勢を読めず、国民の命よりオリンピックを優先した政治リーダーたち、緊急事態宣言を発しながら居酒屋営業を認める、ここに至ってまでの能天気な政府官邸には今後に起きる全ての責任を取って貰わねばならない。最後の頼みを「あべマリア」に託す訳にはいかない。


 感染がゼロだった徳島県の友人から4人の感染者が出た、怖いと連絡が入った。4人である。今はたった4人ではないのだ。石川県がここに来て100人を超し感染者が急増している。何故石川県が?新幹線開通、金沢とピンと来た。学校の再開も見込めなくなって、学生たちの帰省疎開が始まっていたのである。今まで少なかった地方県で3月28日頃から感染者が軒並み急増しているのである(NHK新型ウイルス特設サイト)。友人にはこのような返事を返しておいた。

「大江戸を止め、上方を止め、昔東海道、今新幹線、阿波四国には橋も架かる。大事にしじゃれ」と。


首都(圏)防衛、絶対である。中国やアメリカではないのである。首都圏がやられたら、日本はたちまちコロナ列島。イチコロである。この危機感を共有しなければならいのである。

『首都防衛』4知事、官邸力を合わせ、全ての資源を優先して集中。強権に近い要請。首都防衛の強いメッセージを発して、首都圏のみならず、全国民に安心を届けることである。それには「オリンピック村を活用」を宣言すること。21棟、18000ベッドがある。森が、安倍が反対?特措法で知事権限で必要施設として収用すればいい。検査体制を早急に構築し、分散しない一同の大収容施設をキープし、専門医療機関は全力を挙げて中等、重症患者の治療に当たる。

 1か月になるか、2か月になるか、徹底した外出規制、休業要請、要請は禁止であるという言葉を使ってもいい。場合によっては首都圏の大企業の2週間の休業(大融資があるから補償はなし)。ないしは半数ずつの隔日出勤。8割削減はこうもしなと出来ない。そもそも出来ない数字を云うべきではない。

 小規模の飲食業や事業者、何も全額、利益までの休業補償を云っているのではない。人件費(休業補償金が払われない人やアルバイト達)と家賃の固定費、営業主の最低限の生活費をなんとかして貰って、期間開けには再開できる保証が欲しいのである。色々工夫が出来るだろうに、何のための東大卒。8割削減と居酒屋営業とはとっても同居出来るものではない。


首都から集団疎開、見たくない光景である。

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連載、検証コロナ感染症。 北風 嵐 @masaru2355

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