第17話 コロナ戦争、ドイツの奮闘!

4月10日現在、感染者122,215人、死亡者数2,707人、致死率2,26%

他のヨーロッパ諸国、イタリア、フランス、スペイン、イギリスと比べてみよう。

イタリア 感染者147,577 死亡者18,849 致死率12.77%

スペイン 感染者158,273 死亡者16,081 致死率10.16%

フランス 感染者112,950 死亡者13,197 致死率10.49%

イギリス 感染者 73,758 死亡者 8,958 致死率12.03%

感染者数はほぼ同じであっても、その致死率は圧倒的に低い。

ドイツの対策


3月18日メルケル首相は国民に向けて理解と協力を求めるメッセージを発した。

平易な言葉で諄々と、これから予想される制限された困難な生活を語り、国民に団結を呼びかけるものであり、断固とした政府の意思を示すものであった。

ドイツの誇るべき医療体制を語り、しかし感染拡大で一定の容量を超える事態に至らないよう、外出を制限し、人々との接触を減らし、感染速度を緩め、時間を延ばし、治療薬がワクチンの開発を待つことであった。

厳しい私権を制限する措置については、次のように語った。

「連邦政府と各州が合意した閉鎖措置が、私たちの生活に、そして民主主義的な自己認識にどれだけ厳しく介入するか、私は承知しています。わが連邦共和国ではこうした制限はいまだかつてありませんでした。

私は保証します。旅行および移動の自由が苦労して勝ち取った権利であるという私のようなものにとっては、このような制限は絶対的に必要な場合のみ正当化されるものです。そうしたことは民主主義社会において決して軽々しく、一時的であっても決められるべきではありません。しかし、それは今、命を救うために不可欠なのです」と、東独出身のメルケルは語った。概ね国民はこれに賞賛を持って受け入れた。


イタリアの感染爆発を目にしてEU諸国は動揺し、国境封鎖を云う国が出てきた。ドイツのメルケルとフランスのマクロンはEUの基本理念シェンゲン宣言(国境往来の自由)を守る立場から最初難色を示したが、イタリアの感染爆発が全土に及ぶ事態に方針を変えた。これは日本の原発事故のとき、原発廃止に転換したのと同じであった。世論動向を素早く見抜く変わり身と評価するより、科学者として持つ危機管理能力と見た方がいいだろうと私は思う。

ドイツの医療体制に少し触れておこう。

最大の特徴は、ホームドクター制をとっていることです。市民はどれかマイドクターを(日本で云えばかかりつけ医)持たねばなりません。ドクターは患者を受診し、専門病院化総合病院か大学病院かその人の症状に合わせた病院を選択し勧めます(軽症は自宅療養も勿論あります)。直接上記3病院に直接かかれないところが日本と違います。ホームドクターは13年のキャリア、厳しい資格、そしてホームドクター間の競争もあります。医師の全体の3割を占め、大学病院の教授医師とも対等な立場で話し合いをします。彼らの立場、意見、データーを無視しては医療が成り立ちません。国民皆保険、医療体制、医療技術と世界で一番の国です。PCR検査については、ドクターがやった方がいいと思う人はどんどんやるという主義で日本とは大きく違いました。軽症者は自宅か隔離施設にし、中等症、重症者は入院措置を取るという方法を最初から取りました。中国武漢、日本のクルーズ船等を見て、検査体制は万全を取っていました。韓国のドライブスルーも取り入れました。3月26日時点では週に50万件をこなしています。

この時点で日本では1日の検査能力が7500件、実施はこのうち2割程度で進行している。

これら検査体制、コロナ対策を指揮しているのが連邦保健省下にある、ロベルト・コッホ研究所(日本の感染研に相当)である。ろべると・コッホは、1876年、炭疽菌の純粋培養に成功し、炭疽の病原体であることを証明し、このことによって細菌が動物の病原体であることを証明した。1882年には結核菌を、翌年にはインドにおいてコレラ菌を発見した。細菌、感染症については世界トップの名門中の名門である。

症状を感じた人の直接受診は禁止され、相談センターが設けられているが、ホームドクターへの電話相談も受け付けていて、ドクターは日ごろからの患者の状態を把握しているので、検査につないだり、入院措置を安心して受けられるのである。

致死率の低さは、検査体制の充実とそれを支えるホームドクター制度の両輪があって可能なのである。感染症については街のクリニックやかかりつけ医が最初から排除された日本とは大きく違うのである。


ドイツは連邦制であり、厳しい規制措置についても州によってばらつきがあるので、メルケル首相と、各州の州首相がビデオ会議をおこない、統一したガイドラインを発表した。

接触制限措置のガイドライン内容

1.同居家族等以外の他人との接触は絶対に必要な最低限とすること。

2.公共空間において他人との距離を必ず最低1.5メートル、可能であれば2メートル以上とること。

3.公共空間における滞在は単身または家族以外の1名または家族の同伴に限り認められる。

4.職場への通勤、緊急時ケア、買い物、通院、試験や会議等重要な日程、他者の支援、個人によるスポーツ、屋外での新鮮な空気を吸うための運動やその他必要な活動のための外出は引き続き認められる。

5.グループによるパーティーは公共の場所か私的な空間(住居)かを問わず許容されない。秩序局または警察が取り締まり、違反行為には罰則が適用される。

6.すべての飲食店閉鎖。(配達サービスやテイクアウトは可能)

7.美容院、美容サロン、マッサージなど身体のケアに関わるサービス業はすべて閉鎖。(医療上必要な治療は引き続き認められる。)

8.人々との接触があり得るすべての現場については、公衆衛生に関する規則を守り従業員や訪問客に対する効果的な保護措置を実施することが重要。


時系列

最初の感染確認

1月27日、ドイツのバイエルン州シュタルンベルク郡在住、ベバスト社勤務の33歳男性会社員の感染が確認された。患者はドイツに出張に来た上海市在住の中国人女性と一緒に会議に参加した。当該女性は上海市で武漢市在住の両親と会ったとみられる。

1月28日、同じ会社の従業員3人の感染が新たに確認された[4]。

1月30日と31日、さらにベバスト社の従業員2人と感染者の家族1人の感染が確認された。

2月に入ってからは徐々に感染が拡大していった。感染が急拡大し出したのは3月に入ってからである。

3月15日、ドイツ政府は、隣接するフランス、ルクセンブルク、スイス、オーストリア、デンマークの5カ国との国境で16日8時から国境検問を実施すると発表した。国境を越えて通勤してくる人もあり、封鎖とまでは行かなかった。

3月21日 バイエルン州とバーデン・ヴュルテンベルク州の2州から外出禁止令(4月2日まで)が出された。違反には罰則がつくもので、あらゆる種類の飲食店の営業が停止された。

3月23日メルケル首相談話。これからの国民へのメッセージ。接触制限措置

4月1日 接触制限措置の延長(2週間)

4月4日集中治療室1万床確保、フランス、イタリヤから重症患者の受け入れ。

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