第36話 ハネムーン 完結♡
僕はベビーホルダーで赤ちゃんを抱いて、綾香さんとハネムーンの旅。
「どこに行こうか」なんて選択肢は全く無くて、ジェシカのアトリエのあるロサンゼルス郊外に滞在する事になった。
「ホテル代浮くじゃない?」って、綾香さんが決めちゃった。基本ケチなんだよね、綾香さん。ジェシカさんにだけは甘えるみたいだけど。
空港で井達さんが車で迎えに来てくれた。
「おっ、わんこ」
「井達さん、すみません。そっちも大事な休日なのに」
「気にするなって言ってるだろ。だいたい、短過ぎるだろハネムーンなのに。ろくに観光出来ないぞ」
「赤ちゃん連れだからそんなにあちこち移動しない方がいいし、良いのよ」
「それでも、移動時間は長いぞ」
綾香さんはジェシカと会えてゆっくり過ごせたら構わないって。僕は色々回りたかったなぁ〜って思ってたけど、空港に着いた時点で日本との空気の違いに既に観光気分になってる。思ってたより満足出来そう。
空港からハイウェイで半日以上掛けて、やっとジェシカさんのアトリエに着く。もう夕刻。ここは実家じゃなくてアトリエ……に、滞在するって、ほぼ屋敷だよね。これ。
アトリエにジェシカさんが待っていた。
「わー、おっきい」
「このところ急に大きくなったぞ」
双子の入ったお腹は、送られてくる写真よりもインパクトが大きかった。長身のジェシカさんだから写真じゃ分からなかった。
綾香さんがジェシカさんのところに走っていく。ジェシカさんは椅子に座ったまま、綾香さんを迎えた。
妊婦さんと経産婦さんで話が合うのか、このところ毎日スカイプしてる。前よりも親密になってて、僕はやきもちを焼いているぐらいだ。
「ワンコが来たから安産だな」と、ジェシカさんがニコニコしてる。
「そ、そうですね」
妙なプレッシャーを与えられる。戌の日に僕をかけてるんだって。験担ぎにされてる。
わざわざ僕たちが来るのに合わせて帝王切開の予定決めるとか、信じられないんだけど。
「ベビー見せて♡」と、ジェシカさんにお願いされて、ホルダーごとうちの子をジェシカさんに抱かせた。
「おー! かわいい! うちの子の一人と取り替えよう! 」
「こら! バカなことを言うな」
「せっかく双子なんだから、考えてみた」
「俺に似た方が捨てられるんじゃないのか? 」
井達さんの強迫観念強くて可哀想。
綾香さんは苦笑いしてる。
ジェシカさんのジョークは相変わらずキツイ。子どもが出来た瞬間にワイナリーに興味が無くなったなんてのも、本当、どこまでが本気でジョークだったんだろう。
井達さんを
井達さんはロス支社に移り、悪ふざけを受けることが減ってしまったのでちょっと寂しいところ。
まぁ、その後なんだけど。無事にジェシカさんは双子を出産し、僕たちはハネムーンを終えて帰国した。
そして、僕は綾香さんと人並みに家庭を築いて暮らしていく。
こんなところかな。
FIN
わんこ部下お持ち帰りで社会的に死ぬかも。【36話完結】 炭 酸 水 @tansansui2019
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