第2審
カタッカタッ。
静寂を纏った道に足音だけが響く。
先程はあんなに小さい事で言い争っていたあの2人もこうして歩いていると、やはり一国の宰相として、創造主の末裔神としての風格が溢れんばかりに滲み出ている。
「こんな機会だから聞くがぁ、お主らの国政はどんな状況なんじゃぁ?一国を統治する者として悩みは解決できるかもしれんじゃろぉ」
「しかし今はそんな状況じゃ…」
顔はすこし青白く不安げにしているセポーネは止めようとする。
「あんたら少し気緩み過ぎじゃね?そこら辺の天民が死んだんじゃないんだよ」
ここで初めてレイが口を開いた。
「一応はレイも緊迫してたんだね」
ライは先程からレイの様子を気にしていたのか、口を開いてくれていくつか安心している。
「爺さんが自らそんな事聞くなんてなんかあったのか?」
「ふぉっふぉっ、ヴァグニ君は父親に似て鋭いねぇ。」
と、ジェモの顔は急に引き締まった。
「実は、わしの国では最近どこの指示かしらんがぁ、天裁員たちによる事件工作が起きてるんじゃぁ」
各国の神々は一瞬眉間にシワを寄せた。
「それは具体的にどのようなことが起こっているのですか?」
「セポーネ君の国とわしの国のちょうど境目付近で起こった天民省の高官殺人事件覚えたるじゃろぉ。しかもその高官はわしら2人の国のやつじゃなくてエゾル君のとこの高官だったんじゃよ…」
そこで話を遮るようにエゾルが反射的に聞く。
「おい!じじぃなんでそれっ…」
バタッ。
セポーネは倒れた。
初めて廊下に足音や声といった音声以外の鈍い音が鳴る。
チッとエゾルはセポーネが倒れた事よりも事の真相を知りたくてゴミを見るような目でセポーネを見る。
「っ!セポーネ大丈夫か?しっかりしろ!」
ヴァグニが懸命に対応する。
セポーネの顔は雪のように白く、彼女にあった包みこむような優しい雰囲気は凍てついていた。
しかしヴァグニとオーディン以外は動じる事もなく立っている。
「お前ら!なんで冷静にいられるんだ!神が1人死んだんだぞ!」
「ヴァグニは鈍感なのかのぉ、その鈍感さも父親譲りかもしれないがぁ。」
と言ってジェモは笑う。
「まだこん中に犯人がいるんだよ?常に気張ってないとオサラバだよ」
ライは少し楽しそうにしている。
「これ、水飲んだからでしょ?」
レイがさも当たり前かのように言う。
「あんたらはたまたま大広間の水飲んでなかったから助かっただけ。水飲ませて殺せばよかったわ」
これには一同の気に触れた。
「ふぉっふぉっ。確かにここでゼウスの変わりに唯一神になれば一国のみならず天界を牛耳れるのぉ」
笑いながらも目だけは冷静であった。
しかし一同はこんな簡単かつわかりやすい殺害方法に疑問を抱いていた。
「水ねぇ…。大結天で出される水っていつも生の神のガキが出してるんだろ」
「エゾルは僕が犯人って言いたいわけね。僕がこんな簡単でわかりやすい殺し方すると思う?ヤるとしたらもっと綿密になるけどね」
と、軽く受け流す。
「まぁそうと決まった訳じゃないし、早いとこ天裁員呼べば?」
「そうですね…」
オーディンはさらに落胆している。
6ヵ国の神々の目は大広間にいる時よりも一層落ち着いた。
殺神者 ヤオヨロズ @8oyorozu
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