第5話 ヤンキーアネゴと真顔少女マイ
夢の中…
「ママ?」
(違う。俺はお前の親じゃない)
「じゃぁ誰なの?」
(俺は…お前の…)
「はっ!」と真顔少女は目覚めた。部屋は小さい豆電球の光で照らされていて、ちょっと暗い静かな空気が流れていた。私はゆっくり起き上がり、窓のカーテンの隙間からこぼれる光を浴びた。この部屋のドアから声が聞こえる。私はゆっくり立ち上がり、そっとドアに耳を当てた。私を怒鳴ってた人ともう一人の声が聞こえる。なんか喧嘩しているようだった。
「だーかーらー!!目玉焼きはソースに決まってんだろがー!!」
「いいや、アネゴ。目玉焼きは醤油に決まってるっす!ソースは邪道っすよ!」
どうやら私のことを話をしている様子ではなかった。
「あーわかった!じゃあ寝ているあいつに決めてもらおうじゃないか!それでいいだろ!」
「いいっすよ!?絶対、醤油ですっから!!」
ガチャ
「あっ!」ゴロン
ドアが急に開いて聞き耳を立てていた私は転がるように転んだ。
「おぉ!起きたんすね!具合は大丈夫すか?」
「う…うん」
「まったく…相変わらず無愛想な奴だな。おら…、イスに座れ」
ちょっと変な空気が流れたが、なんとかやり過ごせた。イスに座って見たら、テーブルの上には、目玉焼きと焼いたベーコンとご飯、味噌汁が用意されていた。色々あってからお腹がへっていた私には、その焼けるいい匂いにつられて、眠気は完全に目が覚めた。怒鳴ってたお姉ちゃんと優しいお姉ちゃんは私にさっきの話について聞いてきた。
「なぁ!目玉焼きにはソースだよな!?」
「アネゴ。脅すのは反則っすよ。醤油っすよね?」
「脅してねぇーよ!ちょっと聞いただけじゃん!ってか、お前も脅してんじゃん!」
「えーそうっすか?え…と、まずはその話はおいといて、名前を教えてもらわないと…すね?」顔をポリポリしながら優しく聞いてきた。
「私の名前は…うん…っと、わかんない」
「あん?わかんねぇーわけねぇーだろ!お母さんになんて呼ばれていたのか、聞いてんだよ!!!」
「アネゴ!落ち着いてくださいって。まだこの子は状況も何も知らない状態なんですし、いきなり怒鳴っても、何も話は進まないっすから」
「チッ。しゃーね、質問とかはマキに任せる。俺は飯を食うっとくし」
「やれやれ…。ん〜そうだなー、まずは自己紹介からしやしょうか!私は須賀田(すがた)マキっす!」
「マキ?」
「そう!気安くマキって呼んでくれていいっすよ!そんでこっちで飯たべてる人は…アネゴの須永(すなが)メメっす!」
「アネゴと呼べよ!クソガキ!」
「アネゴ。くちっくちっ!」
「アネゴって呼べばいいの?」
「そうっすね!メメって言われるの嫌いみたいなんっすよ」
「私、名前…わかんない」
「そうなんすか…そうっすね〜。じゃあ私らで考えてもいいっすか?名前!」
「私の…名前?」
「そうっす!じゃあ〜何がいいっすかね〜?」
「クソガキでいいんじゃね?」ズズズ…
「アネゴ!さすがにひどいっすよ!ちゃんと考えてください!」
「チッ、わかったよ」
「何がいいっすかね〜?呼びやすい名前の方がいいっすよね〜」
なんでこの人たちは、私のためにここまで考えてくれるのだろう。私は…悪いことしたのに…。
「ぁ、『マイ』ってーのはどうだ?」
「おお!アネゴにしてはいい呼び名っすね!」
「そりゃーどういう意味だ〜?あん〜?」
「すっすいませんっす!!」
「マイ?それが私の名前?」
「そうっす!私も考えたんっすけど、マイの方がいいなと、私は思いやしたし、いいと思いやすよ!」
「へっへーん!どうだ!いいだろう〜?」
「アネゴ凄いっすね!なんでマイなんすか?」
「私の書いた絵本の主人公の名前がマイなんだよ!そこからとった!ガハハハー!」
「あ〜そうなんっすねー。まぁとりあえず名前は決まったっすね!今度からよろしく!マイ!」
「うん。マキ、アネゴ」
「飯が冷めてしまいやしたね。まぁ食べられなくはないから食べやしょうか!マイ!」
「うん。マキ」
「ごちそう〜さ〜ん。俺は先にのんびりしとくぜ〜」
「あ!アネゴ!食後に寝ると太りやすよ!」
「いいんだよ〜。俺は体重気にしないから!」
「それは私が体重を気にしていることに対する嫌がらせですか!?」
「わっわかった!寝ないから落ち着けって!」
「たっくもー!」
凄く平和…。そのはずなのに…私の心はまだ暗いまま。私はここにいていいのだろうか…。私は…まだ死にたいと言う気持ちを抑えられないままでいる。外はこんなに明るいのに私の中では、夜がまだ続いているように思えてくる。
ヤンキーアネゴと真顔少女 @hanazonosou
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