第四五話

 無事挨拶も終わり、ラッセルはサラに

「サラ、私と一曲踊ってくれませんか?」

ラッセルはサラに手を差し出すと、サラはラッセルに笑顔を向け

「もちろんです。パレードの時以来だね」

と言って手を取る。二人がホールの真ん中まで歩き出すと、他で踊っていた貴族達の動きが止まる。二人は曲に合わせて踊り出す。

「まあ、なんて素敵なんでしょう」

会場にいた令嬢達からの声が聞こえる。ラッセルとサラはお互いを見つめ合いながらダンスをする。端から見ても、息がぴったりと合っていて、信頼しあっているのが分かる。曲が途切れ二人はお辞儀して離れる。

「サラ、休憩するか」

「そうだね」

ラッセルはサラの手を引き席へと戻る。

「フィン王子の挨拶上手くできたかな?」

「ちょっとしたトラブルがあったが問題無いだろう。サラの良さが伝わったさ」

「そうかな」

夜会も終盤を迎え、終わりを告げる。

「サラ、戻るか」

「うん」

ラッセルはサラの手を繋ぐと、二人は部屋へ戻る。

二人はソファーに座ると

「は~、終わったね」

サラの緊張が解けたのか、ソファーにもたれかかる。

「サラ、お疲れ様だ。良く頑張ったな」

「ありがとう」

ラッセルは、サラにキスをすると、

「疲れたから、もう寝るか」

「そうだね」

二人はベッドに入る。ラッセルは、サラを抱きしめ眠りに落ちる。


朝日が、差し込み二人は目を覚ます。

支度が終わり、ラッセルは部屋から出ると、カイルがやってくる。

「ラッセル王子、フィン王子なのですが、少し滞在したいと申しているのですが」

「フィン王子がか?」

「ええ、この国の勉強をしたいとかで」

「今さらか?フィン王子は以前は外交には興味なさそうにしていたがな」

「次期王になるので、準備では無いでしょうか?」

「そうか。それなら、最大のもてなしをしなくてはな」

「そうなのですが......」

カイルは、話しづらそうに言いよどむ。

「どうした?」

「実はですね、街の案内をして欲しいと」

「構わないぞ。問題は無いが」

「それが、サラ様を指名しておりまして....」

「何っ?サラをか?俺ではダメなのか?」

「ええ、ラッセル王子は忙しいだろうから、サラ様一人での事でして....」

「それで、何と答えたのだ」

「もちろん、まだ返事はしておりません。私が決められる事ではありませんので」

サラが部屋から出で来る。

「少し聞こえたよ。私がフィン王子を街の案内をすればいいのでしょ?」

「いや、だがな....」

ラッセルは、困った顔をする。

「大丈夫だよ。上手く案内するよ?」

「そうじゃなくてだな。俺がいやなんだ」

「ラッセル、考えすぎよ。ちゃんと昨日婚約者だって挨拶した所よ?それに、大切なお客様なのよ」

「まあ、そうたがな」

フィンとオリーがやってくるのが見える。

「やあ、ラッセル王子。昨日はありがとうございました。カイル殿からお聞きだと思いますが、少し滞在しようと思うのです。どうでしょうか?」

「こちらこそ、この国を知って貰えるのはありがたい限りてす。ゆっくりしていって下さい」

「じゃあ、サラ様をお借りしても宜しいですね?」

「い、いや、それはまだ...サラも婚約したばかりでして、そんな大役は私が引き受けますが」

「いいえ、ラッセル王子は忙しくいらっしゃる。サラ様は市民としての生活もしてたとか。案内にはぴったりではありませんか。ねえ、サラ様?」

フィンはラッセルてはなく、サラに返事を求める。

断れるはずがない。

「ええ、私でよければ、ご案内致します」

サラは笑顔を向け返事をする。

「なんと、天使のようだ。サラ様ありがとう」

フィンはラッセルの前で、サラの手を持ち上げ、手の甲にキスをする。ラッセルは苦笑いをし

「フィン王子、サラと打ち合わせ致しますので、またのちほど」

ラッセルはサラの手を引くと

「ええ、待ってますよ」

フィンは余裕の顔を見せ、二人を見送る。


ラッセルとサラ、カイルは、執務室に入る。

「フィン王子、あいつ....サラに触りおって」

サラは、

「挨拶よ。深い意味は無いと思うよ」

コンコンコン。レオが部屋へ来る。

「兄さん、見てたよ。フィン王子、あの人僕と同じ匂いするね。ヤバいんじゃない?先制布告ってやつだね」

「レオもそう思うか」

「間違い無いね。それに、フィン王子って女好きで有名らしいよ?手が早いんだってさ」

「何っ?それは本当か?」

「うん。グレクが言ってたよ」

「しかし、俺は婚約してるんだぞ?」

「婚約では弱いよね。サラ姉さんが、フィン王子がいいって言えば婚約破棄して終わりじゃない?」

「だが、友好関係が崩れるだろ」

「向こうは、この国だけと友好関係を結んでる訳じゃないからね。それに国土の大きさも全然敵わないからね。余裕なんじゃない?」

ラッセルは、黙り込む。

「ちょっと、勝手に話しを進めないで。私は、ラッセル以外好きにならないし、ただの街の案内よ?」

ラッセルとレオは顔を見合せ、ため息をつく。

「分かってないな.....」

「そうだね。とにかく忠告はしたからね」

レオは部屋から出て行く。

「しかたないが、今回はサラに案内をしてもらうが、くれぐれも気をつけるんだぞ」

「大丈夫。任せて」

サラは初めて自分に任せてくれる事に喜んでいるようだ。

ラッセルは、サラには内緒でヒューに姿を変え後をつける事を決めたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

捨てられた令嬢 coo @cookoo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ