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◇聖ニコラオスの末裔・ニールセン家

 遠祖「奇蹟者聖ニコラオス」(Άγιος Νικόλαος ο θαυματουργός:アギオス・ニコラオス・オ・サヴマトゥルゴス)は古代東方アナトリアの大主教、聖人。

 彼が修道誓願前に結婚して儲けた子、ニコラオス・オ・ネオテロス(Νικόλαος ο Νεότερος/小ニコラオス/ニコライ2世)が、長じて北方ノルゲの地のさらに北辺境・トナカイ遊牧民族サーミ人の地に移住、その地で妻帯司祭となり、永眠後は子供の守護聖人として崇敬される。

 彼の遺した子孫がニールセン一族となり、代々の家長が「ニコライ」を襲名する。 

 女系先祖はサーミ人出身。

 ノルゲ王国の北辺境に総本家があり、世界数多の国々に分家がある。

 Nielssen→「ニールスNiels(ニコラオス)の息子(子孫)」の意。

 一般には「ニコライさん」という通称で知られ、いわゆるサンタクロースと同様の伝説が信じられている。

 幻獣としてのトナカイの牽く魔法の空飛ぶ橇を乗りこなし、降誕祭の前夜~未明に、主に親からプレゼントを貰えない孤児などに、その者が強く欲したものを魔力で具現化して、寝ている間の枕元にプレゼントを贈る能力を持つ。

 なお、魔法のトナカイと橇は一般人には見えなくすることができ、それに乗った者も同様に一般人の目に見えない状態となる。


◇クラウス一家

*クラウス・ニールセン(Klaus Nielssen) 38歳 ニコライ養育園の園長。1児の父。帝国領邦ベーメン王国におけるニコライ53世見習い。

 Klaus→ニコラオスのドイツ語などにおける短縮変化名

*ノエル・ニールセン(Noëlle Nielssen) 9歳 クラウスの一人娘。孤児ではないが、父とともに孤児院で過ごしている。

 Noëlle→Noël:フランス語「降誕祭」より

*ナタリー・タンネンヴァルト・ニールセン(Natalie Tannenwald Nielssen) クラウスの妻。3年前に30歳で病死。帝国自由都市ネンベルヒの出身。

 Natalie→natalis:ラテン語「誕生日」(降誕祭)より/タンネンヴァルト(旧姓)→「もみの木の森」の意

*ミクラーシュ・ニールセン(Mikuláš Nielssen) 65歳 クラウスの父。ベーメンにおけるニコライ52世、ベーメン・ニールセン家の現家長。

 ミクラーシュ→ニコラオスのチェコ語


◇ニコライ養育園

Nikolai-Waisenhaus:ニコライ=ヴァイゼンハウス/Nikolajský sirotčinec:ニコライスキー・スィロトチネツ

 プラーク市の場末に建つ私立孤児院。代々ニールセン家が家族運営し、市の助成金と私的寄附金で成り立っているが、慢性的な財政難。

 70年もの歴史があり、かつては多くの入寮生がいたが、衰微が著しく、現在ノエルを除いて入寮生15人。

 下級生:6歳~12歳(小学生)の男女と、上級生:12歳~15歳(中学生)の女子を養育。

 学校は大半が近所の普通公立学校に通学。

 平日にはバイトのおばさんも通勤してくるが、多くのことをクラウス園長が一人で切り盛りしている。

 炊事・洗濯などは上級寮生が分担して行っている。


◇アンスバッハ楽団

Ansbach-Kapelle:アンスバッハ=カペレ/Ansbachova kapela:アンズバッホヴァ・カペラ

*ゼバストゥス・アンスバッハ(Sebastus Ansbach) 45歳 プラークの片隅に建つ聖トーマス教会の楽長(作曲家、オルガン奏者、指揮者)。そう大きくない教会の楽長ながら、この話の前年、帝国全土から腕利きの音楽家が集まって腕を競うヴァルトベルク音楽祭で、パンドラ達冒険者と共演して優勝を勝ち取った戦友。ヨハン・ゼバスティアン・バッハがモデル。

*アンナ・アンスバッハ(Anna Ansbach) 16歳 ゼバストゥスの一人娘。少女ながらも下級聖職者で、助祭ディーコンの資格を持つ。父ゼバストゥスとともにヴァルトベルク音楽祭で冒険者達と共演した。少年少女聖歌隊の指導役として慕われている。幼い頃に母を亡くし、父ゼバストゥスとの二人家族である。J.S.バッハの二番目の妻、アンナ・マクダレーナ・バッハが名前の着想。

*楽団 少年少女と修道士・修道女からなる聖歌隊と管弦楽隊を持つ、教会専属楽団。規模は大きくなく財政的にも豊かではないが、楽長ゼバストゥスの手腕によって、見事な練度に仕上がっている。


◇地名とモデルの地

*ベーメン王国(Böhmen) ボヘミアのドイツ語読み。チェコの旧名。「王国」とはいっても独立した国ではなく、「帝国領邦」、即ち、大小数多の領邦から成り立つ連邦制である西方帝国ヴェスターライヒの一構成国(といっても、「選帝侯国」かつ領邦としては唯一の「王国」という、最高格の領邦)である。王位は、帝都ヴィエンナ(ウィーンがモデル)に君臨する皇帝が同君連合として兼務しているため、一定の自治権はあるものの実質的には帝国直轄地である。

*プラーク市(Prag) チェコの首都プラハ(Praha)のドイツ語読み。帝都ヴィエンナ市と並んで帝国随一の大都市。チェコ人のみならずドイツ系住民も多く住んでおり、チェコ語と並んでドイツ語が広く通用している。ベーメン王国の首都かつ副帝都として、帝国自由都市に準ずる格と高度な自治権を持つ大都市であるため、その首長は通常の都市の「市長」(Bürgermeister:ビュルガーマイスター)ではなく、勅任官たる特別な地位として「市知事」(Stadtgouverneur:シュタットグヴァヌアー)と称される。

*ネンベルヒ市(Nämberch) ドイツ・バイエルン州北部フランケン地方の都市ニュルンベルク(Nürnberg)の現地語・上部フランケン語読み。「帝国自由都市」、すなわち他の領邦に支配されず、市ひとつで一領邦と同格の独立性を持った都市であり、ヴィエンナ、プラークに次ぐ帝国屈指の大都市。降誕祭市場ヴァイナハツマルクトで有名。

*ノルゲ王国(Norge) ノルウェーの現地語読み。帝国に従属しない北方の独立国。北辺境にはトナカイ遊牧民族「サーミ」の民が住む。

*ルーシ帝国(Русь/Rusʼ) 西方帝国の北東・寒さ厳しい北の大地に広漠な領土を持つ、いわば「東方帝国」ともいうべきもう一つの帝国。ルーシとは、ウクライナ・ロシア・ベラルーシ三ヵ国の根源となった東スラヴ民族の古称。ここでは、それらを包括統治したロシア帝国がモデルの地。西方諸国とは趣の異なる文化と独自の教会伝統を持つ、東方諸国の盟主的存在。

*アナトリア(Ανατολία/Anatolia) 現在のトルコ共和国の大部分にあたる地。古代にはギリシア系住民が多数で、初期教会の揺籃の地として多数の聖人を輩出した。


◇作中引用の歌詞について

・『もみの木』和文詞:作詞者不明(パブリックドメイン)

 登場:二、孤児院訪問


・『ジングルベル』(和文詞)作詞:鳥位名 久礼(作者の独自意訳)

 登場:「九、奇蹟者の血脈」/「十四、いつまでも」


 走れそりよ 雪を分けて

 夜空を越え はるか高く

 心躍り 鈴は響く

 喜びの歌を ともに歌おう


 ジングルベル ジングルベル 鈴の音よ

 野にも里にも 響き渡れ

 ジングルベル ジングルベル 鈴鳴らし

 光の訪れ みな祝え


 その他

・和文文語歌詞:古典的な聖歌・讃美歌の引用(パブリックドメイン)

・原語詞に付随した和文口語による対訳:作者の独自訳

 “Ave Maria”『めでたしマリア』(登場:「十四、いつまでも」)等


*作者の独自訳に関しては、下記のライセンスの範囲内で、ほぼ転用自由です。

 クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際

 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja

・ご質問・ご連絡等は作者の個人サイトよりどうぞ https://kapelle.triona.jp/

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降誕祭の使い人 鳥位名久礼 @triona

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