第48話 彩奈と恵の軌跡
夏休み。
高校最後の夏休みは、全然休めない夏休みだった。
しかし不満はない。だって忙しいのはありがたい事だ。
夏のライブは仙台・東京×2・大阪×2・名古屋・福岡の計7回行われ、無事にすべての公演を終わらせた。
ドームツアーとかだったらカッコいいんだけど、まだ俺の実力と知名度だと、2000人規模のホールで精一杯だろう。
春から夏にかけて、歌番組やトーク番組、あとラジオなんかにも出演し、とにかく名前を売り込めと頑張った結果、どの会場もチケットは売り切れた。
事務所が、相当頑張ってくれたんだなと感謝している。西野さんに感謝。
「チケット代、グッズの売り上げで相当儲けたよ」
社長から臨時ボーナスを貰った。やったぜ、社長愛してる。おじさんだけど。
とにかく芸能活動は順調すぎる位に結果を残せた。
彩奈はモデルの仕事の他に、CM出演・映画出演で忙しそう。
前回の映画はヒロインの妹。今回はヒロインの親友という役。前回より出番やセリフが多くて、結構大変みたい。でも本人は楽しそうにやってる。
「いつかは私がメインヒロインよ」
メインヒロインは、キスシーンや濡れ場があるだろ。それは嫌だ!
「仕事でしょ。我慢しなさい。本当にエッチするわけじゃないんだから」
でもキスはするよね。女優の通る道だとしてもショックだ。キスの撮影前と撮影後に100回キスしてやる。
恵はモデルのバイトをしている。
本格的に活動はしているわけじゃないが、衣料品店やスーパー、ファッションモデルを少々。
大学進学の為に勉強もあるから、そこまで一生懸命に仕事はしていない。
俺や彩奈は完全に芸能入り。恵はモデルを続けながら進学と、進路は別れてしまった。
ただ、会えなくなるかと言えばそんなことはない。高校卒業後は大きめのマンションを借り、そこに3人で住むつもりだ。
そして3人が一緒になるための大事な法律。複数の配偶者を持つことが可能になるあれ。
俺たちが成人を迎える頃には可能になってるはずだ。それまでに収入・貯金・知名度をUPさせて、国の審査をクリアしてやる。
親たちにはまだ話をしていないが、薄々感じているかもしれない。だっていつも3人で一緒にいるしいね。3Pしてるのもバレてるだろうし。
卒業式
俺たちは無事に3年生を終えることができた。
校長や教育委員会のお偉方の話を聞き、壇上で卒業証書を受け取った。
厳かな雰囲気の中での式だが、俺が卒業証書を受け取った時は、会場の女子生徒から”千秋くんおめでとう””千秋君愛してる””好き!”などの黄色い声援が飛び交った。壇上から振り返り、口元に指を立ててシーッの合図。
女子生徒たちは静かになったが、校長先生には悪いことしたな。
彩奈が卒業証書を受け取るときは、野郎どもが”彩奈ちゃーん、おめでとう””結婚してくれ””好きです”等、俺と同じような声が上がった。
先生も苦笑い。校長も苦笑い。俺は怒ってる。だって彩奈は俺の女だからな。
それからは特に波乱もなく卒業式は終わった。
最後に教室により担任に挨拶をする。
「一年間お世話になりました。先生のおかげで楽しい高校生活を送れました」
「上原はと安西は芸能の世界で生きていくんだな。将来、大スターになった時の番組で、学生時代の恩師って役で俺が出演してやるからな」
「その時は是非お願いしますね。俺たちの品行方正だった学生生活を話してください」
笑いながら先生と握手をした。
その後は他のクラスの生徒も含め、写真を撮ったり握手をしたりして時間は過ぎていく。
校門をでる。
3年間の色々な思い出がここにはあった。
彩奈と出会い結ばれ、恵と絆を深めた高校生活。嫌なこともあったが、それ以上に楽しく思い出深い3年間だった。
「彩奈、恵、そろそろ行くか。今日で高校は終わりだな。今までもそうだけど、これからも3人力を合わせて生きていこう」
「千秋と彩奈は社会人だけど、私は学生なんだよね。2人が仕事で家を空けるときは、私が家を守るからね。安心してちょうだい」
「そうね、恵が守ってくれるから私たちも存分に仕事ができるわ」
「そうだな」
もうマンションは借りてある。恵の大学や俺たちの事務所にも近い2LDKの綺麗なマンションだ。
荷物は少しづつ運び込んでおり、家具も3人で揃えた。
各家庭の親も俺たち3人での同居生活に反対はなかった。それぞれの親が3人の仲の良さを知っていたからかな。
もちろん社会人としての責任を、2人のお義父さんから語られた。拳じゃなかったのでOKだろう。
重婚可能なのを理解してくれているんだと思う。ありがとうございます。
3月末に3人揃って新居に入る。
3人で入居パーティー。色々なご馳走を作り、乾杯をした。未成年だけど1杯だけシャンパンを飲んだ。美味しい!?かは微妙だけど、記念だからね。
そして新居で初エッチ。これは盛り上がった。
新しい自分たちの家で心置きなくエッチができる。防音もある程度しっかりしており、2人はかなり乱れた。俺もずっと腰を振り続ける。
途中、あまりの快感の連続で彩菜の意識が飛びそうになってたが、構わず腰を振った。だって止まんないよ。
夜中まで続けられた狂宴に、2人が立てなくなるほど俺を刻み込んだ。
やり疲れて幸せそうに眠る2人を見ているとまた元気になる俺。ええ、続けましたよ。寝てる2人を存分に味わいました。
新しい生活の始まり。住む場所が変わるだけでこんなに幸せな気持ちになれるなんて。
彩奈と恵がノートに何か書いている。
「何それ」
「私たち日記をつけることにしたの」
「長いと大変だから一言位のやつ。長くても2~3行にするよ」
「俺も書こうかな」
三日坊主になるからやめとけと言われてしまった。
成人式。
3人揃って式に出たかったけど、俺は仕事で出られなかった。
2人からは、随時写メが送られてきたけど、周りに沢山いる男共が気になる。彼女たちが人気なのは理解できるし、逆の立場になればしょうがないこともわかる。でも気になっちゃんだよ。はぁ、なんか情けない男だな。
後日、3人で記念の写真を撮った。彩奈の仕事のつながりで、腕のいいスタジオのカメラマンに依頼をしたのだ。写真はすばらしい出来だった。壁に飾っておこう。
ある夜。
彩奈と恵の両親に結婚の許可を貰いに行った。
まず彩奈の家。お義母さんは大喜びだったが、お義父さんは実に辛そうだった。娘の幸せの為と分かっていてもダメなんだろう。わかる。俺が父親だったら同じ顔するだろう。
彩奈を絶対に幸せにしますと自分の言葉で伝えた。お義父さんも、娘の事をどうかよろしくお願いするとOKは貰えた。
恵の家はすんなりといった。ご両親とも付き合いは長いし、普段から顔を合わせていたからだ。こんな娘でよければこちらからお願いしますと言われた。俺が恵と一緒になりたいんだと言葉にする。
いきなり奥さん2人とか幸せすぎかよ。
ある春の日。
今日は俺たちの結婚式。3人と、その家族だけの小さな結婚式。
事務所からは盛大に結婚式をやれば?と言われたが、身内だけの小さな挙式にしておいた。だって俺はボロ泣きするぞ。
場所は沖縄。そう、修学旅行で宿泊したホテルを利用したのだ。もう随分前だと言うのに、色々と覚えているもんだ。
敷地内のチャペルで挙式。青い海をバックに俺たちは永遠を愛を誓う。2人に指輪をはめて誓いのキス。
今まで何回もキスをしているのに、もの凄く緊張した。そして、俺はボロボロと涙を流している。だって2人との結婚だぞ。
新婦じゃなくて、新郎が号泣とか恥ずかしい。身内だけの結婚式でよかった。”泣き虫千秋”と千尋にずいぶんと揶揄われてしまった。お前が結婚するときに仕返しをしてやろうと心に刻んだぞ。
今日、俺たち3人は正式に夫婦となったのだ!
その晩、ホテルの部屋での初夜。今まで何百回もやってるが、夫婦になって初めての夜。
部屋はスイートルームを勧められたが断った。選んだのは一般の小さな部屋。そう修学旅行で彩奈と恵が泊った708号室。思い出の部屋だ。
「懐かしねー、何か色々と思い出すよ。千秋が私たちにエッチなことした部屋だ」
「部屋の内装ってこんな感じでしたか?ぼんやりとしか覚えてないの」
「たぶんこんな感じ。ベッドの配置とかも変わってないと思うよ。そこのベッドで2人を抱いた記憶がある」
今夜も抱くよ。しかも今夜のスペシャルコスチューム。
「ウェディングドレスで着たままするのかしら。千秋は変態さんね」
「これは男の夢。レンタルじゃなくて買い取ったのはこの為だ。このドレスが擦り切れるまで使ってやる。擦り切れて使えなくなったら、また新しいドレスを買うから」
「千秋はウェディングドレスマニアなの?高校の制服じゃ満足しないのかしら」
「どっちも好きだから」
その夜は、いつもの3倍は楽しんだ。こんなの止められねーよ。枯れるまでやり続けるだろ!
ある秋の日。
分娩室に赤ん坊の泣き声が響く。ガラス越しに声を出して泣く我が息子の姿が。そしてベッドの上でドヤ顔でピースサインをする恵。
俺の子供が生まれたのだ。
「恵、グッジョブ!」
「恵、おめでとう。元気な男の子よ」
「えっへん、あたし頑張った。元気な赤ちゃんだよ。ほら、こんなにちっちゃな手でパパやママを探している」
俺のDNAを引き継いでるんだろ?すごくないか?マジ、やべぇ。抱っこさせてもらったが、赤ちゃんは小さくて抱っこが怖いよ。
「お前も大きくなったらパパみたいになるんだぞ」
やったぜ、家族が増えた!これからもどんどん増やしていくぞ。
ある夏の日。
俺と、赤ちゃんを抱っこした恵は、病院の分娩室にいた。
「彩奈が心配してた。ちゃんと子供を生むことができるかなって」
「俺に言われてもわからないよ。経験者の恵のほうが詳しいだろ」
それでも励ますのが夫の仕事だろって蹴られた。痛い。
「必死になって頑張ってたら、いつの間にか終わってたからね。私もあんまり覚えてないんだけどさ」
お、赤ちゃんの泣き声だ。
看護師さんに分娩室へ入室を促されたので入っていく。
赤ちゃんを2人抱いた彩奈がベッドにいた。
「双子の女の子か。彩奈、頑張ったな。この子たちは将来パパと結婚するだ」
赤ちゃんの泣き声がサラウンドで聞こえる。
「我が家もだいぶ賑やかになるな。うんうん、いいことだ」
「彩奈はお仕事からあたしが家を守るよ。まかせておいて」
恵の頭を撫でてやる。
「頼んだぞ、恵が我が家の守護神だ」
「彩奈もよく生んでくれた。ありがとう」
彩奈にそっとキスをした。
ある冬の日。
今日は俺も彩奈も仕事が休みである。
あれから恵は次男、彩菜は三女を生んだ。我が家は8人家族である。
長男:千春 次男:千冬
長女:亜理紗 次女:絵里 三女:霞
子供はいいな。
「なぁ、霞はおっぱい欲しがってないか?」
泣きだした霞を、抱っこしながら彩奈を呼ぶ。
「霞ちゃんはお腹が空いたのかな?おいで」
彩奈は服を脱ぎ霞を抱いて授乳する。俺も隣で正座待機。頃合いを見計らって、もう片方の乳房に吸い付く。
「千秋は飲みすぎないで。霞の分がなくなるから」
「おっぱいはパパの物だ」
「赤ちゃんの物よ」
恵も話に加わる。
「あたしのおっぱいも子供より飲んでた気がする」
「愛する妻のミルクだ。飲むに決まってる。体にいいはずだ。だって風邪ひきにくくなったし」
「でも千秋は飲んだ後大変になるからねぇ。そのまま次の子供を孕ませようとするじゃん」
「だって我慢できないよ。男ならみんなそうだよ。可愛い妻の母乳を飲んだら我慢できなくなるよ」
恵も彩菜の呆れ気味。
我が家はいつもこんな感じです。
ある年末。
「もう、子供たちも独立したな。家に残るのも俺たち3人だけだ」
「あら、寂しいの?最初に戻っただけじゃないの。のびのびできるわよ」
「そうだよ、千秋は寂しがり屋だね。ほら、よしよししてあげようか」
恵に頭を撫でられる。
「寂しいよ。あんなに騒がしかった家が静かになったからね。寂しいから毎晩2人を抱いていい?」
「またー、千秋はすぐエッチしようとするんだから」
「出会った頃から変わらないですね。千秋はエッチ。それも相当な」
「2人が魅力的すぎるんだよ。2人を見てると本能が疼くんだ。もっと子供産んでもいいんだよ」
高年齢出産になるのか?2人ともまだまだ若いんだから平気じゃないのかなぁ。
3人で励んでいるときに思った事。
「子供も巣立って3人だけなんだから、昔みたいに大声でよがってもいいんだよ。2人の声を聞かせてほしいな」
「バカ」「エッチ」
その後、2人には存分に声を出させてやった。
ある春の日。
俺たちは伊豆にきている。
昔、まだ彩奈と恵が友人だった頃、この海に遊びにきたのだ。
その時に、泊った友人の別荘のすぐ横に、俺たちも別荘を建てたのだ。30才の頃である。この別荘には、子供を連れてしょっちゅう遊びにきたものだ。
庭に置いた椅子に座って海を眺める。年をとって目が悪くなり、景色もまともに見えなくなった。
だから、余計に頭の中の記憶が瞼に浮かぶ。若い体の俺たち3人が海で遊ぶ姿が。2人とも綺麗だ。
俺の両サイドに座る彩奈と恵。2人の手を握る。もう体は思うように動かない。立ち上がるのもおっくうだ。
これだけ長く生きてればしょうがない。逝く順番は俺が最初だ。先週、子供達にはもうお別れをしてある。最後は3人がいい。
「今日はいつもより調子がいい。なんか燃え尽きる前の蝋燭みたいだね」
「馬鹿なこと言わないでください」
「千秋はやっぱり千秋だよ。一人で変なこと言って。逝くならあたしたちも連れてってよ」
「こういうのは順番だ。俺が向こうで家を用意しとくよ。彩奈と恵があの世来たら、また3人で暮らそうな。俺たちはいつも一緒って約束したよな」
そろそろかな。すごく眠いんだ。寝たらもう起きれない気がする。
「眠い」
「そう」
「うん」
「彩奈、恵、お前たちに会えて俺の人生は最高だった。幸せだった」
両脇から2人に抱かれ意識は徐々に落ちていく。
まて、まだだ。最後に力を振り絞る。
「…あり……が…………と…う」
ある秋の日。
千秋が逝って1年半。
「ねぇ、恵は寂しくない?私は寂しくて辛いわ」
ベッドに横になりながら、横で椅子に座る恵に聞いてみた。
「寂しいよ。人生のほとんどは千秋といたんだから。でも千秋に頼まれた。彩奈の事、子供たちの事」
「ふふっ、恵はそういうとこが真面目ね。子供は自立してるし、私はもうすぐ千秋の所に逝くわ。最後をまかせちゃってゴメンね」
「いいよ。家族だし。彩奈には感謝しているから。彩奈と千秋の幸せの他に、私の幸せも見つけてくれた。先に逝って千秋と一緒に家の掃除でもしていて。千秋は絶対に片付けができないから」
「そうね、掃除のしがいがありそうだわ」
「あっちでも元気でね。私は彩奈と家族になれてよかったよ」
「私もよ。あ、恵にお願いがあった。私の日記をお墓に入れて。あなたも入れるでしょ?あなたが死んだら、私の分と合わせてお墓に入れましょう。あっちで千秋に見せてあげましょう」
「わかったわ」
それから2日後に彩奈は逝った。
初夏。
「千春、あなたにお願いがあるの」
「なんだよ母さん」
「他のみんなも聞きなさい」
子供たちを集めて話をする。
「母さんね、もうすぐ寿命が尽きるわ。なんとなくわかるのよ。千秋も彩奈も死ぬ前に言っていたわ。もうすぐ旅立つって」
子供たちの顔を一人一人見る。愛おしい私の子供たち。
「あたしと彩奈母さんの日記があるの。私が死んだら一緒にお墓に入れて頂戴」
「焼かなくていいのかよ」
「ダメよ。せっかくなんだから焼かないであの世に持っていくわ。千秋に見せてあげるの」
「父さんは自分のことが書いてあるから、きっと恥ずかしいって転がりまわるよ」
「そうね。それかキスをして誤魔化すと思うわ」
「わかったよ。墓に入れる」
「この日記はね。私と彩奈母さんの人生が綴ってあるの。千秋と会って、彩奈ママに会って、あなたたちを生んだ人生。最高に幸せだった人生よ」
そう、二人の軌跡。千秋を入れたら三人だけど、あの人は日記がないから二人。
彩奈と恵の軌跡。
次の日、私も旅立ちの時がきたようだ。
懐かしい気配。
千秋と彩奈が傍まで迎えにきている。
「お迎えありがとう。久しぶりね2人とも。元気にしてた?」
完
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読んでくださってありがとうございます。
この話はここで終わりです。
最後は駆け足でした。すまん。
少し充電期間をとり次回作へ。
ありがとうございました。
二人の軌跡 @250mg
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