血を統べる鬼

@momoasi

第1話 いつも通りの日々

シッシッ

剣が鋭く振るわれ、空気を裂く音が規則正しく鳴り響く。

騎士団の修練場。その裏手の空き地で剣を振るうものが居た。

空き地には丸太が一本地面に刺さっており、これを囲むように木柵が立っている。近くには川があり、

せせらぎの音が心身に心地良く染み入る。

陽は暮れており、世界が橙色に染まって見えた。

規則正しく剣を振り、その身に感覚を馴染ませる。

センラが小さな頃から行ってきた習慣だ。


「センラ、今日も精がでるな」


にこやかな表情をしながら男がこちらに来る。年の頃は五十くらいか、しわが刻まれた顔にはしかし全く衰えを感じさせない威厳を纏っていた。

男はこちらに来ると汗拭き用の布を取り出した。


「ガインさん。見てたんですか?」

驚いて見返す。まさかこんな時間まで鍛錬をしていたわけではあるまい。この威厳を纏った男はこの陽光騎士団の中でもかなりの実力を備える強者だった。


「いや、なに。たまたま近くを通っただけだよ。」

人懐こい笑みを浮かべ、ガインが答える。

「他の皆は鍛錬も終え、夕食の準備をしているぞ、センラはまだ続けるのかい?」


「はい、昔からの習慣ですし、それに」


「それに?」


「少しでも強くなりたいんです。そして、一人でも多くの人を救いたい。」


少年は、強い決意が漲る目をしていた。


王国歴1017年

世界は吸血鬼によって蝕まれていた。


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