ファックション

はじめて二人きりで逢った夜、私はいーさんに触れたくて仕方なかった。


ハンドルを握る手が煙草を求めてさまようとき、どれほどその手を自分の方へ引き寄せて…


 


ファックション!


 


 短い時間のドライブが永遠に続くといいのにと、切なくなるくらい願っても、いーさんは平気な顔で駐車場に車を乗り入れるから、私は悲しくなって…


 


ファックション!


 


お願いがあるんですけど・・・


 


 私は思いなおして自分の手のひらを、いーさんに差し出す。


 


 この上に手を出してください。


 


いーさんは面白そうに笑って、


 


はい、どうぞ。


 


・・・と、手を重ねる。


 


 初めて触れるいーさんの身体…


 


ファックション! 


 


 思いのほか柔らかな肌としっかりとした手の平の…


 


ファックション!


 


 手の温かみが溶け合って、二人の境目が…


 


ファックション!


 


 


素敵だね


 


・・・と、いーさんが言う。


 


そうだね。


 


・・・と、私が…


 


ファックション!


 


 


 いーさんの目が、今日は私だけを見ていてくれる。


 


 もうそれだけで…私は…ファックション!


 


ファックション!ファックション!!ファックション!


 


 


 


 


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日々の営み千夜一夜物語 いち菜 @you0532

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