第18話 令和弐年の三月二十九日は『異世界転生もの』をやってみる②

 画面を開いて翔子は愕然とした。

「これだけ……?」

「足りませんかね……?」

「足りませんね……」

 画面にステータスを開くアイコン等は無い。自分たちを三人称視点で見ている様子だけが見えている。

「ねえ、操作については何か仕様書ってあるの?」

「ありませんね~」

「最初会った時、ステータスがどうって言ってたよね? それは開ける?」

「お待ちくださいね~……」

と言いながら、女神は五分十分と端末をいじるも一向に開かない。女神は直感で操作しているとしか言わず、のんびりと操作していた。

「急げないの?」

と横から声を掛けても、女神はう~んとか、あれ~とか繰り返すばかり。翔子は女神の持つ端末画面を奪い取り、操作をすることに決めた。タブレット端末に映るのは、RPGにそっくりの画面だった。


 翔子は基本がカメラモードであることを理解し、左隅を抑えるとその場でカメラを固定、そうしながらもう一方の指でタッチさせるとカメラを360度移動ができることを見つける。そこから自分を正面から見えるように画面に収めて、自分の顔を長押しして選択状態に移行させ、その状態からスワイプを開くことでようやく自身のステータスを開くことができた。

「で、確かに死亡……。これ死亡っていうか、ロストって書いてあるね。」

「本当ですね~。何が違うんでしょうね~?」

 女神が根本的に役に立たないことを理解した翔子は、試しにロストと言う文字を長押ししてみるも、何の反応もなかった。

 いったん画面を戻――戻すにも画面外ダブルタップを毎回必要とするのが面倒だった――として、画面内で別のメニュー画面を探すことになる。

 裏返してみたりする内に、画面の中に明らかに別の生物が映り込んだ。

「今の何!?」

「なんでしょう初めてみました!」

 女神と画面を覗きこむと、キューピッドのようなキャラクターが一人画面に浮かび上がっている。翔子は画面のその天使をタッチすると、画面の中に吹き出しが表れて、そこにはこう書いてあった。

『何かお困りのことはありませんか?』

女神は横で歓声をあげる。

「わぁ! こんな便利な子が!」

おそらくヘルプの補佐キャラクターであろう。翔子はイルカを思い出していた。ゆえに、その使いにくさも。あまり期待しないで声をかける。

「状態異常、ロスト」

音声認識が通じたのか、天使がアクションを取り、新しい吹き出しを表示させる。

「データ破損の恐れあり。上書き及び更新ができない状態」

こう返事がある。

翔子は成る程と呟きながら、頭を捻る女神をよそに様々な質問を天使に投げ掛けるのであった。

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令和弐年の三月十一日は『異世界転生もの』をやってみる① 一塚 保 @itituka_tamotu

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