勇者の魂

勇者狩りで捕らわれ

危うく火刑にされるところだった

幼馴染みの友人サンタナを、

何とか助け出すことが出来た

成りすまし勇者ビー・フライ、

もとい義賊のペテロ。


魔王軍の追手を撒き、

身を潜めた森林で

生涯の友と今生の別れを惜しむ。


サンタナとは幼い頃を

兄弟のように共に過ごした仲、

今はお互いにそれぞれの道を歩んではいるが

義兄弟の絆をペドロは忘れたことはなかった。


ペドロとサンタナは

義兄弟として別れの抱擁を交わす。


「ありがとう、ペドロ」


「なに、いいってことさ、

俺達は兄弟じゃないか」


今日を境に自分は勇者として生きて行く、

もちろん成りすましではあるのだが、

これからは魔王軍の追手との

戦いの日々となるだろう、

サンタナと生きて会うことも

おそらくもうない、

ペドロはそこまで覚悟を決めている。


「俺はこのまま

北の山脈まで逃げる、

だからお前はそのことを

魔王軍の連中に伝えるんだ」


成りすまし勇者は、

自ら追われる身となることを選んだのだ。


「どうやら連中は、

俺が真の勇者だと分かったようだからな、

俺がこの街から離れて逃げ回れば、

奴らも俺を追って来て、

しばらくはこの街に寄り付かないだろう」


しかし幼い頃からペドロを知っている

サンタナからすれば、

本当にペドロが真の勇者であるとは思えなかった。


「お前、本当に勇者なのか?」


助けられたサンタナは

ペドロに問う。


「……あぁ、間違いない、

俺は勇者になったんだ……


転移して来た勇者の魂が

俺に宿ったんだっ……」


ペドロはサンタナにそう言ったが、

当然それは嘘である。


本当は悪魔と契約して

勇者と同等の力を得て

勇者に成りますしているに過ぎない。



しかし、

勇者の魂とは一体何なのか?


個々に、各人の魂があり

勇者にも魂があるというのは当然のことだが、

勇者の精神性を概念として

勇者の魂と呼ぶのなら、

彼もまた勇者であることに間違いはない。


正しい勇者として、

勇者の志を持ち

勇者らしき行いをし

勇者であり続けようとする、

勇者として努力し続ける。


どこぞの勇者よりも

はるかに勇者らしい勇者と言える。


ペドロは勇者なのか、

それともただの成りすまし勇者なのか。


-


その頃、

この世界にやって来た本当の勇者は、

未だ母の胸でスヤスヤと

寝息を立てて眠っていた。


神々は魔王軍の勇者狩りを予見し

その包囲網から逃れる為に、

転移と偽の情報を流して

この世界の真の勇者を

転生させていたのだ。


神々からすれば

人間の被害者が出ることは想定済みであり、

そこまでしてまでも魔王軍の目を欺き

真の勇者を守りたかったということになる。


したがって、真の勇者が、

勇者として覚醒するまでには

少なくとも後十年以上は掛かるだろう。


それまでの間、

勇者ビー・フライは

勇者の代行者として

魔王軍と戦い続けなくてはならない。


果たしてペドロは

それまで生き残ることが出来るのか。






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ビー・フライ、悪魔の力を借りて勇者に成りすます義賊 ウロノロムロ @yuminokidossun

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