鍛錬篇
第11話・ニュートン式鍛錬
「準備万端かね?」
平賀源内は歴坊に尋ねる。
「はい。強くなって、少しでもヒストのメンバーの戦力になります。」
その答えを聞いて、源内は笑顔を見せる。
「じゃ、バイクにまたがって。」
「これに?」
源内と歴坊の目の前には、電動バイクがある。
「何か不満か?」
「その……安全運転で。」
源内は大笑いする。
「安心せい。安全運転で行くぞ!」
源内の言葉と裏腹に、電動バイクは安全運転とは言えぬスピードで走っていた。
「安全運転じゃない!!」
今にも歴坊は倒れそうだ。
「文句は言うな!」
「文句言います!電気は調節出来るんじゃないんですか?」
それは昨晩、酒場にて源内によって、源内の”偉能力”について説明を、歴坊は聞いた。
「もっととばすぞ!」
「やめてください!!」
歴坊はバイクから降りるなり、足元に吐いた。
「見えない所で吐け。」
「悪魔だ。」
「まぁ、鍛えがいがあるぞ。ほら、目の前を見てご覧。」
歴坊と源内の目の前には一つのオンボロ研究所があった。
「研究所?場所間違えました?」
「いや、ここで合ってる。」
源内はオンボロ研究所のドアを軽く叩く。が、そのドアはミシミシと音をたて、後ろに倒れた。
「いい加減、新しくすればいいものの。」
「エコですよ。えーエコ。」
オンボロ研究所の中から一人の男が現れた。白衣姿で、何故か髪の毛には葉っぱがあちらこちらに付いている。
「源内さんですか。えー源内さん。」
「コイツが歴坊君を鍛えてくる人だ。」
「はい、私はそう、”アイザック・ニュートン”、誰もが認めるクレイジーサイエンティスト!」
少し間が空く。
「間が空いてしまった。間が!」
ニュートンはガクッと崩れ落ちる。
「源内さん、ふざけてるんですか?」
「ふざけてるのはコイツだ。」
「そう、私はふざけている!」
また、少し間が空く。
「では、ここから真剣にしよう。歴坊君、話は聞いているよ。それにしても……」
ニュートンは歴坊の周りをグルりと一周、そしてまた一周する。
「なるほど……源内さん。」
「何だ?」
「この子……」
三人は唾を飲む。
「男か。」
「えっ?」
「まさか、女!」
「いや、そういう事では……」
「すまない。レディーに。」
源内は歴坊の肩を叩き、二人はニュートンとは距離をとり、ニュートンに対して、背を向けてコソコソ話す。
「すまない。色々。」
「帰りませんか?」
「バカ言うな。それと預ける前に言う事があった。」
「本当にここで鍛えるんですか?」
「もお決まった事だ。歴坊君の正体はアイツに言ってない。これからも簡単に外部に歴坊君の正体を話すなよ。」
「分かりました。でも、帰りましょうよ!」
「終わったかい?お話タイムは?」
「こいつをビシバシ鍛えてくれ!」
「源内さん!やっぱ僕……」
「分かりました!源内さん!さぁ、レディ。一緒に頑張ろうではないか!」
「いや、コイツ男だから。」
「えっ……えええぇぇぇー!!」
「あーーーーー」
歴坊はオンボロ研究所の室内の隅っこに座り込み、下を向いている。
「無理だ。最悪だ。何が鍛えるだよ。終わった。」
「そろそろ始めるよ歴坊君。歴”坊”だから、そりゃ男の子だよね。ごめんね。」
「そんな事より、帰してください。」
源内は歴坊をおいて、先に一人帰ってしまった。そして入口のドアの目の前には、ガタイの良い外人がタキシードにサングラスで、入口を塞いでいる。
「ここは屋敷かなんかですか?」
「いや、研究所だよ。それに君は勘違いをしている。」
「オンボロ研究所で、ここの研究者がやばいやつという事ですか?」
「そう見えてるか。見かけの判断は良くないよ。」
ニュートンはボタンを押した。すると地面が揺れ出した。
「何をしたんですか!?」
歴坊は驚き、涙目だ。
「安心してよ。よく周りを見てご覧。」
「周り……ん?下がっている?」
「正解。さぁ、しばらく時間を頂戴するよ。」
さっきまで周りはオンボロ研究所の室内だったが、姿を変えて、
「ここは!」
「君はここで鍛えて貰うよ。」
歴坊の目の前には闘技場が広がったいた。
「一にここは研究所、二にここは闘技場。三に僕はクレイジーサイエンティスト、四に僕は君の師匠だ。」
「凄いです!えっと、ニュートンさん?」
「人の話は最後まで聞こうか……」
ニュートンの話を聞かず、歴坊は闘技場に魅了していた。
「早速だけど、今の実力を試させて貰うよ。」
「今の実力?」
「そう。歴坊君の実力。今までの知恵と体力、経験を駆使してこの僕と勝負だ。」
ニュートンはさっきまで羽織っていた白衣を脱いだ。
「さぁ、いいよ。」
ニュートンはドシンと構えている。
「いきます!」
歴坊は走り出し、正面突破だ。
「真っ直ぐだね。じゃあ、試させて貰うよ。」
するとニュートンは深く深呼吸をする。
「”偉能力・ニュートンの法則”(重量操作)!」
すると歴坊の動きに変化が出る。
「体が動かない。痛い!」
「はっ!!」
ニュートンは拳に力を入れる。
「うぎゃぁぁぁ!!」
歴坊は後ろの壁に向かって弾き飛ばされていた。
「一体何を?」
「体が仕上がって無いな。」
「はっ?」
ニュートンは笑顔を見せる。
「ニュートン式鍛練の開始だー!!」
「痛い!」
歴坊の体にテーピングが巻かれている。今は闘技場の隣にいる。
「手加減したんだけど、いやぁ、悪かったね。」
「じゃあ、なんで笑ってるんですか?」
「怖い顔しないでよ。初めてなんだから!」
「初めて!?」
「えっ?そうだけど。」
「一瞬期待したの返してください。」
「あらまぁ。」
でも、ニュートンは楽しそうで、ダーツをやっている。
「体はどうだい?」
歴坊はベットで体を休めていた。
「大分楽になりました。」
「重力に触れると……なるほど……」
何やらニュートンはメモを取っている。
「何メモってるんですか?」
「僕も研究者だからね。こうしてメモを取るのは習慣だよ。」
「クレイジーサイエンティストじゃないんですね。」
「そうとも言う。」
またもや、ニュートンは笑顔を見せる。
「後、質問いいですか?」
「ん?プライベートの事はもっと頑張ったら教えてあげるよ。」
「そうじゃなくて、あれって”偉能力”ですか?」
「そうだよ。これでも”偉人”だからね。」
ニュートンは切ったリンゴを皿に載せ、歴坊に手渡す。
「僕の”偉能力”の”ニュートンの法則”(重力操作)は、自由に重力を変えられる。」
確か、ニュートンさんが重力の仕組みを気づいたんですよね。
そう、歴坊は口にしようとすると、心臓に突き刺す痛みが走った。
「なんだこれ!!痛い!!ぎゃあああ!!」
「どうした!?歴坊君!?」
歴坊は意識が飛んだ。
「(君の世界の話をこっちの世界に話してはならない。)」
歴坊は目を覚ます。
「声が聞こえる……誰ですか?」
「(今は話せない。これ以上話せば、この世界は滅びる。)」
「どういう事ですか!?」
「(時間の経過は一緒、いわばパラレルワールド。でも、こっちの世界は一つの時代に偉人が生きている。)」
「それは知っている!滅びるって!?」
「(時間が無い。救って下さい。この二つの世界を。信じています。)」
とある湖にて、
「探してたんだよ。〇〇君。」
その少女は、湖を後にした。
偉人転身~偉人が1つの時代に生きる世界で~ ねしちご。 @sitigo
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