【14-25】武装放棄 4

【第14章 登場人物】

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【地図】ヴァナヘイム国 (13章修正)

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330651819936625

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 翌1月17日、王都から谷底の総司令部に勅使ちょくしが到着した。


 威儀を正し、迎え入れたアルベルト=ミーミル総司令官以下に、すべての武装解除および渓谷からの撤兵について、期日等が事務的に伝えられた。


 居ずまいを正したとはいえ、長い穴倉暮らしにより、大将以下みな軍服は汚れ、無精ひげが目立ち、悪臭が漂っている。


 一方、下士官や兵卒たちの顔は、何故か誰もが腫れ上がり、青あざのない者はいなかった。


【14-24】武装放棄 3

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16817330654145860638



 勅使一行は、口を曲げてと前線の陣営を辞去していった。


 国王からの使者たちが、石段や梯子はしごをつたって崖上へ戻っていくのを見届けると、

「……しばらく、1人になりたい」

ミーミルは幕僚たちにそうつぶやいた。


 しかし、彼らは上官の言葉が聞こえないかのように、総司令官私室への道を開けなかった。


「どうした?」


 いぶかしげな表情を浮かべるミーミルに対し、副司令官・スカルド=ローズルは、沈痛な面持ちのまま口を開いた。


「……閣下、早まってはなりません」


「……ッ」


 心の内を見透かされたかのような部下の言葉に、戸惑ったのだろう。ミーミルは一度言葉を詰まらせたものの、そこから先は淡々と述べていく。


「……私の役目は終わった」

 私はクヴァシル次官の期待に応えることができなかった――総司令官の両目は、黒色を増していた。目尻のしわも増え、心底疲れ果てているようだった。



 上官の光のない瞳を前に、ローズルはたちまちひるんだが、意を決して進み出る。

「閣下に対して冒涜ぼうとくの極みであることを承知の上で、恐れながら申し上げます」


 ミーミルが小さくうなずくのを見て、ローズルは続ける。

「ノーアトゥーンでは、各省庁の大臣、次官クラスが北方諸都市に逃げ散り、若輩者ばかりが取り残されているようです」


 慎重に言葉を選びながら話していく副司令の意図を、総司令はすぐに理解したようだった。黒ずんだ瞳にわずかばかり光が戻った。

「……なるほど、『王都には責任を取る者が不在である』ということだな」


「はい……帝国軍としても、戦後、名の知れぬ地位低き者をリンチしても、欲求不満は解消しないことでしょう」

 ローズルは心苦しさを抑え込みながら応じる。


 帝国軍を散々悩ませた『アルベルト=ミーミル』という名は、五大陸に広まっている。彼を裁きの場に引きずり出さねば、帝国軍はもちろん、帝国世論も満足しないだろう。


【4-8】消し方 中

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816927860139622159



「……クヴァシル次官も、以前同じようなことを言っていたよ」

 ミーミルは、寂しそうに笑うと腰からサーベルと拳銃を外し、それらをローズルに手渡した。






【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


副司令官・ローズルの機転に感心された方、🔖や⭐️評価をお願いいたします

👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758


ミーミルたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「和議締結 《第14章終》」お楽しみに。


底冷えする水の庭園にて、帝国・ヴァナヘイム国両国の和議締結の式典が執り行われた。


城内では、首元から崩れ落ちた西の塔や、崩落した宮殿の外壁などの残骸が散乱していたものの、水の庭園内だけは掃き清められている。


記者たちの閃光粉が舞い、帝国軍の軍楽隊が荘厳な楽曲を奏でるなか、ヴァナヘイム国王・アス=ヴァナヘイム=ヘーニルが、危なげな歩調で進んでいく。


服装こそ豪奢なれど、その力ない前傾姿勢は、足に鎖を付けられたいにしえの奴隷そのものであった。

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