【13-42】火計 4
【第13章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429616993855
【地図】ヴァナヘイム国 (13章修正)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330651819936625
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キイルタ=トラフは、階段を3段跳ばしで駆け上がり、上官と後輩が
室内では、仲睦まじく愛を語らう――ことなどなく、カードゲームに興じるだけのセラ=レイスとニアム=レクレナの姿があった。
電光のように入室したトラフに、2人とも驚いた視線を向けるほかない。
「……」
「……」
「……」
妙な静けさであった。レクレナの手もとから、1枚のカードがひらひらと舞い落ちた。
「~~~~~ッ」
勘違いに、取り越し苦労に、
ガチャリ?3人は扉に目を向ける。
「『鍵を掛けておけ』と分隊長殿が指示されていただろう」
悪い悪い、などと衛兵たちが交わす声が扉越しに聞こえてくる。
表では、監視役の衛兵たちが顔を見合わせていた。
「まだ仲間がいたとはな」
「何考えているんだあの女、自分から飛び込んでいったぞ」
「その辺りから突っ走ってきたんだ」
止めようがなかったと、階段昇降口にいた1人が、建物の南側を指差す。
それにしても、物凄い
とてつもなく怖かった。過日、ヴァ軍の猛将アルヴァ=オーズ麾下との死闘を生き延びた彼らをもってしても、女中尉の迫力は思い出しただけで足がすくむほどであった。
【13-20】 二枚斧 下
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16817330651610971610
「本当に参謀部のヤツらの仲間なのか」
「まさか、俺らに家族を殺されたヴァナヘイム兵の生き残りとかじゃないよな……」
「周囲をもう少し警戒しようぜ」
誰が言うともなく、衛兵たちは自主的にベランダ側も警戒することで合意した。
「大馬鹿者ッ!!」
脱出の機会を自ら潰すとは、どういう
「……申し訳ございません」
キイルタ=トラフ中尉は、上官に対し起立したまま首を垂れるほかなかった。蒼みがかった黒髪が乱れ、額にかかる。
扉に鍵まで掛けられ、ベランダも警戒されてしまった。
ドアノブをはじめ、木製扉をくまなく見回しても、内側から鍵を開けられるような造りにはなっていない。ベランダから見下ろすと、衛兵1名が立哨している。
3人とも
カードゲームにうつつを抜かしているかのような演技までして、衛兵たちを油断させていた上官の努力も無駄足にしてしまった。おまけに、アトロン大将からの書状を、
「鬼副長」とは思えぬ失態の重複に、上官は罵声を口にしながら、呆れ果てているようだ。
「じゃあ、今夜は2人っきりなのですね」
→副長が助けに来てくれるまでは2人だけ(言葉のとおり、他意はない)。
「副長がいないいまが、チャンスなのですぅ」
「あたし、中佐と2人で、ずっとこうしていたいですぅ」
「……それも、いいかもな」
→副長が不在なため、ぐーたらとカードゲームで遊んでいられる。
「お、おまえ、今夜は大胆だな」
「あ、あたしだって、やる時はやる女ですぅ」
→ゲームが佳境にさしかかっていただけ。
「ちょ、ちょっと待て、それはさすがに……」
「だ~めですぅ。男らしさを見せてください、ちゅーさ♡」
→そういえば、先任参謀はボードゲーム(チェス)こそ強いが、カードゲームはからっきしだった。
すべてはトラフの早合点であった。
レクレナに抜け駆けされることを恐れた――そのようなことを、口が裂けても言えるはずもなく。
首をガクリと落として、直立不動を貫くほかなかった。
「ちぇッ、せっかくのチャンスだったのに」
副長戻って来るの早すぎですぅ、と口をとがらせながら。
――ちょっと、待ちなさい。
そこの蜂蜜
レクレナは簡易なキッチンに至ると、慣れない手つきで紅茶を淹れ始めていた。
トラフは自身の耳を疑いつつ、蜂蜜色の後ろ頭を凝視する。
「聞いているのか、中尉ッ!」
先任参謀のお説教はまだ終わっておらず、トラフは追撃を断念せざるをえなかった。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
トラフの懸念は、あながち的外れでなかったことに驚かれた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758
トラフとレクレナたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「火計 5」お楽しみに。
「みなさん、ご精がでますねぇ」
レクレナは、衛兵たちにお茶の差し入れをした。
衛兵たちは蜂蜜色のボブヘアを持つ乙女にほだされた。彼等にとって男所帯というバイアスを差し引いても、この女少尉は可愛らしい部類に入るだろう。
「かじだーーー」
遥か遠くの声を鼓膜がわずかに知覚する――モアナ准将は気だるげに
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