【13-40】火計 2

【第13章 登場人物】

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429616993855

【地図】ヴァナヘイム国 (13章修正)

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330651819936625

【絵地図】ドリス城塞都市

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330652163432607

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「准将はお忙しいのだ」

 11月29日の陽も西に傾きつつある頃、第7旅団の副官たちは、ドリス城塞本廓ほんぐるわ正門前に立ち並び、参謀部の者たちの進入を阻んでいた。


「約束の無い者は取り次げない」

 火急の知らせだと、いくらトラフが説いても、彼等は感情に乏しい声で事務的に伝えてくるばかりだった。モアナ准将との面会はまかりならん、と。


「アトロン大将閣下から書状を託された自分たちを阻むとは、それなりの覚悟がおありでしょうね」

 苛立ちを露わにしたトラフが、敢えて総司令部の権威を振りかざすような物言いで詰め寄った。


 すると、副官たちは心底うんざりした表情で言い捨てる。

「遠路お疲れであろう。本日は宿で休まれよ」

「さよう、明日の昼過ぎには、准将もお会いになるとのことゆえ」


 一行の長たる先任参謀は、強行軍に草臥くたびれ果てたように、ふらふらしていた。そんな上官を突き飛ばすようにして、レクレナが進み出る。西の空を指差しながら。


「風が吹きはじめたのですぅ、このままでは危ないじゃないですかぁ!」

 モアナの子分たちは、蜂蜜頭の小娘がなにを言っているのか、理解できないという体で顔を見合わせる。


「とにかく、部屋を手配致したゆえ、そちらへ案内させよう」

 本廓ほんぐるわの正門前での押し問答の末、衆寡しゅうか敵せず――レイスたちは、城下の宿に連行されてしまう。


 そのまま、レイスとレクレナは、一室に押し込められてしまった。扉の外に衛兵という名の監視付きで。


 ただし、レイスと目配を交わしたトラフだけは、一連の流れから抜け出していた。




 帝国軍第7旅団では、日没とともに酒盛りが始まった。


 ドリス城本廓ほんぐるわの大部屋では将官・佐官たちが、礼拝堂では尉官たちが、各々の滞在先建物では下士官・兵卒たちが――それぞれ杯を酌み交わした。


 当直に人数はほとんど割かれず、思い思いの時間を過ごす。久方ぶりの息抜きであった。



 せっかくの酒宴も、任務の話になってしまうのは致し方ないだろうか。

 

 総司令部の連中は、現場の将兵の気持ちがまるで分かっていない。


 連戦に次ぐ連戦の合間も、「厳戒態勢を解くな」とはどうした料簡りょうけんか!


 幕僚たちは口々に、不満を吐き出していく。



 ――愚痴をさかなに酌み交わす酒も、それほど悪いものではない。

 モアナも、幕僚たちと痛飲した。


 ジャガイモの蒸留酒などふだんたしなまないからだろう、酔いの回るのが早い。


 何よりも、先の会戦にてヴァナヘイム軍の猛将を仕留めて以降、彼等は満足に眠れない日々が続いていた。


【13-25】悪夢

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16817330651467207584



 そのため、多くの者たちはすぐに酩酊し、睡魔に屈していく。


 いつの間にか、テーブルに突っ伏して寝入っていたのである。






【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


禿げ頭准将!酔いつぶれている場合じゃないですよと心配な方、🔖や⭐️評価をお願いいたします

👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758


レイスたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「火計 3」お楽しみに。


「じゃあ、今夜は2人っきりなのですね」


――!

後輩の声が妙につやっぽく感じられる。


「副長がいないいまが、チャンスなのですぅ」

トラフは背伸びをして、室内をうかがおうとするが、届くわけもない。


「あたし、中佐と2人で、ずっとこうしていたいですぅ」

「……それも、いいかもな」


――んな!?

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