【13-37】カイサにて 下
【第13章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429616993855
【地図】ヴァナヘイム国 (13章修正)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330651819936625
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香水瓶を受け取った少女は、小さな鼻先から頬、耳たぶまで真っ赤に染まっている。地肌が白いからだろう、それは髪の色よりもいっそう鮮やかだった。
「
トラフが提案しかけた矢先のことだった――突然の大声が廊下の空気をかき混ぜたのは。
「あ~~~!!ソルちゃんだぁ~~~~~~!!!」
レクレナ少尉が戻ってきたようだ。どこをほっつき歩いていたのか知らないが、腹を満たしたのだろう。カイサの町に到着した直後とは、声の張りがまるで違う。
突然、素っ頓狂な調子で呼びかけられ、びくついた少女は、手にした小瓶をあやうく落としそうになっていた。
パンやら果物やら燻製肉やらがはみ出した紙袋を抱えながら、レクレナは蜂蜜色の髪を揺らし、ずんずんとこちらに向けて進んで来る。
「ひさしぶり~」「最近見なかったけど、どこ行ってたの~?」などと口にしながら、挨拶代わりとばかりに、女少尉は少女に引っ付いていく。
ところが、頭から首筋まで完熟トマトのような色合いになっていたソルは、ぐにゃりとしている。
少女にいつものキレが全くない。あっという間にレクレナに後ろを取られてしまった。そこからは、抱きつかれ、頬ずりされ、蜂蜜頭のやりたい放題である。
さあ引っ
少女はレクレナに組み敷かれてしまったのである。
ソルは、むなしく抵抗の声を上げている。
ところが、その時だった。
「……!?」
少女のあちこちをまさぐっていたレクレナの両手が、ピタリと止まったのだ。
そして、彼女の鼻頭がスンスンと音を立てる。はじめは周囲を探るように、次第にソルに近づいていき、その腰回り、
レクレナの表情が、残念なほど
「うっわ、ソルちゃん、なまぐっさ!!!」
今度は、レクレナの鼻声が廊下に響き渡った。
少女の手から落ちた香水瓶がコロコロと転がる。
思わず、トラフは頭を抱えた。
そうであった。異臭騒動の物件を精力的に巡り続けたソルは、そこに漂っていた悪臭(腐敗した魚油の臭い)が髪の根元から足先まで染みついていたのだ。
【13-30】異臭騒動 下
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だから、先刻の報告の際も、少女は断固として入室を拒否したのだった。紅髪の想い人に、そのような体臭を嗅がれることは、赤髪の乙女として断固避けねばならぬ。
一番指摘されたくなかったことを大声で叫ばれ、哀れなソルは、顔色がトマトからナスのように変色している。
抗議の声も蚊が鳴くようだ。
レクレナが鼻をつまんだことで、
捨て台詞を口にしてソルは去っていった。水色の瞳に雫をためつつ、蛇行しながら。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
初めてソルがレクレナに負けた(?)ことに驚かれた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758
ソルたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「重ね合わせ」お楽しみに。
「かなり熱いわね……」
トラフはベッドの脇に腰掛けながら、少女の小さな額から手を離した。
「ソルちゃん、ごめんなさいぃ……」
神妙な面持ちで入室したレクレナの手には、冷水の張られた
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