【13-29】異臭騒動 中

【第13章 登場人物】

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【地図】ヴァナヘイム国 (13章修正)

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330651819936625

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 アレン=カムハル少尉は、後輩・ニアム=レクレナ少尉のを見つめている。


 この女参謀は、獲物を見つけた肉食獣のように、抜き足・差し足で歩を運んでいた。彼女の視線の先には、1人の従卒がいる。


 正しくは、従卒の制帽制服を身にまとったソル=ムンディルであった。資料が詰まった木箱を一生懸命運んでいる。


 この赤髪の少女は13歳になるはずだが、大きな制帽を頭に載せているせいか、実年齢よりも幼く見えてしまう。


 そんな参謀見習いの後ろから女少尉は忍び寄るや、一挙に距離を詰めた。


 見事な捕食……少女を抱き寄せては、赤毛に蜂蜜頭をぐりぐりさせている。レクレナ流のスキンシップなのだろう。


「んん~~ソルちゃん~~~いい匂い~~」

 何度拒まれても、レクレナは少女が可愛くて仕方がないらしい。


 書類ののため、ソルの両手は自由が利かないことに、彼女は気が付いてたのだろう。いつもだったら、即座に引っかれているはずだ。


 しかし、女少尉の口からこぼれる恍惚こうこつとした声は、長くは続かなかった。一転して響き渡った苦痛の叫びは、甘美な時間に終止符が打たれたことを物語る。


「あいたたたた~~~~ッ」



 木箱を抱えたまま、ソルはのっしのっしと歩き去った。痛みにのたうつレクレナを残して。


 ――なるほど、引っ掻かれはしなかったが、噛みつかれたらしい。

 カムハルは、レクレナの仕事に書類を追加しようと決意した。




 ソル=ムンディルは、大きな戦力に育ちつつある。


 はじめは、作戦資料における検算を手伝ってもらうだけだった。


【2-3】利息

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 だが、直属の上司たるカムハルは気がついている。このヴァーラス領ご令嬢の内政・軍事における見識は、下手な大人のそれをゆうに上回ることに。


 先日、彼女はわらと魚油の値上がりを突き止めた――物価への着眼点は鋭い。


 一方で、帝国軍参謀部は、慢性的な人手不足である。24時間365日、猫の手も借りたい状況であった。


 そこで、カムハルはこの赤髪の少女に白羽の矢を立てた。異臭騒動調査のため、護衛や補佐の兵卒を付けて、彼女を現地・エドラ城下に派遣することにしたのである。




 3日後、ソル一行はエドラの城門をくぐった。


 しかし、少女はポニーにまたがったまま旅装を解くことはなかった。そのまま、悪臭を放つ民家へ馬首を向けたのである。



 そこは、腐乱した肉のような臭いが、屋外まで漂っていた。


「臭くて眠れたものじゃないです」

 ここに寝泊りしている兵卒たちは、窮状を訴えた。


 調査班・班長たるソルは、小さな鼻にハンカチを当てて、聞き込みを続けていく。どうやら、兵卒を悩ます臭いは、背嚢はいのうの中身まで、こびりついてしまうらしい。


「地中ではない……?」

 少女は他の大人たちよりも鼻が利いた。臭気は室内に進むほど強くなる。臭いの源は、中庭の地中などではなく、屋内にあるのではないか。


 確かに、この家屋では、2階へ行くほど悪臭は強くなるようだ。


 少女は赤髪を揺らし、階上へあがった。そこで臭いの発生源を突き止めることに成功する。









 それは、天井裏だった。






【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


レクレナの代わりにクンカクンカしたいと思われた方、ぜひこちらからフォロー🔖や⭐️評価をお願いいたします

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ソルたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「異臭騒動 下」お楽しみに。


ソル=ムンディル一行は、3階へ駆け上がった。


そこで、少女は腰の短剣を勢いよく抜く。そして、天井に切り込みを入れるべく、やッという声とともに飛び上がった。

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