【13-27】カンファレンス 下
【第13章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429616993855
【地図】ヴァナヘイム国 (13章修正)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330651819936625
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エドラ城塞一室での帝国軍参謀部のカンファレンスは続いていた。
議事は参謀・アレン=カムハル少尉の報告に移る。彼は心もち猫背を正し、伝達事項を読み上げていく。
「先任参謀、これを」
「ほぅ……」
報告の終盤に差し出された紙片を手にして、レイスは口を
カムハルがその内容についても、解説をはじめる。
相も変わらず、紅髪の先任参謀は、作戦を組み立てるに際し、
【2-3】利息
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700427176857765
だが、一見取るに足らないような情報も、ヴィムル河流域をはじめ多くの会戦において、勝敗の
今回、カムハル少尉麾下・第5班が着目したのは、「物価」である。
帝・ヴァ開戦以降、ヴァナヘイム国内では、品物の価格が総じて上昇しているものの、この1カ月、イエロヴェリル平原南部諸都市において、輪をかけて値上がりしているものがあった。
飼料用・屋根
ヴァナヘイム国内の城塞都市において、城郭・城壁や統治者の私邸は石造りである。だが、一般家屋は外壁こそ漆喰を塗布しているが、木造藁葺きであった。
また、城下の街すべてをカバーするほど発電量は足りず、架線も普及していない。庶民にとって灯油はまだまだ高価であり、
紅髪の上官から手渡された紙片にキイルタ=トラフ中尉も灰色の視線を落とす。両品目の市場価格の高騰が、棒グラフをもって示されていた。
おそらく、ヴァナヘイム軍が相当数を買い占めたことによる価格変動であろう――参謀部において、殊勲賞に値する発見であった。
敵の指揮官・アルベルト=ミーミルの次なる一手を読み解く手掛かりが、そこにはある。
そうした値動きに着目した功労者を、カムハルは紹介する――従卒姿のソル=ムンディルが、照れくさそうに進み出た。
「よくやった」ということだろう、レイスは少女のくすんだ赤毛を掴むようにして
2人の様子を、トラフは思わずジト目で
だが、そうした副官の視線に構わず、彼女の手から取り戻した紙面にレイスは再び集中する。
「やっこさん、今度は何を企んでいやがる……」
ドリス領民避難に続いて、この生活必需品の値動き――紅毛の先任参謀は早くも敵総司令官の備えを読みにかかろうとしていた。
「牛さんをたくさん飼うのでしょうか?」
蜂蜜色のボブヘアを揺らし、珍しく彼女は真面目な顔をしている。
「飼料用の藁」と「食用の脂」といったキーワードからの迷参謀による空想は止まらない。
脂を引いたフライパンに、分厚いお肉をじゅうじゅう焼いて――レクレナの言葉に、アシイン=ゴウラ少尉以下・参謀部の面々は、幸せそうな表情を浮かべ、生唾を飲み込んだ。
空想上、彼等の眼前には、立派なステーキが並べられているのだろう。
ここにきて、ヴァナヘイム軍騎翔隊の妨害は鳴りをひそめ、帝国輸送隊の体制は機能を取り戻しつつある。ところが、腹は満たされるようになったとはいえ、その内容は「豪勢な」と形容するには程遠い。
蜂蜜頭の少尉にやや乱されたペースを、副長・トラフは咳払い1つで正す。
「間もなく、モアナ准将麾下の先遣隊がドリス城塞に到達しますが」
「……しばらくは警戒態勢を解くな、と禿げ頭に伝えておけ」
レイスは面白くもなさそうに言い捨てた。何故、もう少し猶予をくれんのだ、とぼやきつつ。
なるほど、上官も、厚切り肉の幻覚を前にしていたようだ。それを口に入れる直前で、現実に呼び戻されたのが悔しかったのだろう。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
先任参謀を巡る女性参謀たちの攻防?に、手に汗握られた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
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レイスたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「異臭騒動 上」お楽しみに。
モアナ准将は、それら家屋等を寝泊り用として各隊へ割り当てることにしたのである。
ところが、である。
割り当てられた家々のいくつかで異臭がするらしい。
すべての建物ではないものの、ひどい部屋になると悪臭――腐乱した死体のような臭い――が漂うそうだ。
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