【7-11】東へ西へ 下
【第7章 登場人物】
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【地図】ヴァナヘイム・ブレギア国境
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927863011875998
【世界地図】航跡の舞台
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927860607993226
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ブレギア領内を西へと急ぐヴァナヘイム国使節団――ケント=クヴァシル一行――の歩みは、なかなかはかどらなかった。
ブレギアは、旧国名をヘールタラという。土地の言葉のとおり、草の
見渡す限り草原であり、道案内人が居なければ、どの辺りを進んでいるのか、分からなくなりそうだ。
ただし、草海原の爽快感を味わうには、視界に広がる絨毯は、生色に欠いた。
この北の草原において、春の訪れはあまりにも遅く、地表には薄茶色を多く残している。
枯草だけならまだいい。冬季に凍った地面が、この頃ようやく溶け出しており、いたるところで道はぬかるみ、馬は足を取られた。
前方の馬が蹴り上げる泥を顔面に浴びながら、ヴァ国・軍務次官は、黙々と西に向けて進んでいった。
ブレギア首都・ダーナでは、顔色悪く
【7-7】親書 上
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その上、宰相・ラヴァーダは不在であり、彼の判断を仰ぐべく、アリアク城塞へ行けという。
――アリアクであれば、わざわざダーナまでの間を往復する必要もなかったではないか。
クヴァシルは内心毒づいた。
古来、同盟は君主同士の合意によって結ばれる契約である。
合議制が整い、自国の王が飾り物の色合いを濃くしていたとしても、はじめに相手国主に面会してこその礼儀であった。
この背の高い軍務省次官にとって、そのようなことは百も承知である。
だが、彼の母国の命運は、風前の
たとえ、隣国の騎馬民族との同盟締結に漕ぎつけたとしても、草原から戻る前に母国が潰えれば、それも空手形に終わる。
1分1秒の遅れが取り返しのつかない事態になるのではないか――。
余命幾ばくもない母国――。
そこから生じる危機感は、ダーナへの往路から如実に表れていた。
クヴァシル率いるヴァナヘイム国使者一行は、草原の先にある首都までの道をとにかく急いだ。
道中、ウルズ湖にて
国内では、ギャラール・エルドフリーム・ウルズなど街道沿い諸都市おいて、整備された
ブレギア領内に入っては、馬の行商人のように替え馬を引き連れては、次々とそれを乗り替えていった。
その結果、旅程を大幅に短縮することに成功する。
彼らは、ノーアトゥーン・ダーナ間1,100キロの道のりを、わずか15日で駆け抜けたのであった。
クヴァシルは、ブレギアとの交渉だけが仕事ではなかった。
総司令官に推挙したアルベルト=ミーミルから、彼は出国前に3つの依頼を受けていたのは、先述のとおりである。
1つ目の依頼――正統な総司令官任命式の挙行――を見届けるや、2つ目の依頼――ブレギアとの同盟締結交渉――のため、彼はいま草原を東奔西走している。
帰国後早々に、3つ目の依頼に取り掛からねばならず、彼は草原で悠長に乗馬をしている暇などないのだ。
このように、クヴァシルは態度にこそ表さないものの、危機感を常に連れ歩いていた。
そのため、クヴァシルは外交の形式ばった手順に不満を抱き、10日を費やすダーナ・アリアク間の道中に、ますます焦慮を募らせるのであった。
それにしても、ブレギア国主の衰弱ぶりは目に余った。
新聞紙面を飾り続けてきた「小覇王」との会見に、いくぶんかの緊張と期待をもって、クヴァシルは臨んだのであった。
だが、彼の前に居たのは、玉座に座るのも大儀そうな病み衰えた中年であった。
立ちはだかる敵を次々と粉砕し、武断で草原の国をまとめた英雄の面影など、どこにもなかった。
ブレギア国主との会見後、ヴァナヘイム使者一行は、晩餐と称するには質素な
彼らはわずかなラム肉と馬乳酒を口に運びながら過ごしたが、そこには国主はおろか、その義弟すら姿を現さなかった。
そのまま翌早朝、一行は見送られることなく、アリアクに向けて、ダーナを出立したのであった。
積み重ねてきた両国の関係からも、現在の自国が置かれている境遇からも、歓待など期待できる立場ではなかったが、クヴァシルは
よもや、この国の宰相――眉目秀麗とされる貴婦人――も、見ると聞くとが大いに乖離してはいまいか――。
アリアク城塞への道中、彼は焦慮を募らす一方で、不安も禁じ得ないのであった。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
ウルズ湖やビフレスト水道橋を観光したい方、
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クヴァシルたちが乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「貴婦人 上」お楽しみに。
首都ダーナでは、「小覇王」義弟に歓待されなかったクヴァシルですが、アリアク城塞にて、「貴婦人」と面会を果たします。
使者来訪の情報が事前に伝わっていたのだろう。
ブレギア宰相・キアン=ラヴァーダ以下、
アリアク城主・ダグダ=ドネガル、
建国以来の宿将・アーマフ=バンブライ、クェルグ=ブイク、ベリック=ナトフランタル、
さらには草原の双璧・エヘ=ボルハン、ソルボル=ブルカンなど、
そうそうたる将軍たちが、城門に
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