【8-3】撃ち方はじめ 上
【第8章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700429051123044
【組織図】帝国東征軍(略図)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927862185728682
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ヴァナヘイム軍左翼が突然打って出てきたのは、7月20日未明のことだった。
セラ=レイスとエリウ=アトロンの仕掛けた
【6-19】足蹴 下 《第6章 終》
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816927861474569092
それまで潜んでいた谷底から、次々と
数万の将兵軍馬の足音は、地鳴りのように響き渡り、帝国軍を圧倒した。
平原に押し出してきたヴァナヘイム軍は、大きく1つの集団にまとまると、林や
丸太で造った簡素な物見台の上から、レイス主従2人が前方を食い入るように見つめている。
「敵は、涼しい明け方に行動を起こしました」
キイルタ=トラフが冷静に報告する。
彼女の蒼みがかった
「あの非の打ち所がない動きを見ろ……」
大軍をここまで見事に操るとは――敵の若い指揮官の力量に、レイスは一人
軍事の才能とは先天的なものであり、いかに勉学や訓練を積もうと、後天的には一定の水準以上まで高めることはできない。
ありていに言えば、凡人は「秀才」止まりであり、「天才」の域に達することはできないのである。
眼前で芸術のような部隊運動を見せつけられ、軍隊指揮という点に限っては、自らの才能が敵司令官のそれに及ばないことを、レイスは素直に悟った。
水と涼を求めて本軍より最も離れていたゲイル=ミレド少将の部隊は、あっという間にヴァ軍に呑み込まれた。
続いて、その近くに移転していた少将子飼いの将軍たちも、まだ眠りのなかにいたことだろう。なす術もなくすり潰されていく。
とりわけ、敵先鋒の働きは目覚ましい。
永らく
物見台の下でも、レイスの部下たちが不安げに前線を見つめている。
「完全に敵に読まれていたな」
「あぁ……ヤツらは、こちらがバラバラになるのを待っていたんだ」
「しかし、これはまずいですよぅ……」
「……」
「……」
「……」
ニアム=レクレナ少尉の発言を最後に、全員が押し黙った。
それは彼らに共通する不安だった。今朝はさすがに冗談を口にする者はいない。
――だが、うちの紅毛の大将は、無抵抗のまま
アシイン=ゴウラ少尉の想いもまた、彼らに共通するものだった。
彼らが
部下たちは物見台に立つ上官を一様に見上げた。美しい副官を従えた紅髪長身の指揮官は、両手を腰のベルトに当て前方を
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
セラ=レイスは、無抵抗のまま恭順を決め込むようなタマじゃあないと思われた方、ぜひこちらからフォロー🔖や⭐️評価をお願いいたします
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レイスたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「撃ち方はじめ 下」お楽しみに。
レイス隊が6.5インチ野砲をもって、ヴァナヘイム軍に挑みます。
「同諸元にて、全門撃ち方はじめッ!」
遅いとばかりに、レイスは残りの砲門の発射を命じる。
足元から飛び出した何発目かの砲弾が、ヴァナヘイム軍の中に吸い込まれるようにして消えていった――。
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